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死にたい勇者と死にたい魔王はメル友になりました  作者: 辰胡
20代目勇者と8代目魔王
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第一話 死にたい魔王

ここは、人間領にある【オリヴァーの酒屋】。

どんちゃん騒ぎの片隅で酒を片手にため息を()く者がいた。


「はぁ、もう死にたい」


俺はヴェグル。

魔王という職に就いている。

魔族領に居ると同胞たちにはやく人間を滅ぼそうと急かされるので、たまに抜け出して人間領に息抜きにくる。


「オリヴァーさん、、もう一杯ください」


手にしていた酒が(から)になったので店主に追加を頼む。


「あいよ!どうしたんだい?兄ちゃん達元気ねぇなぁ」


(兄ちゃん達?俺の他にも誰か居るのか?)


そう思って横を向くとこれまた疲れてくたびれた若い男がいた。


(戦士か?酒が入っていたとはいえ、気配に気づけなかった)


男は武装していて、軽い(よろい)に剣を(たずさ)えていた。見た目からすると、仕事帰りの冒険者だろうか。


「こんばんは」

「こんばんは。何かあったのですか」


いつもなら聞かないところだが、酒のせいなのか今晩は聞きたくなってしまった。


「いえ、とくにはなにもありませんでしたよ。いつも通りです。そちらこそ、どうされたのですか」

「いや、こちらもいつも通りです。まあ、そのいつも通りが(つら)くてここの酒を飲んでいるのですがね」

「奇遇ですね。ここの酒は美味しいですから一時的とはいえ、嫌なこと、辛いことを忘れられます」

「分かります」


数十分後、酒がまわってきたのかお互いに砕けた口調になっていた。


男は拳で机を叩いて言った。

「期待が重い!期待がそのまま俺の重石になってる気がする!」

「俺もわかる。キラキラした目でさ、頼られると失望されないようにしないと!って思って頑張りすぎて自分を追い込んじゃうんだよな」

「そうなんです!ああ、もうしんどい」


いつぶりだろうか、人とまともに会話することができたのは。


(この人と話すことができて本当に良かった。これでもう、この一生(いっしょう)に悔いはない。とっとと勇者に殺されてしまおう。)


少しして、俺たちは店を出て帰ることにした。


店を出ると街灯も少なく、暗かったのでスマホのライトを頼りにしばらくは一本道で月を眺めながら2人でたくさんの会話をした。仲間のいいところ、大変なところ、自分の抱える苦痛、期待に応えなければならないという(あせ)りなど。


やがて、分かれ道が見えてきた。俺は何のためらいもなく、自分が帰るための道を選んだ。すると、男が俺を慌てて止めた。


「そっちは魔族領だよ!」

「知ってるけど」


(こいつはなにを言っているんだ?)


「酔ってるの⁈そっちに行ったら死んじゃうよ!」


(ああ、そういうことか、そうだった。俺は魔族でこいつは人間だ。誤魔化すか?いや、もういい、人間なら俺が魔王であることをばらせばすぐにでも勇者に通報するだろう)


「いや、酔ってはいるが間違えてはいない」

「何言ってるの!そっちは魔族領って言ってるじゃん!」


「俺は魔王だ」

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