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-ぼかダン★男魔法少女-冒険者学校、神様、ダンジョン。それとは関係なく男で魔法少女 1話版

作者: 六羽海千悠

5月19日の文学フリマ東京39に出店する「WEB小説最強1話集」にいくつか載せる短編の一本です。思ったままの感想や誤字報告をいただけるととても助かります。





 どのダンジョンに行くべきか。それが問題だった。


 未だに選択肢に迷ったまま、家を出る。色々バタバタしているうちに、ついに入学式当日になってしまった。猶予はあと2時間もないが、なんとか一回はダンジョンにいけるだろうか。

 外に出ると部屋との寒暖差に身震いする。寒いのは苦手だ。

 四月に入ったのだからもう少し暖かくしてほしいが、まだ桜も咲けない今年の四月に暖かくしろなんていうのは無理な注文か。まだ桜は蕾がつき始めたばかりで、満開になるにはもう少しかかるとニュースでやっていた。今年の桜は卒業にも入学にも間に合わなかったみたいだ。


 エレベーターで降りて、マンションのエントランスを出て歩く。三分も経たずして、最寄の『登戸駅』についた。最近まで知らなかったが、この小田急線と南武線が交差する駅は、思っているよりも利用者の多い駅だ。まだ朝の6時台だというのに結構な人が行き交っている。引っ越したときはこの人の多さが意外だったものの、1ヶ月近くもたてば慣れるものだ。駅周辺も再開発が進んでいるので、さらに混雑してもおかしくはない。


 駅二階にあがり、立ち止まってスマホを開いた。ダンジョンマップアプリには現在地の『神奈川県川崎市多摩区』のマップが表示されており、その登戸駅と被った場所でダンジョンのアイコンが二つ載っている。拡大してアイコンの一つをタップすると詳細が表示された。


 まずすぐそばにあるのは、ワルキューレ系登戸駅ダンジョンだ。美人な戦乙女を召喚できる恩寵品がドロップするようで、かなり人気だ。ワルキューレと一緒に戦う戦闘動画は、ダンジョン動画の中でも常に一定の人気があるコンテンツの一つらしい。ただそのため、あまりに狙う人が多くすぐ攻略されて不活性化してしまうのが難点みたいだ。現在も例に漏れずダンジョンは不活性化状態で、アプリのアイコンにはばつ印がついている。

 遠目で実際に入り口を見てみると、不活性化状態でダンジョンに入られないにもかかわらず、地上まで人が並んでいる。あの様子ではまた活性化してダンジョンに入れるようになっても、中に入るのは時間がかかりそうだ。


 もう一つ登戸駅にあるダンジョンはどうだろう。市杵島姫系登戸駅ダンジョン。これは至極真っ当なダンジョンで、滅多に不活性化して入れなくなることもない。現在も攻略しているパーティーがいるし、アプリにはその人たちのIDが数文字を除いて伏字にされながら表示されている。


「みんなパーティーで、ソロがいない……」


 確かに真っ当なダンジョンだが、あまりにも真っ当すぎる。不活性化しないということはそれだけ難易度が高いということ。市杵島姫系登戸駅ダンジョンは上級ダンジョンであり、特級ダンジョンを除いて、階級が一番高い。完全なベテラン向けダンジョンなのだ。


 広いフロア、深い階層、強い敵、特殊なギミック、いやらしい罠。そんなのが揃い踏みのダンジョンを攻略できるのは、ダンジョン発生当初に何がなんだかわからないで探索していたイカれたベテランとか、恩寵品やスキルに恵まれたチートや天才だけだそうだ。その分神様が報酬も大盤振る舞いしてくれるそうだけど。


 ただ重要なのは……今ここで攻略するダンジョンを悩んでいる人間は、一度もダンジョンに入ったことのない初心者中の初心者だということ。スキルもない。加護もない。恩寵品もない。レベルもない。仲間だって当然いない。

 こんなのに、上級ダンジョン云々の話なんて必要がなかった。今上級ダンジョンに入れるわけがないのだから。そんなのはいっそ清々しいほど、無謀極まりない話だ。

 

 なので市杵島姫系登戸駅ダンジョンは当然のようにパス。ついでに言うとワルキューレ系登戸駅ダンジョンも中級ダンジョンで、こっちも全然荷が重いし無謀だ。


 登戸駅にあるダンジョンはその二つだけ。なので現状、この登戸駅でやるべきことは何一つない。ならなぜきてしまったのだろう。通学も徒歩なのに。本当に無駄な時間だった。


 ふと、ぞろぞろと人がなだれ込んでくる。

 南武線に電車がきたようだ。改札がひっきりなしに動いている。このうち多くが小田急線へ流れるように移動する。登戸駅を利用する人の多くが、小田急線と南武線の乗り換えが目的であり、登戸は経由地でしかない。


 ……それが一昔前における、登戸駅の特徴だったようだ。

 現在は当然、違う。電車から出てきたのは、袴やジャージ、ローブや鎧なんかを纏う異質な集団だ。数年前ならコスプレイベントでも疑うところだけど、もはやそんなことを言う人の方が白けた目で見られる時代。こんな光景はすでに見慣れた光景になっていた。


 いわゆる『冒険者ダイヤ』というものだ。本来の一般客や通勤者とは別に、ダンジョンへ向かう冒険者のための電車が、東京と神奈川を行き来する路線でこぞって導入されている。さらに全国的にも導入は拡大傾向にあるそうだ。一応剥き出しにしないのが義務とはいえ武器を持ち歩き、見た目も威圧的だ。歩くたびにガチャガチャとうるさいし、見てると分けられるのも当然に思えた。


 この人たちもこれからどこかのダンジョンへ行くのだろう。登戸のダンジョンか、天川のダンジョン群なのかは分からないけど。そうしてダンジョンを攻略して、得たものを売ってお金を稼ぐ。ダンジョン出現後にできた職業、それが冒険者だ。


「(この人たち全員が……先輩かぁ)」


 心の中で先輩たちに挨拶しながら、冒険者の雪崩と接触する前に急いで登戸駅を離れた。


「がしゃどくろ……ノーム……那須与一……」


 ときどき立ち止まってスマホを見ながら街を移動する。

 地味に地図としても使えるのがダンジョンマップアプリのいいところだ。でもダンジョンのアイコンにも気を配る必要がある。行きたいダンジョンが先に攻略されて不活性化したら無駄足だ。そのときは別のところに行かなければならない。


 狙い目は下級ダンジョンだ。中級や上級と違って長くても15層と階層が浅い上、一層も狭めで、敵も少なく弱い傾向がある。初めていくダンジョンにはうってつけだろう。ただ正直15層も少し深すぎる。ただでさえ初めてでソロでの攻略。さらに別の冒険者と鉢合わせになる可能性もある。相手のマナー次第では、絡まれたりボスの取り合いになったりすることもあるため、もっと敵だけに集中できる浅い層が好ましい。

 ちなみにダンジョン内でのモラルや秩序は、一応法律や免許、ダンジョンアプリなどでできることをしているようだが、中に入れば基本は無秩序で個々頼み。なので別の冒険者と出会った際の注意事項もアプリにかかれていた。神様もそこらへんを配慮する気はないらしい。


「そもそも、このあとの入学式に遅れちゃダメ……」


 そうなると15層のがしゃどくろ系ダンジョン、12層のノーム系ダンジョンはやめとくべきだ。残る近場の下級ダンジョンは……。


「……那須与一」

 

 この世界に現れた神々には、かつて実在していた人物も含まれていた。だが同時期に現れた他の神様は、本当か嘘かもわからない逸話を持った神話の神々だ。実在していた元人間の神様は、実在していた分だけどうしてもこの世界の枠組みに囚われがちで、小さく収まってしまう。

 そのため下級、頑張っても中級止まりになりがちなのが英雄神の特徴だ。那須与一も例に漏れず下級神で、近くのダンジョンも6階層と初心者にありがたい構造をしている。まさに今行くにうってつけのダンジョンだ。


「って、あぁ〜」


 行こうと思ってた那須与一ダンジョンが、たった今攻略済みに変わってしまう。下級ダンジョンなため数時間でまた活性化するだろうが、入学式にはもう間に合わない。


「このままダンジョン未経験で、入学式を迎えるのは避けたいのに……」

 

 これから入学する学校は、国が設立したダンジョン専門の国立学校だ。ダンジョン体験教室や私立学校なんかとはわけが違う。将来有望な人が集まり、ダンジョンに関わる様々な分野で、日本の未来を背負って立つ人材の育成を期待されているそうなのだ。


 実際何人かの入学予定の生徒が、ニュース番組で取り上げられていた。むしろ動画サイトで自分から行くことを報告してる猛者もいる。


 そんなところにこんなゴリゴリの初心者が通っていいわけがないと思うんだけど。どう考えても荷が重い。とはいえ通わなければならないので、ならばできる限り体裁は整えたほうがいいと、朝からダンジョンを探し回っていたところだった。引っ越しや手続きなどが忙しく、今日まで先延ばしになってしまったことがあまりに悔やまれる。


 なんて前途多難な高校生活なのだろう。なんせ入学の前から問題しかないのだ。高校生活ですらまだない。


「にゃーお」

「にゃん?」


 急に猫に話しかけられ、とっさに猫語で返してしまう。

 声をかけられた方を見ると黒猫がこちらを見ていた。弾むような足取りで、前を軽快に横切っていく。なんか黒猫が横切ったらなんて話があったような……なんだっけ。まあいいか、どうでも。

 目の前を過ぎ去った黒猫はそのまま歩いていくのかと思いきや、途中で立ち止まってこちらを振り返った。まんまるな瞳でじっと見つめてくる。


「にゃーお」

「まーお」

「にゃーお!」

「まーお」

「にゃん」

「みゃ」


 ふむふむ、なるほど。

 とりあえず話しかけてみて、重要なことがわかった。この猫は猫語で話しかけたら、言葉を返してくれるタイプの猫だ。当然猫語なんて出来ないので、何を話してるのかはさっぱりわからないが。


 黒猫はまた少し歩くと立ち止まって、こちらに振り返り再び声を上げた。


「まーお」

「……ついていけばいい?」

「にゃ」


 今度は明確に話が通じたような気がした。それから歩きだす黒猫の後ろをついて歩く。なんだか童話の中に入ったようで不思議な体験だった。現代でこんなことってあるのかな。いや現代こそいっぱいあるのか。神様や魔法の動画なんてものが、いろんなサイトで転がっている時代だ。


 黒猫は空き地にある荒れた雑木林へと入っていく。無断で入っていいのか気になりつつも進むと、荒れた空き地とは思えないほど、しっかりした造りの地下へ続く階段があった。


 ……たぶんこれ新規ダンジョンってやつじゃないかなぁ。

 

 アプリを開いてマップを見てみるが、現在地にダンジョンを示すアイコンはついていない。間違いなく未登録のダンジョンだ。見た瞬間にそうだと思った。神様の管轄する場所を、こんな野晒しにしておくことはないはずだ。どれだけ辺鄙なところにあるダンジョンでも、ボロい屋根くらいは最低限ついている画像しか見たことがない。ここもすぐに屋根程度ならつけられるだろう。


「新しいダンジョンか……」


 結構よくあるらしい。あまり調べてはいないため断言はできないけど、アプリを初めて開いた時にもそんな注意書きが出ていた。そうだ。アプリにダンジョンを見つけた時の方法がのってたな、そういえば。


「あっ……猫……」


 猫が階段を降りてダンジョンに入っていく。

 あとを追って階段を降りるがそこに猫の姿はもうなかった……。


 勢いあまって中に入ってしまったが、地下一階のこの場所は既にダンジョンの中だ。つまり初ダンジョンである。最初にたどり着くダンジョンの一階層は、どこも共通してセーフティ階層となっているため敵は出てこない。安全なただの部屋だ。


 今いるこの場所も、牢屋の中のように狭く薄暗い空間だ。壁が遺跡っぽい雰囲気をだしているが、駅の待合室や喫煙室を彷彿とさせる微妙な広さで、ぼんやりとした照明が窓の無い部屋を唯一照らしている。基本的に一階層には何も無いが、唯一神棚と賽銭箱が置いてあるのが一階層の特徴だ。ここにもこじんまりとした神棚が角の壁に置かれており、その下に喫煙所の灰皿のような細い賽銭箱が置かれている。


「……たぶん下級ダンジョンだよね」

 

 一階層の広さはダンジョンの階級と規模に比例するらしい。ただこんなに狭い一階層は動画や画像でも見たことがないので、下級でも相当下のダンジョンのはずだ。かなり期待ができる。


「まず神棚へと移動する」


 アプリに「未発見のダンジョンを見つけた時は!」というボタンがあったので、それを押すと指示が色々と出てきた。ダンジョンを登録するためにやる必要があるそうだ。神棚の写真を撮ったり、角から角まで歩いたり、色々やらされる。ちなみに神棚はダンジョンを管理する神様に由来した作りをしているそうで、神様マニアなら見ただけでも管理する神様がわかるらしい。当然そんな能力はないので大人しく指示に従いダンジョンを登録する。


 すべての指示を終えて少し待つと画面が最初のマップに戻った。あらためてマップをみてみると、現在地にダンジョンのアイコンが出現している。アイコンをタップすると、ここのダンジョンの詳細が表示された。


 『パステト系登戸ダンジョン』。


「パス、テト……」


 わからなかった。

 調べてみると、エジプト神話に出てくる猫の神様らしい。もしかするとさっき案内してくれた黒猫が、パステトだったのだろうか。そうだとしたら恐れ多くて体が少し震える。神様は別次元の存在だ。そんな存在と直接会うなんてあまりに烏滸がましいので出来る限り会いたくは無い。本当に。別に神様が怖いから会いたくない、というわけでは決してなく。


 ここは一旦忘れて、考えないようにしておこう。


 それよりもダンジョン内部のマップだ。ここダンジョンは内部構造が公開されている。

 ダンジョンのマップがどれくらい表示されるかは、神様の方針や気分次第だ。全て非公開だったり、一部しか見せないことも全然ある。いじわるな神様なら嘘のマップの時もあるらしい。でもここの神様は初心者に優しい作りでも目指しているのか、さらに敵の位置と数まで表示されていた。至れり尽せりだ。


 全四階層の下級ダンジョン。あの那須与一を超える、超初心者向けダンジョンだ。とても素敵な巡り合わせ。これを攻略しない手はないだろう。


 攻略層は三層。一層ごとに部屋が二つあり、その部屋ごとに敵がいる。また敵の数は、二層が一体、三層が二体と一層ごとに増えるようだ。通路には敵が出てこないが、その二つの部屋を通らないと次の階層にいけない構造をしている。敵の強さ次第では四層の三体の部屋が厄介になるだろう。でもこの部屋を超えないと、四層二つ目の部屋である、最奥のボス部屋へ辿り着けない。


「……よし」


 まずは入って攻略をしてみよう。

 スマホをしまい、入ってきた階段とは反対側にある奥への通路へと進む。

 ……と見せかけて一度神棚の前で立ち止まった。二回手を叩いて、手を合わせながらお辞儀をする。


「えっと……ダンジョン攻略させていただきます」


 出来立てのダンジョンで、先ほどの黒猫のこともある。もしかしたら神様が近くにいるか、見ているかもしれない。念の為、神様のご機嫌を伺っておく。


 ……これで怒られないかな?


 気を取り直して奥の通路へ向かう。

 と見せかけて……やっぱりもう一度神棚に戻った。


「にゃあにゃ……にゃにゃにゃにゃ、にゃーにゃ、にゃっ!」


 念の為、猫語でも同じように言っておいた。

 

 

 というわけで、ダンジョン攻略だ。

 一階層の奥に階段があったので、そこを降りて二層についた。通路を進んで少しすると、最初の部屋が見えてくる。

 いきなり突入するのもどうかと思うので、ひとまず顔を出して中を覗き込んでみた。一階層よりも大分広い雰囲気が似たような部屋で、敵が一体徘徊している。血走った目をした正気でなさそうな、猫の頭部をしている細身の人間っぽい生き物だ。

 とりあえず異様な容態だ。一目で会話が通じなさそうなことがわかる。きっと話しかけても友達にはなれないのだろう。


「あれがダンジョンのモンスター……」


 初めて見た。本来は異界の敵らしいが、見たことはない。

 首を引っ込めながら、呟く。


「でも武器、どうしよ……。結局決められなかった」

 

 どの武器にするか。それもまた問題だった。なんだか問題ばかりだ。

 通学カバンに突っ込んでもってきたものを取り出す。さて、どれにしよう。

 バールのようなもの、金属バット、スコップ、メリケンサック、靴下に砂を入れた自作鈍器。


「なんでもいいから、とりあえずやってみよう」


 靴下に砂を入れた自作鈍器を手に持ち、他のものをしまう。

 さて……今からダンジョンでやる、初めての戦闘だ。敵は一体。焦らず不意をつければ、危険なく戦って勝つことができるはずだ。

 部屋を覗き込んで敵の不意をつけるタイミングを見計らう。近くを通り過ぎて、背を見せたタイミングで飛び出した。


「…………しっ」


 目一杯の力で攻撃するため、直前で息を吐き出す。

 息遣いで敵に気づかれ振り返られるが、もう避けるには遅いタミングだ。自作靴下鈍器は、猫人間ゾンビの頭部へ叩き込まれる。


 ブチブチ。

 そんな嫌な音が振りかぶってる間に聞こえてきた。同時に靴下が千切れて、中から砂が飛び出す。重みがなくなり、ただの布となった靴下の生地が、敵の顔をふぁさりと撫でた。

 

 失敗した……。

 幸い、敵の大きな瞳が災いして、飛び散った砂が目に入ったようだ。充血した目を必死に掻きむしっていて、襲いかかってくる様子はない。というより、すごい隙だらけだった。


「全然だめじゃん、もう!」


 猫人間ゾンビの顔を、素手で思い切り殴る。

 次の瞬間、猫人間ゾンビは後方へすごい勢いで吹っ飛び、硬い壁に打ち付けられていた。手に砕いた骨の感触が残っている中、壁に当たった猫ゾンビに視線を向ける。動く様子も、立ち上がる気配もしない。

 少しして光の粒子となって、猫人間ゾンビは消えていった。消えた場所にまで行くと、白い鉱物の粒のようなものが落ちている。つまんで拾い、そのままのぞきこむように見てみる。エアガンの弾ぐらいの大きさだ。


「一個の勾玉にもならないんだ」


 ダンジョンでどの敵からも基本ドロップする勾玉。本来はちゃんとした形のものがドロップするはずだが、あまりに初心者向けすぎるのかカケラだけだった。

 ただこんなのでも日本のエネルギーや産業を担う大事な資源だ。ちゃんと集めて、丁寧に持っておく。売れば食費分くらいにはなるはずだ。

 

 他にも恩寵品などのドロップが無いかを確認して、先へと向かう。二つ目の部屋にも、全く同じ猫人間ゾンビが一体、徘徊していた。背後からパールで殴り倒す。今度は不意打ちをきちんと決められて満足だったのだが、パールが少し折れ曲がった。ドロップは勾玉のカケラのみ。


 階段を降りて三階層へとつく。部屋まで行って覗き込むと、猫人間ゾンビが二体に増えて徘徊している。まず不意打ちで一体倒して、残った敵と一対一に持ち込めばなんとかなるはず。いざ戦闘へ。


「うーん……」


 二体の敵を倒し、勾玉のカケラを拾う。納得いかない戦いを思い出して、声が漏れた。

 敵は問題なく倒せた。でも一体目の不意打ちで、パールが完全にひん曲がって、使いものにならなくなってしまった。結局二体目を最初のように素手で殴り倒してしまい、それが少し不満だった。


「武器が力に耐えられない……いつもこれだ」


 それからメリケンサック、金属バット、スコップと試しながら先へ進んだ。メリケンサックは中指のところが凹んで指の嵌め心地が最悪になり、金属バットはベコベコに、スコップは振ってる途中で先の部分が取れた。安物はこれだからダメだ。


 結局持ってきた武器全てがおしゃかにして、手ぶらで最奥のボス部屋に着いた。


「ぶにゃぁ〜」


 これまでよりも少し広いボス部屋で、ボス面したボス猫が偉そうに腕を組んでたっている。横にも縦にもデカい片目に傷跡のあるボス猫は、三日月みたいないやらしい笑みを浮かべて、太い腕の先につく細くて鋭い爪をぎらりと見せつけて鳴き声をあげた。


 ……あの爪は気をつけないと。これまでと違い傷を負いそうだ。

 注意しつつ部屋へ足を踏み入れると、ボス猫は待っていたとばかりに攻撃を仕掛けてきた。ギラついた爪を突き立てるために、正面から突っ込んでくる。その速度は意外にも素早くて俊敏で、巨体ながらも猫は猫だと感じた。


 だが攻撃自体は単調だ。隙もいくらでもある。ひとまず姿勢を低くして、突っ込んでくるボス猫の懐へと潜り込んだ。そして下から突き上げるようにして、思い切りボス猫を蹴り上げる。ボス猫の勢いも利用した結構いい攻撃をいれられた感触があった。


「に゛ゃっ!?」


 ボス猫が宙に浮いて飛んでいく。少し離れた場所でだむだむと弾むボールのようにバウンドし、しりもちを地面についたボス猫は、何が起きたのか把握するように周りを見回していた。こちらの仕業だと気づいたボス猫は、立ち上がり警戒をするようにフシャーとこちらを威嚇している。


 うーん……。結構タフだなぁ。しっかり攻撃が入った感じは、したんだけど。

 それこそさっきの猫人間ゾンビなら、天井にあててぺしゃんこにできただろうに。だが蹴り上げた時に感じたボス猫の感触は、丸めた運動マットを蹴ったみたいに鈍いものだった。大きくて分厚い上に、毛皮と毛で覆われたボス猫の胴体は、衝撃を与えても体内にまで伝わりづらいのかもしれない。

 こうなると一気に攻撃が貧弱になっちゃうから、武器が欲しくなるのだ。壊れなくて、大きくて、威力があって持ち運びやすい武器が手に入らないだろうか。


 あとこのボス猫……。本当に今日初めて戦います、みたいな初心者一人だったらたぶん結構きつい。初心者向けだが、舐めてると普通に死にかねないダンジョンだ。ダンジョンってもしかしたら思ってるよりきつい? ちょっと舐めすぎていたかと反省した。


「にゃあぁぁあ〜〜〜」


 ボス猫が突っ込んでくる。だがやはり単調な攻撃だ。タフさの代わりに攻撃を単調にすることで、バランスでもとってるのだろうか?

 わからないが、高くジャンプをして攻撃を避ける。ボス猫は避けた動きに対応できず、そのまままっすぐに進んできたので、天井に着地したあと、地面に向けて、もう一度天井から思い切りジャンプした。

 真下を通り過ぎるボス猫めがけて加速し、その頭部をめがけて着地する。加速した勢いのままに、ボス猫の頭部を思い切り踏みつけた。地面と挟み込まれた頭部から「に゛っ」と鈍い断末魔が聞こえた直後、地面に頭をめりこませてボス猫はぐったりと動かなくなる。やがて淡い光となって、ボス猫の巨体が消えた。足元に広がっていた血溜まりも消えたので、汚れずにすみそちらにもほっとした。


「うわードロップ品だ」


 ボス猫が消えたあと、同じ場所にドロップ品がいくつか転がっていた。明らかにこれまでより量が多く、わくわくしながら駆け寄って、一つ一つを手に取り見てみる。

 小さな勾玉が二つ。ただカケラではないしっかりとした形のやつだ。それから猫のマークが描かれたコインと鈴のついた黒い首輪。チョーカーっていうのかな。コインはよくわからないけど、チョーカーは間違いなくアレだ。


「初めてで恩寵品は運がいい気がする」


 恩寵品はたまにダンジョンでドロップする、神様が特殊な効果を付与してくれた道具のこと。神様が授けてくれる、普通にダンジョンをクリアするだけでは手に入らない『スキル』と違い、誰でもドロップできて似たような効果を持つ恩寵品は、勾玉に並ぶダンジョンの目玉産出物だ。このチョーカーもきっと何かしらの効果があるはず。下級ダンジョンだから、そんなに強力ではないだろうけど。


 ゴゴゴ、と唐突に行き止まりだった壁の一部がスライドして奥への道ができる。

 入ってみると、ただの行き止まりだ。すると背後で再び壁がスライドして道が消える。まさか罠だろうか。わけがわからずいると、入った部屋全体が細かく揺れだした。わけがわからずいると、チンと音が鳴って再び壁がスライドして開く。開いた場所から部屋を出ると、そこは最初に訪れた一階層だった。


「……エレベーターだこれ」


 一階層に出ると背後でゴゴゴと壁が閉まっていく。そしてそこが開くとは思えないほど綺麗な壁となり、見覚えのある一階層に完全に戻った。

 確かに下手したら下級でも十五層降ることもある。そう考えると、エレベーターが完備されているのはありがたいか。上り下りが非常に手間だろうし。そう思って気にしないことにした。


 それよりもそろそろ学校へ行こう。結構いい時間だ。

 一階層から地上へと上がり、外に出る。随分朝日を眩しく感じた。


「ん……?」

「あ……」


 視線を感じて振り向くと、女子がいて目が合った。

 女の子でも、女でも、女性でもなく、女子。それが一番いいように思えた。なぜならその子は、これから自分が通う学校の制服を着た、女子生徒だからだ。


 ただ、逆に言えばそれだけ。別に知り合いでもない初対面の子。そんな人と目が合い、当然ながら気まずい空気が一瞬流れる。


「おはようございます」

「お、おはよう、ございます」


 とりあえず挨拶をしてみる。少し戸惑いながら女子生徒は返してくれた。


「…………」

「…………」


 女子はスマホを見たり、周りを見るふりをしながら、そわそわしている。たぶん話かけたそうにしていると思う。どうせこれから同じ学校へいくんだし、無視して行くのも気まずいし、ならばと自分から話かけてみることにした。


「ここのダンジョン、攻略する気だった? だったらクリアしちゃってごめんね」

「あ……そ、そうなんだね。クリアおめでとう。別に新しいダンジョンが気になっただけだから気にしないでいいよ。……難しいダンジョンだった?」

「見ての通り結構な下級ダンジョンだから、難易度は相当優しめだったんじゃないかな。でもクリアできてよかったから嬉しいよ。どうもありがとう。同じ学校だよね? 私……じゃない。僕一年なんだけど」

「あ、ほんと!? タメじゃん! よかった、私もなの! これから入学式だよね? よければ一緒に学校まで行かない?」

「全然いいよ。学校の場所がよくわからないけど」

「え、じゃあちょうどいいじゃん! 私ここ地元なんだ。地図なくてもいけるから、行きながらどんなダンジョンだったか教えてよ!」


 それは普通にありがたかったので笑顔で了承した。それをみて女子はほっとしている。


「うわー話しやすい人で良かったぁ。あ、自己紹介しとく? 私、鏡宮友架」

「僕は……僕、は…………んー……あー」


 徐々に自分の顔が引き攣っていくのがわかる。

 やがて観念して、会ったばかりの鏡宮さんへ恐る恐る尋ねた。


「……自分の名前、なんだったっけ?」

「え……?」


 鏡宮さんは、急に不安そうな顔を浮かべていた。



 ◇

 


 耳につけたイヤホンから、ラジオのパーソナリティの声が聞こえる。

 淡々とした口調ながら、言葉に軽薄さを感じる印象の男だった。


「まぁ、今ご覧になったのがね。旧多摩川中流部分を通過する、小田急線の車内から撮影された映像なんだけども」

「ちょっと沼川さん、これラジオですから! 映像は見られないですよ!」

「え? あぁ、そうだったそうだった。まぁどうせ、みんな見たことがあるからいいじゃない。累計15億回再生を超える伝説のショート動画。無断転載を含めれば、どれだけ再生されたんだか。見たことがない人のほうが少ないって絶対。だから皆もあの動画を思い浮かべてくれればいいからね。しかし今改めて見てもすごい映像だ」


 アナウンサーらしきアシスタントの女性と小気味のいい会話が、テンポよく進む。


「一年半が経った今でも、まだこの映像はワイドショーで繰り返し使われていますよね」

「だってこんなにも貴重な映像、他にある? ダンジョンが発生した瞬間の天川を捉えた映像なんてさ」

「いえ……ないと思いますね」

「この映像がすごいのはさ、まずなんといっても主神『天照大神』を映像に収めていることだよね」

「光っていて姿は見えませんが」

「それでも宙に浮かぶ御姿から、圧倒的な存在感が映像越しからでも伝わるでしょ? まさに神々を統べる存在に相応しく、納得させられる。さらに主神が浮かぶ真下。そこに多摩川を堰き止める原因にもなった『大割れ目』が見えるね。実はこれもかなり貴重だ」

「別の世界と繋がっている世界の穴、通称次元孔ですね。この穴へ多摩川の水がすべて流れ込んでしまい、干上がってできた新たな土地を元に現在の天川地区が誕生しました。ただ沼川さん、この大割れ目は現在も現場に行けば見れますよね?」

「わかってないなぁ。この映像とは正直別物なんだって。今の大割れ目には冥界の神々が居座り、穴を塞げられて秩序が保たれている。でもこの映像に映っているのをよく見てご覧。神々に塞がれる前の、いわば生の状態の大割れ目だ。この直後にはもうハデス、アヌビス、閻魔といった神々に穴が塞がれるのを考えると、奇跡的なタイミングで撮れた映像と言えるんだよ」

「なるほど……確かにそう聞くとすごいですね……」

「しかし世界を見渡しても、これだけ大きな次元孔があるのは天川だけだ。何かあるんじゃないかと、思ってんだけど。……にしても改めて見ると随分変わったね、天川も」

「あ、私もついにこの間天川に行ったんですよ。ちょうどこの大割れ目のところです」

「え、まだ行ってなかったの? キャスター失格じゃない? それ」

「ひどいですねー。私はスタジオが多いから、立て続けに色々起きすぎるとバタバタして仕事場から離れられなくなるんですよ。もうずっと途切れなく事件が起き続けるものですから……」

「ごめんごめん。それで、どうだったの? 大割れ目に行ったんだよね?」

「すごかったですよ。本当に別世界みたいに感じて。私、昔ここの近くに住んでたんですけど、全っ然変わってました。川だった場所が全部綺麗に舗装されてて。それでも驚きだったんですけど、宙に浮かぶ高天原を見たらもう言葉を失いました。幻想的すぎませんか? あと大割れ目に落ちていく多摩川の水も滝みたいで壮大でしたね」

「あの大割れ目に落ちていく多摩川の水も、世界から完全に水が消失しているってことで、最近は問題視されてるけどね。専門家たちが政府の責任だとしてぽつぽつと声をあげはじめたところだ」


 なるほど……そうなんだな。

 ふむふむと頷きながら、耳を傾ける。横に並んで歩く、鏡宮さんのじとっとした目つきに気づかずにそのまま聴き続けた。


「政府の話が出てきましたが、沼川さん。一昨年のダンジョン発生から現在に至るまでの政府の動きというのは、どのように評価していらっしゃいますか?」

「んー難しい質問(笑)。なんせまだ対応中のことも多くあるからねぇ」

「そうですよね。現在もダンジョン関連では気の抜けない状況が続いています。ただ実際にとった政府の対応というのが、これまでいくつかありますが。それらを振り返ってみていかがでしょうか?」

「まぁ、一般論として世の中の賛否は多いよね。でも今の時代、賛がそこそこあるだけでもよくやってる方なんじゃない? 正直仕方がない部分もあると思うし。だって、誰かどうにかできる? これ。正直同情するけどね。はは」

「では、沼川さんの政府の評価は、どちらかといえば良い方という?」

「良い方っていうより、もっと悪くなると勝手に思ってたかな。本当に社会の原型もないくらいぐちゃぐちゃになると思っていたから、それよりは社会の形が保てていますね、っていう」

「そうですか。個々の対応で沼川さん自身の賛否はどうですか?」

「まず天川を『天川特別区』として、東京からも神奈川からも独立した国直下の自治区域にしたことは悪くないと思うね。重要度が跳ね上がった天川を国で議論して、そのまますぐに反映できるのは効率的で対応も早くなる。銃器以外の武器を持って歩けるようにしたこともダンジョン攻略を身近にするには必要なことだっただろうね」

「武器の携帯は一方で治安の悪化や、凶悪犯罪が極端になることが懸念されています」

「そうだね。でもダンジョンを攻略しないと極端に言えば世界が終わっちゃうわけなんだから、ダンジョンを優先する動きは理解できる。政府の動きはそういう意味では一貫性があるよね。社会や経済もこれからはダンジョンを中心にしましょうって。ダンジョン庁の設立、ダンジョン学校の設置、ダンジョン攻略者への育成支援、ダンジョン税や恩寵品取引のためのデジタル通貨ダンジョン円の導入。このあたりの動きはびっくりするくらい早くて、本当に日本の政府? みたいな。あはは」

「結構話を聞いていくと、沼川さん絶賛のようにも思うんですが」

「そこまでならね。悪いところも同じくらいあるよ」

「ぜひお聞かせいただけますか?」

「まず主要国との関係悪化。特に一神教圏との軋轢がひどい。これまで友好国だった国々がこぞって仮想敵国となり世界的に孤立している。確かに多神教国として相容れないところもあるけど、もっとどうにかできたんじゃないかと思うけどね。それと治安の悪化。さっきの意見と逆をいうようだけど、もっと天川など必要がある一部に絞れば両立ができたはずだ。武器携帯の緩和初期に起きた半グレや反社会組織によるダンジョンの占拠は、かなり政府の印象を悪化させる出来事だった。今は免許制にすることで落ち着いているが、最初からやっとけよって話だからね。あとシベリアから千島列島を通って南下してくる異界の敵への対処も芳しくない。最後に一番最近で問題になっているのが世間を賑わせてる政府のスキャンダルだ」

「以前から政府は、異界の存在を認知していた、という週刊誌の記事ですね」

「飛ばしの可能性もあるけど、話の筋は通っているんだよねこれ。実際ダンジョン発生時の政府の動きはグズグズのダメダメだった。なのにある時から急に動きが早く、的確になったのは、総理以外の人事が一新する珍事がおきたあとからだ。新しく重用された議員は誰もが地味で無名。誰も知らない。でも調べていくと、有名な神社の家系だったり、新撰組の流派の道場の出だったり、元巫女や占い師、イタコなんて胡散臭い職業や経歴の持ち主ばかりだった。そして結果的にこれが功を奏して政府は持ち直したんだ。こうしたスピリチュアルな人たちの台頭は、民間でもみられた。実際取材にいったこともあるんだけど、彼らは口々にこういうんだ。自分たちは元々異界の存在を知っていて、彼らと戦ってきた、ってね」

「本当ならとんでもないことですよね。政府は今まで異界の存在を認知しながら国民に黙っていたことになります」

「周囲にバレないよう、世界の敵と戦う……。まるでアニメや漫画みたいなことが現実で起こっていたなんて痺れるね。侍、魔術師、陰陽師、魔法使いあたりは確認されてるが……果たして最近人気の勇者やスーパーマンはいるのか? 冗談はさておき、個人的な意見としても、この問題はうやむやにせず最後まで明らかになって欲しいところだ。それに政府が異界への対抗戦力を確保するため組織ごと運営していたなんて話もある。本当ならかなり酷い話だ。人身売買に近い方法で人材を集め『魔法少女』と称して戦わせていたなんて許されることじゃ──」


 ……くん。ひ

 ……日向くん。


「日向くん!」

「え……あ!」


 びっくりした。そういえば鏡宮さんの言ってる名前が、今の自分の名前だった。


「ねぇ……いつまでラジオ聞いてるの?」

「あ、ごめん……鏡宮さん。退屈だったよね」

「まぁ……一緒に行ってるのに普通そんながっつりイヤホンして何か聴いたりしないよね……。最初にちょっとダンジョンのこと話してからずっとだし……。確かに私も聴いていいっていっちゃったけど……まさか本当に聞きだすと思わなかったから……一応異性で二人きりなのに……」


 後半はごにょごにょ言って聞き取り辛かったが、拗ねてる感は伝わってきたので大人しく言い訳を並べる。


「ごめんね。正直言うとさ、さっきクリアしたダンジョンが、人生で初めて入ったダンジョンだったんだよね。これから行く学校がすごいとこでしょ? だから少しでもダンジョンのこと知っておかないと不安なんだ」


 そういうと、すごく驚いた表情で鏡宮さんが言った。


「うそ!! じゃあ今日が初めてのダンジョン!? よく高校受かったねー。日向くん。言っちゃあれだけど、かなりの難関なんだよ。国立天川ダンジョン大学付属第二高等学校って。私も結構試験大変だったし苦労して入ったんだけど……」

「そうなんだ……」


 試験を受けた記憶はなかったのでなんだか申し訳ない気分だった。鏡宮さんはなんだか考え込んでる様子だ。


「うーん……。特別枠、ってやつなのかな?」

「特別枠?」

「なんか噂であるらしいよ? ダンジョンがある前から修行とかして異界の敵と戦ってた人が、試験返上で入学できる枠みたいなの。関西のダンジョン校だと結構そういうの多いってネットには書いてあったけど……。関東にもあるのかな?」

「へー。……そうなのかな?」

「本人にわからないなら、私にもわからないかなぁー」

 

 特に詳しい説明もないまま、高校へ行くようにとだけ言われて書類が送られてきただけなので、本当のところは自分でもいまいちよくわからなかった。


「まぁ入学出来てるんだからいんじゃない? ラッキーラッキー。ダンジョン業界は伸び代しかないから、将来仕事からあぶれることはないよ! 知識不足とか実力不足はこれから頑張れば良いしさ! それに何も戦うだけがダンジョンじゃないしね。あ、じゃあ私が行きながらダンジョンについて教えたげよっか? 結構ダンジョンにのめり込んでるからさー同学年なら結構いいとこいってる自信あるんだよね、これでも!」


 そういえば真っ先に発見したばかりのダンジョンに来ていた。鏡宮さん本人が言うとおりアンテナが敏感なのは間違いなさそうだし、詳しそうだ。そんな人物に教えてもらえるなら、もはやラジオなんて聞く必要もないだろう。


「本当? もし教えてくれるなら、とても助かるけど」

「うんうん、いいよー。教えたげるよー!」

「やったー」


 横に歩く鏡宮さんに一歩近づいて、ぴたりと肩をつける。さっきから鏡宮さんとの間にある、この隙間を埋めているのだが、時間が経つとまた隙間が出来ていてずっと妙に気になっていた。

 その動きを鏡宮さんが横からじっと見ていた。


「……でも日向くんて、ちょっと変わってるね。話してる感じもなんか……あんま男子と話してる感じしないし。っていうか見た目もかなり女の子っぽいような。喉仏出てないし、肩も華奢だし、声変わりも……それ、してる? 本当に男の子か、怪しいなぁ。一応制服は男物だけど」

「……もちろんそうだよ。さっき生徒手帳みたでしょ?」


 さっき自分の名前がわからなかった時だ。鏡宮さんの機転で生徒手帳で名前が判明した。ただ惜しむべきは振り仮名が書いていなかったことだ。読み方が合ってるかわからない。特に名前の読み方は本当にあっているのだろうか。

 とりあえず漢字の読み方がわからなかったので、生徒手帳ごと見せてその場は凌いだ。その時、性別やら住所やらと個人情報もしっかり見られているので、騙しているなんてことはない。

 

「みたけどさー。だとしたら謎すぎない? 日向くんて」

「謎?」

「だって女の子ほっといてラジオ聞いちゃうのに、距離はすっごい近いんだよ。すかしてるのか、積極的なのか、よくわからないじゃん。テクニックってやつなの? それ。意外とませてるっていうか、女たらし?」

 

 じとっとした目でそう言われた。


「……そうかな? 普通じゃない?」

「普通じゃないと思うなー。同学年の男子なんて、二人きりになると過剰なくらい距離取られるよ。会話だってずっと黙ってるか、もっとバカっぽいことしか話さないし」

「あーなるほど」


 そうか。異性だから距離を取ってたんだ。

 気づかなかった。これは気をつけないと。


「……これぐらい?」

「んーたぶん。それくらいかな」


 なんか遠いなぁ。話しづらい気がする。なんか男って世知辛い?


「じゃあダンジョンについて教えるね。まずは基本的なことからいっちゃう?」

「お願いしまーす」

「オッケー。ダンジョンはね、すっごい遊び心のある面白い施設なんだけど本来は防衛施設なの。異界っていう別の世界にいる侵略者がね、私たちの世界を攻めてこようとしていて、その敵を神様がダンジョンの敵に仕立てあげて冒険者がそれを討伐する。で、倒したご褒美に神様からドロップ品をもらったりレベルがあがったりする。それが簡単なダンジョンのシステムかな」

「ふむふむ」


 知っていることでも、情報源がネット一辺倒にならないために別の人から聞くのは大事なことだと思う。


「ダンジョンができたのは一年半前の『天地開闢の日』。その日に突然、本来繋がらない別世界とこの世界が繋がって、世界の法則が変わったの。そんなこの世界を守るためいろんな神様が姿を現した。日本に現れた神様は、神社で祀られてたりアニメやゲームに出てくるような、私たちのよく知るような神様たち。それで神様は現れたと同時に、ダンジョンを日本中に作った。本当は神様と一緒に、異界の敵と戦えばそれでいいらしいんだけど……日本の神様は、すごい遊び心があってお茶目で前衛的だったみたい!」

「(……遊び心があって、お茶目で、前衛的。……すごいな、鏡宮さん)」


 実際に神様を見たことがあったら、とてもじゃないけどそんなことを言えない。それくらい存在としての格が違うのを見ただけでわからされるのが神様だ。天川の人なら実際に神様を見たことある人も多いと思うので、見た上で言ってるとしたら……鏡宮さんはすごい度胸だ。


「だからダンジョンがあるのって、今のところ世界で日本だけなんだよ。別の国だと神様と一緒に戦ってるところも普通に多いんだって」

「へぇ〜。初めて聞いた。どうやって戦ってるんだろうね、それ」


 そんなふうに鏡宮さんから楽しくダンジョンを教わっているうちに、あっという間に学校の近くまできた。周りを歩いている、同じ制服をきた学生も増えてきている。そういえばここは旧多摩川周辺地域のいわゆる『天川地区』という場所に入っているのだろうか。


「もう天川には入ってるよ。ほら、看板」

「ほんとだ」


 ここから先天川地区と普通に看板があった。


「結構川崎市多摩区の名残もあって割と普通の場所でしょ? まだ一年半だからね。でも天地開闢のごたごたで住民もかなり入れ替わってるから、これから変わってくんじゃないかな。私も中学卒業するときには、クラスの半分が引っ越してインフルエンザで学級閉鎖する時みたいになってたし」

 

 インフルエンザで学級閉鎖する時ってどんな時なんだろう。よくわからなかったが、言いたいことはわかるのでうまく言葉を返す。


「クラスメイトが減るのは寂しいよね」

「だよね〜。あ……あそこから先が天川ダンジョン群だよ」


 天川ダンジョン群。干上がった多摩川中流から下流までの土地にびっしりとダンジョンが密集しているダンジョン地帯。天川が特別視される理由の一つだ。

 ここまできたなら一度見てみたいが、今足を止めてる交差点からでは少し遠くに高い壁の行き止まりしか見えなかった。


「元は多摩川だったから堤防があって、ここからじゃ見えないんだよね〜。学校もうつくし、今から見に行く時間もないしなー。……日向くん、入学式のあと暇なら一緒に見に行く?」

「え、いいの? ……鏡宮さんは大丈夫なの? その、家族とか」

「ちょっとくらい大丈夫だと思う! ご飯食べに行く予定だけど、たぶんそれも夜だし! あ、ついでに私の通ってる天川の鑑定屋さん行ってみる? ダンジョンでドロップ品出たんだよね」

「え〜。すっごい嬉しいけど、ほんとにそこまでしてもらっていいのかな?」

「いいよ〜せっかくできた新しい友達だし! 仲良くしようぜぃ〜えいえい」


 肘で小突いてくる鏡宮さんを拝み倒す。なんか至れり尽くせりで申し訳ないぐらいだ。最初話そうか迷ってた人と同一人物とは思えないな。


「あ〜〜〜ぶ〜〜〜な〜〜〜いーーーーーー! どいてー!!!!」

「え?」

「ん?」


 信号が青になり、交差点を鏡宮さんと渡っていると、横から丸くて大きなものがごろごろと転がって突っ込んできた。信じがたいが、それは人間みたいだ。巨体の人間が、シンプルに凄まじい勢いで転がってきている。今聞こえた野太い声も転がってる人自身のものだ。

 このままだと当たってしまうが、かといって次の瞬間までに二人で巨体を避ける余裕もない。ひとまず鏡宮さんを隠すように前に出る。そして巨体がもう少しでぶつかるというときそれは起きた。


「マジカルシフト、オン!」


 巨体が当たる寸前、突如目の前の道路が隆起する。

 転がっていた巨体の人物は隆起した道路を勢いのまま乗り上げ、遥か後方まで飛んでいってしまった。


「あーーーーー!!!!」

「バカ野郎!! 学校外では乗り物でなくとも法定速度は守れっていつもいってるだろうが!!!」


 校門前で一部始終を見ていたらしき先生が、吹っ飛んでいった巨体の男を怒鳴りながら追いかけていった。


「なんか一瞬だったけど、すごい出来事だったね。さすが国立の冒険者学校なのかな?」

「……たぶん上級生だと思う。ダンジョンに潜り慣れてくと結構人間離れしていく人も多いから」

「へぇ、そうなんだ。……どうかしたの? 鏡宮さん」

「日向くん」


 なんとなく鏡宮さんの返答に元気がない。というか不機嫌みたいだ。

 恐る恐る尋ねると、真っ直ぐに名前を呼ばれた。とても声が硬く、会ってから一番真剣な様子だ。


「男の子が女の子を守るみたいなね。前時代の考えに流されて、安易に自分の力以上のことをしようとしちゃダメだよ。私はこれまで何度も中級ダンジョンをクリアしてる。対して日向くんは今日初めて下級ダンジョンをクリアしたんだよね? なら今の日向くんの行動は、自分より強く戦える私のことを邪魔していたことになってたかもしれない。これはわかるよね?」


 鏡宮さんの態度に、納得する。

 確かに考えてみれば、それは真っ当な注意だ。大人しく耳を傾けて、頷く。


「今の時代、男の力が強くて女の力が弱いなんて、見た目じゃもう誰にもわからない。だから大事なのは、とにかく自分の力を過信しないで、不相応な状況に突っ込んでいかないことなの。ダンジョンで死んだら、本当に死んじゃうんだよ?」

「ごめん。鏡宮さん。次からはもっと気をつけて行動する」


 頭をさげながらそういうと、鏡宮さんは深く息を吐き出して元の空気感に戻った。


「……ううん。私もうるさく言ってごめん。本当は漫画みたいとか、意外と男らしいとこもあるんだとか一瞬思っちゃったんだけど……。でも日向くんには気をつけてほしかったから。その……死んでほしくないし」


 少し照れて言う鏡宮さんが、微笑ましく、安心させるように言葉を返した。


「確かに大事なことだよね。不安にさせてごめん、本当に気をつけるよ。注意してくれてありがとう。鏡宮さん」


 なんだか照れくさくなって、お互いに照れ笑いをしあう。その横で隆起していた道路が元の平坦な道路へと戻っていた。そして道路が平坦になるにつれて、おそらくこれをしてくれた人物の顔が見えてくるが、その表情はとても気まずげで居場所がなさそうだった。助けてくれた人物なのにこんな顔をさせてしまったのは少し良くなかったかもしれない。


 とはいえ、そこにいたのは想像通りの人物だった。

 ピンク色の派手な髪。大袈裟なヘアスタイル。服はフリフリでファンシー。

 手にはおもちゃのようなハートのステッキが握られている。


「え、あ……もしかして、魔法少女……?」


 鏡宮さんが立っている少女に気づいて、小さく呟く。

 魔法少女の子は鏡宮さんの呟きに気づいて一瞬だけ視線を向けたが、すぐに興味がなくなって逸らしていた。そして気怠そうな声で呟く。


「……マジカルシフト、オフ」


 少女の見た目が大きく変わる。魔法少女の姿は変身していた仮の姿で、呟いた言葉がトリガーとなって変身が解かれた。魔法少女本来の姿が、弾ける光の中から現れる。


「「え……」」


 その姿が想像とは違うもので、鏡宮さんと一緒に声を漏らす。


「(いや、めっちゃ変わってる……)」

 

 クリーム色っぽい髪色に、基本ショートのように短い髪をしながら、ウェーブのかかった長い髪を組み合わせてクールにバッチリきめられたヘアスタイルとメイク。耳にピアス、爪にはネイル。初日とは思えないほど気崩した制服。

 魔法少女の変身が解かれて現れたのは、バリバリのギャルだった。


 そんなギャルは、スタスタと歩いて学校の方へ去っていく。


「あ、あ、あの!」

「…………」


 鏡宮さんが後ろ姿に声をかける。最初は怯んでたのに勇気あるな。

 ギャルが立ち止まって、首だけ後ろに向けて鏡宮さんを見ていた。あまりフレンドリーではない雰囲気だ。


「た、たた、助けてくれて、その……あ、ありが──あっ……」

「…………」


 そんなギャルに鏡宮さんはお礼を言おうとする。しかしお礼の途中で、ふいっと視線を前に戻してギャルは歩いていってしまった。それを見た鏡宮さんはとても悲しげに声をあげた。


「(あ、これはよくない)」


 確かに少し緊張していたのか、お礼の言葉が吃っていた。今のでよくわかったが鏡宮さんは知らない人相手だと、最初に緊張をしてしまうタイプの人だ。

 でもだからって、頑張って言おうとしただけなんだから、そんな冷たくしないでもいいはずだ。


 そう思って、少し小走りで前に進んで手を伸ばす。


「ちょっと待って」

「え?」

「……は?」


 旧魔法少女、現ギャルの手を掴んで引き止める。


「そんなつっけんどんな態度、よくないよ」

「……何急に。勝手に触らないで。マジキモ……」

「ひ、日向くん?」


 振り返った瞬間驚いていたギャルの表情が、みるみると不快そうに染まっていく。無理やり手を引いて離そうとしていたが、引き剥がせないことがわかると、怠そうに口を開いた。


「……ていうか、別に勝手でしょ。人の。それに……なんで助けたのにそんなこと言われないといけないわけ。うっさいから、いちいち。あとキモい」

「確かに助かったし、それはどうもありがとう。でも正直鬱陶しく感じたりさ、本当は話したくない気分だったとしても、適当に何か一言くらい答えてあげたって、バチは当たらないんじゃない?」

「ちょ、日向くん……私は大丈夫だから……」

「ッチ。ウザ……。いいから離して。汗ばんできて本当にキモい。これ以上離さないなら人呼ぶから」


 う……汗ばんできてキモいだけちょっと心に食らう感じがある。しかし汗は体質的にほぼかかないので、この汗はこちらでなくそちらのものだ。あと人を呼ばれようが、手を離す気はない。


「わ……僕だけなら最悪いいけど、鏡宮さんはこれから友達になってくれるかもしれない同じ学校の同級生なんだよ。それなのにそんな態度で接してたら、できる友達もできなくなると思わない? これから一人でずっと過ごすことになっちゃうよ。高校生活がそうなって、本当にいいの?」

「っ! うっさい! なんなの、こいつ……本当にッ!」

「…………」


 ギャルの語調が、荒れ出す。一方鏡宮さんは静観に回ったのか、口を挟まず黙って見るだけになっていた。正直今はそちらの方がありがたかった。


「初日で少し緊張してて、照れちゃっただけだよね? 別に仲良くなりたくないつもりはなかったんでしょ? なら初めての人と話すのって怖いし緊張もするけど、勇気出して今頑張ってみた方がいいよ。鏡宮さんいい人だし、練習だと思ってさ。ね? せっかく新しい学校生活が始まるんだから、突き放すより友達になった方が楽しいよ絶対」

「…………」


 ギャルの口数が少なくなり、おとなしくなる。顔を伏せて表情も見えないが、よく見ると顔色が真っ赤に染まっていた。


「鏡宮さん、ごめん。もう一回やり直してもらっていい?」

「え、あ、うん。もちろんいいよ。あの、さっきは助けてくれてどうもありがとう」

「……別に、大したことじゃないから」

「あ、そうなんだ……」

「…………怪我は」


 会話が途切れて終わりそうな空気が出たところにぽつりとギャルが言葉をこぼす。

 その言葉に不安そうだった鏡宮さんが表情を一変させて、嬉しそうに満面の笑みで答えた。


「全く無かった! 全然大丈夫だったよ! あなたのおかげ!」

「なら……別に。良かったけど……」

 

 そっぽを向くようにして答えるギャル。だけどよく見ると耳が赤くなっていて、それに気づいた鏡宮さんは全身から微笑ましさを溢れさせていた。うんうん、普段はもっと素直でいい子なのだ。そんなことを思いながら横で頷く。


「ねぇ私、鏡宮友架って名前の一年なんだけど、よければお名前教えてもらえない?」

「……片星栞里。私も、一年。初日で不安だったから……さっきの態度は、その……ごめん」

「全然、気にしないよ! それにすっごい分かるし。緊張するよね初日って。私も片星さんにまずお礼を先に言っとけばよかったよね。助けてくれたのに置いてけぼりにしちゃったし。ごめんね。許してもらえるかな」

「別に……気にしてないし」

「そっか、良かった〜。ね、私のこと友架でいいからさ。友達にならない?」

「……うん。なら、私のことも栞里でいい」


 すごい……あれよあれよと友達になっている。そして三人で学校へ向かうことになった。残り徒歩三分もかからないけど。


「さっきのすごくなかった? あれ『スキル』?」

「違う。あれ、魔法。私魔法少女だから、大体みんな、ああいうの使える。それぞれ効果は全然違うけど」

「魔法かーいいなー。私も次神様にスキルもらうなら、魔法をお願いしてみようかなー。いいと思ってたんだよね」

「スキルの魔法とは、たぶんちょっと違う……」


 学校の敷地内に入ると、クラス表が張り出されるようだ。まずそこに向かう必要があるが、新入生がたくさんいて混んでいる。楽しく会話をしながら(主に鏡宮さんと栞里が)待っていると、クラス表が見れる位置まで来れた。


「えーっと、鏡宮友架、日向国博、片星栞里……」


 鏡宮さんがクラス表で全員の名前を探している。

 そうか。クニヒロって読むのか、下の名前……。


「あ、日向くんは私と同じA組だね」

「ほんとだ。あ、でも残念。栞里はB組で別のクラスだね。でも隣ならいつでも遊びにきていいからね」

「……だッれが、あんたのところなんて行くか!」

「あれ……?」

「……日向くん」


 そういえば仲良くなったのって、鏡宮さんと栞里だけだった。


「ってか、いつまで手握ってんの!! この変態キモ男!! 死ね!!」

「日向くん……あんま付き合ってない異性をベタベタ触るのやめたほうがいいよ」

「あ……ごめん……」


 弾かれるように手を解かれる。つい癖で握り続けてしまった。

 プリプリと怒った栞里は一人でB組まで歩いて行ってしまう。教室に一旦全員集まってから入学式に参加するシステムなようで一度教室にいかなければならない。


「日向くんって、栞里のこと元々知ってたりする?」

「え゛っ。……知ってたらあそこまで嫌がられないと思うけど。どうしたの急に」

「それもそっか。日向くん、栞里が新入生ってよく分かったね。ほら直前に上級生が横切ったから、たぶん手伝いで今日何人か来てるでしょ?」

「……確かに。上級生だったら、話変わってくるね」

「あれ、分かってなかった? まぁ結果は杞憂だったし、いっか! でもなんだか妹を諭すお兄ちゃんみたいだったよ、日向くん」

「そう? まぁどうせなら、高校生活が楽しい方がいいと思ったんだ。お互いにね」

「うん、いいね。私も同じ! 楽しい方がいいよね、絶対! でも……そうだとしたら、日向くん。やっぱりやり手じゃない?」

「やり手?」

「どさくさに紛れてずっと栞里の手握ってたの。ずっと言おうか迷ってたんだよねー」


 ニヤニヤした鏡宮さんにそのあとずっといじられながら、教室まで歩いて行った。

 その後、クラス単位で入学式会場のホールへ向かう。座席は割と自由だったので、Bクラスとの境界に座って栞里と合流し、鏡宮さんと三人でかたまって入学式に出席をした。

 思っているより、厳粛な雰囲気の入学式だった。偉い人が次々と登壇して長々と喋っていくが、みんな肩書きが結構すごそうなのだ。大企業の社長もいる。

 でも鏡宮さんが言うには、東京側にある姉妹校の第一高校に比べると、明らかに劣るらしい。そっちには総理大臣やダンジョン庁の長官などが来ていたそうだ。さすがにそれはそっちがすごすぎるんじゃないかと思ったが、鏡宮さんは第一高校と第二高校で明らかに優劣をつけていると少し不機嫌になっていた。

 

「以上で入学式は終わります。新入生の皆さんは最後に、校庭の方へお集まりください」


「……? なんだろ?」


 鏡宮さんが首を傾げている。


「なんだろうね。栞里は知ってる?」

「……知らない。なんでアンタにまで栞里って呼ばれてるわけ」


 校庭に移動し、指示もなかったので三人で会話をしていた。全体的な雰囲気もガヤガヤしている。

 少しして校舎の屋上に動きが出てきたことに気づき、そこに注目が集まってか、伝播するように会話が止んでいく。それを見計らって、スピーカーから声があがった。


『みなさん! ご入学おめでとうございます。私たちは天川を挟んで東京側にある姉妹校、第一高等学校の生徒会です。私たち第一高校と第二高校は別々の学校ながら、同じ天川ダンジョン大学の附属校として様々な分野で協力をしたり、行事で顔を合わせることが多くあります。なのでこれから仲良くしてくれたらうれしいです。また私たちは激変する現在の社会において、ダンジョンという未知に率先して踏み込み、挑戦することを選んだ志を共有する同士です。ですので今日はみなさんの入学をお祝いし、私たちから贈り物をさせていただきたいと思います。では生徒会長の君島さん、お願いします』


 校庭がざわつく。

 各々が抱く、それぞれの感想や気になったことを好き勝手に言葉にしているようだ。

 そんな中、周りと少し違った感じで狼狽しているのが栞里だった。


「え、君島さんって……あの君島さん……?」

「栞里の知ってる人?」

「……あの人も魔法少女だから」

「え!? じゃあ知り合いなんだ!」

「……全然。二個上で実力も雲の上すぎだし。有名だから一方的に知ってるの。同年代の魔法少女なら、たぶん知らない人なんていないと思う」


 実際ぽつぽつといる他の魔法少女らしき生徒からも、君島さんのことを話す声が上がっていた。


「へぇ、そんなすごい人なんだ。確かになんかオーラあるね」


 答え合わせをするように、校舎の屋上で当人が姿を見せていた。

 すらりとした長身の、綺麗な女の人だった。長い黒髪がよく似合い、なんだか人を寄せ付けないタイプの綺麗さと雰囲気を持っている。

 その人物は校庭にいる人を一通り見渡したあと、いつのまにか屋上に置かれている鉄塊へ向かって歩いた。鉄塊は廃車を真四角に押しつぶしたようなやつで、かなり大きい。どうやってあそこまで運んだのだろう。

 鉄塊に、細くてすらりとした手が伸びて、静かにふれる。次の瞬間、まるでマジックのように鉄塊が消え、同時に同じ量の桜の花びらが現れた。大量に出現した桜の花びらはすぐさま風にのり、屋上の柵の隙間をくぐって、校庭のこの場所に頭上から降り注ぐ。


「え、えぇ!? すごっ! きれー! ね、ね! すごくない!? これ! どうやったんだろ!」


 校庭で生徒たちから歓声があがる。

 鏡宮さんも一足早く舞い散る桜にはしゃいでいた。両手を広げ、浴びるように桜を堪能している。

 そんな中で微妙にテンションがあがってないのが、魔法少女たちだった。


「本当に君島さんだ……」

「…………」


 栞里と一緒に服についた桜の花びらを、すぐさま振り落とす。

 別に無害なんだけど、あの人の桜は肌に触れるだけでもなんだかぞわぞわする。魔法の相性が悪いからかな。正直できれば舞い散っている桜だって避けたい気分だ。

 さりげなく落ちてくる桜の花びらを避けていると、視線を感じて顔を上げる。屋上にいる君島先輩がじっとこっちを見ていた。


「(……? なんだろ。面識は一応あるけど、別に栞里と一緒であんま話したことはなかったような……いや、それより今の状態でそもそも『私』だと気づきようがないはずだけど……)」


 試しに少し移動してみると君島先輩の視線は的確にこちらを追って移動している。間違いなく見られてるので、観念して人差し指を自分に指して尋ねるジェスチャーをすると、君島先輩はおかしそうににっこりと笑って頷いた。


「わぁ、なんか笑うとすごい印象が変わらない? あの人」

「…………」


 見惚れる鏡宮さんと似たような歓声が、関係ない一部のところで沸き起こっていた。栞里から向けられた睨むような疑惑の視線が痛い。

 なんだか最後の最後に肩身を少しだけ狭くしながら、入学式を終えて晴れて高校生になったのだった。







「前から名前順で呼んでいくから、呼ばれたら前に来てステータスを測定するように」


 入学式のあと。軽いミーティングがあるとのことで、もう一度教室に戻って席に座ると、担任らしき男性教諭がそう言った。校庭には生徒の家族がちらほらと待っているので、そんなに時間はかからないだろう。


「すっご!」


 教室がざわついている。

 鏡宮さんがステータスを測ったあとに起きたざわつきだ。どうやらレベルが62で、スキルも持っているのが凄くて騒がられていた。すでに数人ほど測定していたが、レベルは高くて40台、低くても20台後半くらいはある。そしてスキルを持ってる人は鏡宮さんだけだ。

 となると鏡宮さんは確かに、頭ひとつ抜けている。本人もトップを争えると言っていたが、自称ではなく本当のことだったようだ。私ダンジョンオタクだからね〜と、周りをいなしてるのも強い。遠目から向けられた男子生徒たちからの嫉妬の視線も、へっちゃらそうだ。最初に仲良くなれたのは、かなり幸運だったかもしれない。


「あー次は、日向」


 呼ばれて前に行く。何かの機械でステータスを測定している間、先生が話かけてきた。


「日向、お前これ、下の名前はクニヒロでいいのか?」

「あー……たぶん」


 そう答えると、先生は態度を露骨に訝しげにして言った。


「なんだたぶんって。自分の名前だろ。しっかりしろよ。まぁいい。ステータスは測れたみたいだから。……ほら、持ってけ」


 一通り目を通した先生からステータスの書かれている紙を渡される。

 なんだか紙を見た先生がすごいしかめ面をしていたような気がしたが、元々そんな顔の人だと前向きに捉えて席に戻る。そして紙に書かれてる内容に目を通した。



 日向国博 レベル:2 スキル:なし 称号:不敬者


 

「(あ、やった……。レベルあがってる)」


 初めての下級ダンジョン探索の成果で、さっそくレベルが上がっていた。

 あとスキルがないのは当然として、もうひとつの欄は見なかったことにする。


「は……? レベル2?」


 後ろからそんな声が聞こえてきた。振り返ると知らない男子生徒がいて、紙の内容を勝手に見られてしまっていた。


「なんだこいつ。場違いすぎだろ。なんでこんなのが入学してるんだよ」

「どうしたん?」

「いや……こいつレベル2だったんだけど」

「は? マジぃ? 超初心者じゃん。え、将来有望のすごいやつしかいない学校って聞いたのに……レベル2で入れるもんなん?」

「……だからいるんだろ」

「かーマジか……。俺冒険者のトップ集団に入りたかったんだけど、進路ミスったかなぁ。受験のために探索結構頑張ったんだけどなぁー」


 元々友達なんだと思う別の男子生徒も加わって、二人で話が進んでいた。話題は自分のことなのに、横から割って入って何かをいう感じにもなれない。なんだかいたたまれない気分になりながら、じっと座っていた。


「しかも称号持ちだったんだけど、そこにも『不敬者』とか書いてあったわ」

「え? 称号はレアじゃね? 神様に認知されたらもらえるやつでしょ。すげえじゃん。あ……でも不敬者……? 神様に不敬だと思われてるってことか? うぇー……やばぁー……」


 よそで勝手に話が進んで、勝手に印象が悪くなっていくなぁ。まぁどうしようもできないからいいんだけど。

 覗き見した男子生徒が呼ばれてステータスをもらっていた。戻ってきた途端、再び友達の男子生徒と会話をしている。その会話を盗み聞きしながら、ミーティングが終わるのをじっと待っていた。


「どうだった?」

「二つあがってたな」

「マジか。なら58? すげーじゃん。鏡宮越え、マジであるんじゃね?」

「別に……。あいつ抜くためにレベルあげてるわけじゃないし。家の敷地にたまたまダンジョンができただけのようなやつなんて眼中じゃねーって。自衛隊とか民間の冒険者にだって、強いやつはゴロゴロいるしよ。そいつらにだって負けてらんないだろ。この学校の奴らは……まぁ期待外れだったけどさ」

「うわ、辛辣ぅー。でもマジな話、意外と国立の割にレベル低いよな。お前と鏡宮でトップ1、2取れちゃってるし。逆に俺らの中学校、公立なのにレベル高すぎだろ(笑)」

「はっ……確かに、そうとも言えるのかもな」


 背中に見下すような視線を感じながら、黙って椅子に座り続けていた。

 



 遠目に男の子が歩いているのが目に入る。

 日向国博くん。今日仲良くなって友達になった、不思議な雰囲気の子。ステータスを測る順番がきて、受け取りにいっている。できれば見せ合いっこがしたいから、あとで天川に行くときでも提案してみようと思う。


「……君島さん、見たの久しぶり」

「なんか、大人っぽくなってさらに近寄り難くなってたわ」

「わかる……。雲上人だった」


 前で座っている女の子二人の会話が聞こえてきて、そちらに意識が向く。

 

「二人も魔法少女なの?」


 気になる話題だったので、会話に入った。すでに初めて会った際に近くの席の人には、勇気を出して話しかけ済み。そのため緊張することなく話しかけることができた。日向くんが栞里に言っている言葉を聞いて、自分も頑張らないと思ったのだ。やっぱりやって良かった。


「え、なに急に……」

「…………」


 でも二人の警戒心が急に上がって会話が止まり、疑惑の目を向けられたとき、一気に緊張が走った。そういえば魔法少女は軽くニュースで見た限りでも人身売買などが絡む非常にデリケートな話題だった。もう少し気を使って会話に入ればよかった!

 後悔しても遅いので必死に思考を巡らせて、なんとか言葉を口にする。


「あ、えっと……隣のクラスの片星栞里ちゃんって子と仲良くなって、その子に君島さんのこと教えてもらったんだ。だから二人もその話をしてたから、もしかしたらそうかなーって。気になっちゃったんだけど……」

 

 咄嗟に栞里の名前を出してしまう。


「栞里と友達になれたんだ……鏡宮さん、すごいね……。最近の荒み方、すごかったのに」

「え、あの子も二校にいるの?」

「……らしいよ」

「ふーん。あ、鏡宮さんの言ってることなら、それで合ってるよ」


 二人の警戒心が下がって、ほっとする。また欲しかった答えを得られたのも嬉しかった。勝手に栞里の名前を使ってしまった申し訳なさと、なんとか潜り抜けた達成感が同時にあって複雑な感情だ。とりあえずごめん、栞里……!


「聞いていいかわからないんだけど、魔法少女の人って、結構いるの?」


 恐る恐る尋ねる。さっきの質問で懲りればいいのに、どうしても気になってしまった。


「んー結構いるよね?」

「……そだね。うちらは二クラス分くらい?」

「あ、ほんとだ……。結構いるね」

「普通に学園だったからね。全員魔法少女で中高一貫の。去年度で閉鎖されたけど」


 意外だった。結構いる。学園だったって、魔法少女学校ってこと?

 なんだかそれ、すごくない? 本当にアニメみたい。あーでも……。今は閉鎖されたってことは……。


「それじゃあ皆バラバラになっちゃったんだ。なんだか寂しいね、それ」

「え? あぁ、いや全然。てか、バラバラになってないよ。学園が閉鎖されたとき、ダンジョン校に行けってなんか言われて皆入学してるし。私もそうだし」

「……うちら、別に受験とかなかったよね」

「え、あ! そうなんだ! じゃあ皆、同じ学校なんだ」

「一校と二校での進路の違いはあったけどね。しかもほとんど向こうの学校行っちゃったし」

「……学園東京側だったからしょうがない。出身も向こうの人が多い。うちはこっち出身だから二校にした」

「私も。でもまぁ会えない距離じゃないよね、別に」

「うん。川無くなったし、ほぼ隣町」


 そうなんだ……。他の魔法少女にも会ってみたかったけどほぼ一校なんだ……。会える機会あるかなぁ?


「一校かぁ。残念。ダンジョン友達になれると思ったんだけどなぁ」

「あはは、どんまい。鏡宮さんて、ダンジョンすごい好きね」

「愛がすごい……」 


 なんとか二人と打ち解けて、楽しく話せるようになってきた。

 ここで一度、本当に聞いてみたいことを一つ、二人に尋ねてみる。


「君島さんって、やっぱりそんなに次元が違う人なの?」

「全然違うよ。たぶん鏡宮さんの想像よりも違うと思う。同じ魔法少女と思うのも烏滸がましいくらい」

「二つ上のあの世代は……ヤバすぎて……」

「……桜世代ね。みんな凄すぎるからってまとめてそう呼んでたの」

「言っとくけど、その世代だけだよ、名前ついてるの……」

「その世代で特にずば抜けた人が二人いて、その片割れが君島さん。私たちなんかじゃ、全然話しかけることも出来なかった」


 桜世代? ずば抜けた人が二人? それって君島さんみたいな人がもう一人いるんだ……。

 いろいろ疑問があるものの、そろそろステータスを配り終えてミーティングが終わりそうな雰囲気がある。すぐにでも気になることを尋ねないと……!



「ねぇじゃあさ……私たちの同年代にも、そういう次元が違う人って……いなかったの?」



 一番聞きたいことを尋ねてしまった。

 魔法少女の二人は顔を見合わせる。果たしてどう答えが返ってくるのだろう。少しドキドキする。


「いたよ」


 うわー……いたんだ!

 嬉しいような残念なような。残念なのは、私が一番じゃないかもしれないこと。でも嬉しいのは、すごい人が同学年にいるということ!

 誰なんだろう。どんな人なんだろう。わくわくする気持ちがやっぱり大きい。


「『コクハク』……」

「コクハク? って名前の人なの?」

「あだ名はね。フルネームは黒日白夜」


 なんだか不思議な名前の人だ。


「これも本名かどうか。今となっては怪しいけどね」

「中1からずっと一緒で……最近まで違和感なかった……けど」

「ね。冷静になって聞くと、変な名前よね。やっぱ」

「うん……」


 なんだか事情がありそうだ。ひとまず一番基本的なことを尋ねてみる。


「その、コクハクさんは一校と二校、どっちに入学してるの?」

「たぶん……どっちにもいないと思う……」

「え?」


 返ってきた答えに驚く。言葉を失っている間に、二人が事情を話し始めた。


「半年くらい前に急に行方不明になった……」

「ダンジョンが現れて、異界の敵と戦わずに済むようになった矢先よね。せっかく楽しく遊び回ろうって時だったのに。急にいなくなっちゃった」


 それを聞いて、なんだか気分が落ち込む。なんだか一番残念な結末だった。二人に聞いてしまったことを謝罪する。


「そうなんだ……。なんかそんなこと聞いちゃってごめんなさい」

「ううん、別に。気にしてない……こともないけど」

「うちも……普通に知った仲だし……」

「でも栞里とかに比べればね……。鏡宮さんも栞里にはこの話しない方がいいよ。あの子は特にコクハクと姉妹かってくらい、ベッタリ一緒にいたから。荒れ出したのも、その子がいなくなってからなんだよね」

「……話しかけづらくなった」


 事情を聞いて、深く頷く。確かにそれは控えた方が良さそうだと思った。


「それは聞いといてよかったかも。教えてくれてありがとう。栞里とはこの話しないように気をつけるね」


 そう言うと、二人は深く頷いた。

 そのタイミングで男性教諭がクラス全体に、ミーティングの終わりと学校の終了を告げた。






 男性教諭は、生徒を解散させたあと職員室にある自分の席へと向かった。

 職員室に入って目的地の席を何気なく視界に収める。するとそこに誰かが立ってるのが見えた。


「なんだ……誰だ?」


 遠目にしか見えず、誰かわかる前に、その人物は別の出入り口から職員室を出て行ってしまった。

 なんとなくだが、おそらく生徒ではなく、別の職員だ。まさか泥棒じゃないだろうとは思うが、と少しばかりの疑念と共に机へと向かう。


 机は特に荒らされた形跡はなかった。無くなった物もない。そもそも入学式当日に盗れる物など大して無い。警備だって下手な私立よりしっかりしている。滅多なことなんてそうそうおこるはずがなかった。机の上に置いてある生徒の入学書類だって、ミーティング前に男性教諭自身が置いたものだ。


「ん……?」


 一番手前にある入学用書類を目に入れる。自分が受け持つとある生徒の書類だ。そこには細かく個人情報が書かれているが、それを目に入れた男性教諭の顔は渋いしかめ面へと変わる。


「日向のやつ……国博ってお前……クニヒロじゃなくて『コクハク』じゃないか、読み方……。なにが多分なんだよ、あいつ……。レベルも2で出遅れてるのに。本当に大丈夫か? 注意してみておかないとな……」

最後まで読んで、他の話も気になるようであれば、Xのアカウント(@chi_6umi)で今後告知をしていくのでうまく使ってください。

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[一言] 面白い、面白いけどここで終わり?ってのが正直な感想 短編として上がっているけど、途中で終わっているなって感じ 1話版ってなんだと思ったけど、1話しか上げてないんだなって納得はしました。
[良い点] 文章が上手で、情景が自然と頭に浮かんでくる。 [一言] とても面白かったです。 応援してます!
[良い点] 話が進むにつれてどんどん面白くなり引き込まれました、テンポも良くて読みやすい つづきが気になる [一言] 王道の設定だがそこに世界観とかでひねりを加えてるから新鮮さと面白さはあると思う 実…
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