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完璧を強いられた令嬢と完璧公爵の甘やかな結婚  作者: いか人参


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22/29

22.新たな始まり



駆け寄ってくるマリエッタを目にしたセラの両目から、ぼろぼろと涙が溢れた。


立ち上がり両腕を伸ばして必死に受け止めたものの、ふらつく足ではマリエッタのことを支え切れず二人で横に倒れそうになる。



「おっと。」


こうなることを予想していたシュヴァルツが先回りをしており、片手でマリエッタの肩を支えて事なきを得た。



「マリエッタ様もエリーナ様も…お元気そうで何よりでございます。本当に心配で心配でっ…」


頬がふっくらして身なりの整っている二人の姿を見て、また涙が出てくる。悲惨な様子は一つも見当たらない。

本当に良くしてもらっているのだと、心の底から安堵した。



「セラの方こそ、大丈夫だった?黙って出てきちゃってごめんね。」


「セラ、来てくれてありがとう。私たちのせいで大変だったでしょう。」


マリエッタ達は椅子に座り直したセラに寄り添い、3人は手を握りしめ合った。再会の感動を分かち合う。


落ち着いた頃、空気を読んだロナウドが人数分の紅茶を出してくれた。シュヴァルツは定位置に下がり、エリーナ達はセラの両隣に座っている。



「この度は本当にありがとうございました。なんと御礼を申し上げたら良いか…」


泣き過ぎて目が腫れているセラ。その声も掠れているが、表情は明るさを取り戻していた。



「勝手にやったことだから気にするな。」


「お心遣いありがとうございます。」


膝に額がくっつきそうになるほど深く頭を下げた。両脇からエリーナとマリエッタの二人が彼女の背中を優しくさすっている。



「ひとつだけお耳に入れたいことがございます。此度の件、お二人の継母に当たるメロウナが誘拐事件として公にするおつもりです。大変厚かましいお願いでございますが、出来ればこのような醜聞になる事態は…」


「問題ない。丁度今夜話をしに行こうと思っていたところだ。」


表情を強張らせてひどく話にくそうにするセラに対し、フィニアスの答えは簡潔だった。動揺は微塵も感じられない。


一方で、エリーナは表情を曇らせていた。


(もし戻れと言われたら…?私はこの場所を離れないといけないの…?またあの暗い部屋に独りきりで…)


過去を思い出して身震いする。

つい数日前までの日常が急激に恐ろしくなった。これまで平然と受け入れていたことが今は明確に嫌だと思う。


温かなこの場所を離れたくないと強く感じていた。



「安心しろ。エリーナの居場所はここだ。」

「……っ」


エリーナの不安に気付いたフィニアスが淡々とした口調で告げた。不安で恐怖で凍り付いていたエリーナの心に、彼の力強い言葉が届く。


顔を上げると、淡白な口調とは裏腹に優しい光を宿す金の瞳と目が合った。


(フィニアス様…………)


それはいつだってエリーナの心を明るく照らしてくれる。身を任せたくなるような心地よい安心感を与えてくれるのだ。



「ありがとうございます。」


瞼に滲む水気を指で拭い、淡く微笑んで頷き返した。


そんな二人のやり取りを見ていたシュヴァルツが、すかさずマリエッタに甘やかな視線を送る。



「マリエッタの場所はもちろん僕の隣だからね。もうあんな場所に返したりしないよ。」


「うん、私もお義父様(ロナウド)のいるここが自分の家だと思ってるよ。」


「え゛っ」


どさくさに紛れて口説いたつもりだったシュヴァルツが呻き声を上げた。まさかの返答に、口が半開きになっている。



「ほっほっほっ。やはり娘というのは可愛いものですなぁ。」


「僕の恋敵、強敵過ぎない…?」


部屋の隅でロナウドが愉快そうに笑っているが、シュヴァルツは納得のいかない様子でぶつぶつと一人文句を言っていた。



「ロナウド、セラに部屋の用意を。」


「かしこまりました。」


ショックを受けているシュヴァルツを無視してフィニアスが指示をする。ロナウドは静かに頭を下げた。



「いえ、私までお世話になるわけには参りません。お二人の元気な姿を見れましたので、そろそろお暇させて頂きます。今後ともどうぞ宜しく頼みます。」


「二人のそばにいたくないのか?」


「それはっ…」


セラが言葉に詰まった。


ただの使用人という立場上これ以上甘えるわけにはいかないと思っていたのだが、両隣から縋るような視線を向けられてしまい後ろ髪を引かれる。



「何もタダで居させるわけではない。うちの使用人として、相応の働きをしてもらう。今あの家に戻っても無意味だろう?」


フィニアスの言葉は核心をついていた。


セラがメロウナの機嫌を取っていたのは全てエリーナ達のためだ。あの邸で二人を守る必要が無くなった今、戻る理由など無かった。


仕えるべき主人はここにいる…


迷いのなくなったセラが立ち上がる。



「フェルローズ公爵家に誠心誠意仕えさせて頂きます。」


忠誠心を込めて深く頭を下げた。

自分の立場を弁えることよりも、二人のそばにいることを選んだのだ。



「ああ、期待している。」


無事セラがここで働くことが決まり、見守っていたエリーナとマリエッタの二人はほっと胸を撫で下ろした。


そして三人は、再び共に過ごせることを喜び合ったのだった。



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