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完璧を強いられた令嬢と完璧公爵の甘やかな結婚  作者: いか人参


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17/30

17.朝食のお誘い



昨日と同様、日の出と共に起きて身支度を完了させたエリーナはリビングのソファーに座っていた。マリエッタはまだ夢の中だ。 


(昨日はお言葉に甘えて一日お部屋で過ごしてしまったけれど、今日こそは何かお役に立てることをしないと。)


エリーナが頭を悩ませる。


昨日ネルから、『貴族のお嬢様らしく、全て使用人に任せて寛いでいてください!』と散々言われていたのだ。

だが、自由な時間などなかったエリーナに「寛ぐ」という言葉は存在しない。それどころか、やることがないという状況は苦痛であった。 


そんなことを考えていると、ネルが部屋にやってきた。



「エリーナ様、おはようございます。今日もお早いですね。もっとゆっくりされていて良いんですよ。」


「習慣で目が覚めてしまうのよ。」


エリーナの笑みに僅かに寂しさが漂う。それを見たネルが敢えて満遍の笑みで手を叩いた。



「でも今日は良かったです!今から旦那様が朝食を取られるのですが、もし良かったらエリーナ様もご一緒にとご伝言を頂いております。」


「こんな早朝からご朝食を…?本当にお忙しくていらっしゃるのね。私が行ったらお邪魔になってしまうわ。」


「旦那様からお誘いされているので大丈夫ですよ。さぁお化粧しておめかしして参りましょう。」


「それなら早く行かないとお待たせすることに…」


「そのくらい大丈夫ですよ。まずはお化粧からですね。」


にこにこ顔のネルは、有無を言わせずエリーナの支度に取り掛かった。あっという間に、普段着から華やかなご令嬢スタイルへと変貌を遂げた。


ネルに背中を押されて部屋から追い出されたエリーナは、外に控えていた使用人に案内してもらい、フィニアスの待つダイニングルームへと向かう。


だが、部屋の中にフィニアスの姿はなかった。



(遅かったかしら…)


フィニアスの機嫌を損ねてしまったかと、エリーナが不安に襲われる。顔色を悪くしていると、使用人が外へと続くガラス扉を開け放つ。



「こちらへどうぞ。」


不思議に思いながらも、手で示されている通り外へ出たエリーナ。


生温い風が吹いて巻いてもらった栗色の髪がはためく。

風を避けるように顔を晒して、片手で髪を押さえる。風が弱まり視線を上げると、目の前に色とりどりの小さな花弁が舞っていた。



(なんて綺麗なのかしら…)


「早かったな。」


フィニアスの声が聞こえて視線を少し先に向けると、芝生の上に用意された椅子に腰掛けていた。

テーブルの上には花が飾られ、二人分の朝食が用意されている。



「フィニアス様、おはようございます。お待たせして申し訳ありません。」


はしたなくならない程度に足を速めて向かい側の席に向かったエリーナ。

フィニアスは当たり前のように立ち上がり、片手で彼女の椅子を引いた。



「急に呼び出したのは俺の方だ。気にするな。」


「ありがとうございます。」


怒っていない様子にほっとして、エリーナは軽く頭を下げてから席についた。



「朝早くからすまなかったな。」


「とんでもないことですわ。お忙しい中貴重なお時間をくださりありがとうございます。」


「この時間しか取れなかったというのも一つだが、この季節は朝の時間帯がもっとも美しいと庭師に強く言われたからな。」


相変わらず感情の読めない金色の瞳。

だが、微妙に視線を晒してくる素振りが気恥ずかしそうにしているように見えなくもない。


エリーナの中に淡い期待が漂う。


(まさか私のためにこの場所を…?いえ、きっとフィニアス様にとって都合が良かったのよ。勘違いをしてはいけないわ。)


即座に自分の中の甘い感情を打ち消した。



「とても美しいお庭ですのね。庭師の方の丁寧な想いを感じますわ。」


嫋やかな笑顔を浮かべたエリーナが無難に返す。社交のためと叩き込まれたため、上部だけの会話に苦手意識はなかった。



「…そうか。」


フィニアスの声が僅かに低くなる。

怒っているのとは違う、どこか拗ねているような声音だ。


無表情だから分かりにくいが、マリエッタ同様人の機微に敏感なエリーナは目ざとく感じ取った。


(何か気に障るようなことを言ってしまったのかしら。こんなに良くして頂いているのに不快にさせてしまうなんて…本当に自分が嫌になるわ。)


静かな微笑みとは対照的に、エリーナの心がどんよりと曇っていく。


今すぐ謝罪したい気持ちだったが、メロウナの言葉がチラついて謝罪すらも憚られる。何も言えず、ただひたすら微笑を浮かべることしか出来なかった。



「お二人とも、せっかくのご朝食が冷めてしまいますよ。」


タイミングをはかったようにロナウドが声をかけてきた。

自然な動きでティーカップに紅茶を注ぎ、気まずい空気を温かく和らげていく。



「今後の話がしたい。食べながらで良いから聞いてもらえるか?」


「もちろんですわ。」


いつもの様子に戻ったフィニアスに、少しだけ安心したエリーナ。彼の食事に手を付ける動作に合わせて、自分もカトラリーに手を伸ばした。



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