第二話 死にたい勇者
「俺は魔王だ」
「は?」
俺はエルスタ。王国に命令されてあれよこれよと勇者にされた。みんなの前に出ると崇拝されるわ、期待をかけられるわ散々だ。もう嫌だ。魔王が俺を殺してくれればいいのに。死にたい。
(いま、こいつ、魔王って言った?)
「それは、本当に?」
「ああ、本当だ」
「酔ってるわけじゃなくて?」
「そこまで疑うのなら見るか?」
そう言うとこいつは手を頭の方にかざした。
すると、隠れていたツノがあらわになった。
「本当に、、魔族」
「ああ、そうだ。」
(魔族!しかも魔王だって⁉︎これは、、チャンスなのでは?上手くやれば殺してもらえるのでは?)
「俺はエルスタ」
「エルスタ、、エルスタだって⁈まさかお前、勇者エルスタなのか?」
「そうだ」
(よし、これでいい。勇者、それも酒が入ってまともに動けない勇者を目の前にしたなら魔王なら、ためらいなく殺すに違いない!)
2人とも無言で動かないままいくらか時間が経った。夜風が何度も2人の頬を撫でる。体感は数十分も経ったような気がした。
(何で、、どうして!)
「「何で殺さない!」」
「「え」」
我慢をしきれずに言葉を発した。すると、こいつも我慢の限界だったのか乱暴に言い放った。お互いに考えていることは同じだったようだった。
「勇者、お前やる気あるのか?何で剣を抜かない」
「いや、お前だって魔法を放つ気なかったろ」
「死ぬ気か?」
「その言葉、そのまま返させてもらうよ」
「答えしかねるな」
「そうか、俺も控えさせてもらう」
(こいつは何で殺されようとするんだ?)
そのとき、酒屋で話したことを思い出した。
確か、こいつは言っていた。いつも通りが辛つらくて酒を飲んでいると。頼られると失望されないようにしようと思ってしまうこと。そのせいで頑張りすぎて自分を追い込んでしまうこと。
(まさか、俺と同じ?)
最近、魔族との争いが異様に減っていた。人間側は魔族が何かを企んでいるのでは?と、警戒していたが、その理由がわかったような気がする。
「どちらも戦いに本気でなかったなんて世間が知ったらどう思うか」
「まさか、人間側の要が死にたがりだったとは。戦いが低迷するはずだ」
「お前にだけは言われたくないね」
「こんなんじゃ死ぬにも死ねぬではないか」
「それは俺のセリフだよ」
「なぜ、人間達に慕われ、崇拝されるお前が死を望む?」
「それが嫌なんだよ。お前だって知ってるだろ?俺は本物の勇者じゃない!本物だったなら受け止められたかもしれないけど、、俺は偽物だ!」




