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——神樹から程良く離れた雑木林の中。

——神樹から程良く離れた雑木林の中。


《螂ウ逾槭?菴ソ蠕偵a縲∵?縺ョ菴薙↓繝槭リ繧呈ウィ縺手セシ縺ソ繧医▲縺ヲ!縲?荳肴ч蠢ォ縺ォ繧らィ九′縺ゅk!!縲?蠢後??@縺??∝ソ後??@縺?ソ後??@縺?!》


 光の殆ど届かない木々の中、僅かに人の輪郭をとる影が腹立たしいと誰にでもなく怒鳴りつける。

 それでも気が済まない様子の影は、周囲に集まっていた《潜む者》を鞭のような物で一薙ぎにし、憂さ晴らしをし始めた。

「……ふん、淀みを司る精霊とやらも、大した事無いのね」

 悲鳴の一つも上げずになすがまま数を減らしていく《潜む者》を見つめ、影から少し離れた位置の樹木に凭れかかっていた未來は小さく鼻で笑う。

 小馬鹿にしたような言い回しのわりに、彼女の表情には笑みの一つも浮かんでおらず、あるのは僅かな達観と虚無だった。


《莠疲怦陟?>縺?!縲?縺昴b縺昴b雋エ讒倥′縺ゅ?蟆丞ィ倥↓鬲疲ウ輔r謨吶∴縺ェ縺代l縺ー縺薙s縺ェ莠九↓縺ッ!!》


「ハァ? そんなの結果論でしょ。だいたい、アンタがあの程度の魔法を教えた所でって言ったんじゃない。自分で許可出したくせに何被害者ぶってるワケ?」

 呆れたと手を振りながら言い返した未來に腹が立ったのだろう。影——基、淀みの精霊はずいと未來に近づくと、腹部が大きく開いている服の間から腹を撫でた。

 帝都の地下で口答えをした際に貫かれ、風穴が空いたはずのそこは完全に塞がっていたが、薄っすらと引き攣った痕のようなものが残っている。


《縺ゅ∪繧雁哨遲斐∴縺ー縺九j縺吶k縺ィ縲√b縺?ク?蠎ヲ逞帙>逶ョ繧定ヲ九k莠九↓縺ェ繧九◇?》


 脅しをかけるように腹部を触る影に、未來はもう一度、今度はよりあからさまな態度で笑った。

「そんな脅し、何度も通用するとホンキで思ってる? だとしたら、お門違いも甚だしいわ。思い通りにいかなかったからってワタシに八つ当たりしないで」

 そう言い放ち、服に着いた埃を落すように影を手で払う。


《菴募?縺ク陦後¥縲りゥア縺ッ縺セ縺?邨ゅo縺」縺ヲ縺?↑縺?◇》


 まだ何か言いたげな淀みの精霊の声を無視し、未來は神樹がある方向へ目を向けた。

(……少し距離はあるけど、ココからなら届くわね)

 全貌が見えない巨木を見上げながら現在地との距離を凡そ目算し、精霊が失敗した事の尻拭いをしてやろうと女神の使徒達に遠距離からの攻撃を試みる。

 魔法を発動させる為にマナを練り上げている最中、ふと雑木林の木々の間から見える巨大な樹木が、前に訪れた時よりも生き生きとしているように感じられた。

 淀みの魔物によって住人が蹂躙され、本来なら怨嗟や恐怖の感情によって淀みが発生しているはず。しかし、未來の目に映る神樹には青々とした葉が茂り、時折吹いてくる風に靡いてさわさわと音を奏でている。

 ここで惨劇が起きていたなどと一体誰が信じるだろうか。それほどまでに、眼前の巨木は生気と光の気配に満ち溢れていた。

 かつて世界を救ったはずの己では無く、女神の使徒によって齎されたであろうその光景に、ギリッと音が鳴る程奥歯を噛みしめる。

「……ムカつく」

 昏々と積もっていく妬みと怒りの鬱憤を晴らすかのように、未來は『根の間』にいるだろう女神の使徒とその取り巻き達に向けて無属性魔法を放とうとした。

 詠唱も無く、ただ本能のままに放たれようとしたその魔法は、しかし寸での所で不発に終わる事に。


⦅ダメ!!⦆


「っ!?」

 突然、脳内に聞き覚えのある少女の声が響き、魔法を発動する為に練り込まれていたマナが霧散する。

「い、まのは……」

 忘れたくても忘れられない声に、未來は呆然と神樹を眺めた。

「まさか、この距離でワタシの魔法を察知したっていうの? あのコが?」

 少し前までは魔法をまともに扱えなかったはずなのに、なぜここまで敏感に感じ取れるのか。かつて懐かしい気配を感じて足を運んだ神樹で出会った少女を思い出し、あまりの変化に戸惑いを隠せない。

「なんで? あのコにここまでの力は……」

 そこでふと、神樹のどこからも会いたくてしかたがなかった懐かしい気配が消えている事に気が付く。

 つい先ほど感じた再編の余波の事を考えれば、彼女達がどうなったのかは明白だった。

「……アァ、そう。アナタ達も、そちら側なのね」

 旧友達がとった選択に、未來の心が仄暗い感情で満たされていく。

「これで三人……日常も存在も、女神のせいで失った。そのうえ次は友人すら奪おうと言うのか。アイツは……女神は、どれだけワタシから奪えば気が済むの……?」

 鑪に続き、二人の友を失った事に気付いた未來は、女神とその使徒たる晶子という女に対して怒りを募らせていく。

 未來は一度だけ神樹を睨みつけると、踵を返して雑木林の奥へと足を向けた。


《縺ェ繧薙□縲√≠縺昴%縺ォ縺ッ隕ェ縺励″蜿九′縺?◆縺ョ縺ァ縺ッ辟。縺??縺?》


 素通りしようとした淀みの精霊からかけられた言葉に、一瞬歩みが止まる。

「……もういないわ。二人共、輪廻の中に還ったみたい」

 端的な未來の言葉に、淀みの精霊が意味深にクスクスと笑った。


《縺昴l縺ッ縺昴l縺ッ縲∵ョ句ソオ縺?縺ェ縲ゅ↑繧峨?縺ゅs縺ェ讓ケ縲√♀蜑阪?鬲疲ウ輔〒霍。蠖「繧ら┌縺乗カ医@蜴サ繧後?繧医°繧阪≧?》


「そうしようと思ったけど、そうもいかないのよ。あのコ、魔法を放とうとしたワタシに気付いたわよ」


《窶ヲ窶ヲ縺ェ繧薙□縺ィ?》


 未來の口から出た言葉が余程想定外のものだったらしく、淀みの精霊は純粋に驚いた様子を見せた。

 珍しいものを見たと内心驚く未來だったが、それ以上は何も言わず再び歩き出す。

「気付かれたからと言ってナニかあるワケじゃ無いけど……あそこに二人がいない以上、もうワタシには興味の無い場所よ」

 神樹という場所に個人的に訪れていた理由は、言わずもがな黒羽と白雲に会う為だ。

 最初に気配を感じた頃から何度も会おうと試みるも、結局一度も目的は達成されぬまま。遂には姉弟揃って逝くべき場所へ行ってしまった。

「用ナシの所にいつまでもいる必要は無いでしょ? さっさと行きましょ」


《繧ッ繧ッ繝??ヲ窶ヲ縺ゅ=縲√◎縺?□縺ェ》


 淀みの精霊に背を向けていた未來の後ろから、黒い靄が伸びてくる。靄の一部はぼやけた人の腕の形に変わると、抱きしめるように未來の首に絡みついた。


《我遲峨?逶ョ的繧帝#縺吶k轤コ縺ォ縲はよ縺?ャ。の蝣エ謇?縺ク蜷代°う縺ィ縺励h縺》


 キャラキャラと、子供がはしゃいでいるような楽し気な声色で語りかける声。しかしそこには、あらゆる者を堕落させようとする甘美で蠱惑的な色が含まれていた。

 ねっとりとしたそれに不快感から顔を歪ませながらも、未來は何も言い返す事無く淀みの精霊を体に纏わりつけたまま、鬱蒼とした闇の中へと姿を消す。

 後に残ったのは、精霊の癇癪によって無残に散らされた淀みの魔物の残滓だけだった。

次回更新は、6/20(金)予定です。


※今回の更新に際し、過去投稿にあった淀みの精霊に関する台詞や名称に使われているカッコ部分を《》で統一する為に変更いたしました。

 関連部分のある個所は全て対応済みです。

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