「じゃあ、なんで……魔法陣が今も動いているの?」
※ いくつかの誤字脱字を修正しました。
本編内文章にて、違和感を覚えた複数個所を加筆修正等しました。
本編内容に大きな変更はありません。
真っ赤に染まった口元を不気味に歪めて、徐々に距離を詰めてくる変貌した《紛う者》。ゆっくりと這い寄る怪物を見た晶子は、まるで獲物を前に過信する猛獣みたいだなと思った。
本当にそんな思考があるのかどうかは定かでは無いが、現に《紛う者》は晶子達との距離が近くなればなるほど口から涎を垂らし、腹を満たす為に今にも飛びついて来そうだった。
「つ、るを再編……それに、罪に向き合う……」
「やってしまった過去は変えられない。それこそ、時を遡れる魔法があるとか、そう言った事が出来る超常的存在が居なければね」
(……ん? 女神は創世神だけど、時間に関係するあれこれは扱えないんか??)
そこまで言って、不意に自身をこの世界へ召致した天上の存在に疑問を持った。少なくともWtRs内ではこれといった事が明記されていた記憶は無いが、仮に時間に関係する魔法を使えたとすれば淀みの精霊が叛乱を起こす前に戻り、とっくに対処をしているはず。
わざわざ世界の安定化という名目の下に人々を管理する必要性は皆無だ。
(となると、女神は別に過去に戻れるとかの力は持ってないって事だ。まあゲームでもそんな時間を操る魔法なんかは聞いた事無い……いや、一応タイムズがそれっぽい効果になるのかな?)
タイムズとは無属性支援型魔法の一つであり、敵に掛けると一定時間相手の動きを止め、逆に味方の場合だと詠唱や行動スピードが上がるという『魔法をかける相手が敵か味方かによって違う』という少々変わった性質を持った魔法だ。
もちろん全ての敵に効果がある訳では無く、ボスや一部の敵には無効になっている。
(あの魔法、レベルアップで普通に習得するんだけど、結構色々使えて便利なのよね。しかも習得レベルは比較的早めっていう。……そう言えば、無属性魔法って時間差で効果が発動する魔法とか多かったな?)
深く考えた事の無かった無属性魔法のラインナップに気付き、ただの偶然かと首を傾げた。が、いよいよ間近に迫って来た《紛う者》に、一度思考を切り替える。
「ともかく! 自分の選択や、やった事を後悔しても今更後戻りなんか出来ないわけよ。ならどうするか」
弦をみすみす死なせてしまったと晶子がいくら嘆こうと、死んだ者が蘇る事は無い。
同様に新がどれだけ悔いろうとも、過ぎ去ってしまった物事を、奪ってしまった命を元に戻す事は不可能なのだ。
「覆水盆に返らず……結局のところ、あたし達は前に進むしかないのよ」
そう言って、晶子は今にも突撃してきそうな《紛う者》を見据えて武器を構え直す。
「心臓が止まらない限り、人生は続いて行く。心を壊し廃人になる事もあれば、目的も何もないままに惰性で生きていく事もあるかもしれない。それでも、命は進み続けるしかないの」
「Kyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」
「後悔して負い目を感じる事も、嘆き悲しんで泣き暮らす事も誰にでも出来る。でも、それを糧として、前を向ける人はほんの一握りしかいない」
弾丸の如く突っ込んで来た《紛う者》の一対の腕を鑪と共に受け止めながら、晶子は朗々と語る。
「新くん、君はどっち?」
「……ぼく、は……」
問いかけられた言葉の意味を理解しようと、新は黙り込んでしまう。
(こればっかりは新くんが決めるしかない。いざという時には一緒に背負ってあげる覚悟は出来てるけど、決断するのは新くんじゃないと出来ない事なんだから)
迷いと葛藤と、幾分かの恐怖によって足踏みしている状態の新を、晶子はあえて見守る事にした。
一方、余裕な態度を崩さず余所見をしながら攻撃を受ける晶子に腹が立ったのか、怪物は「Rurururururururu」と鈴を鳴らすような声を上げて掴みかかろうとしてきた。
晶子は鑪と一瞬だけ視線を交差させて頷き合うと、ほぼ同タイミングで受け止めていた腕を弾く。
「白刃技・閃、瞬くが如し!!」
「銅鑼叩き!!」
間入れず、鑪が目視出来ない速さの一閃を放てば二対の両腕が肘から斬り落とされ、晶子がマナを込めた足で床を踏みしめて出現した岩石製の銅鑼をバトルアックスで殴り壊せば、破壊された岩が怪物の胴体にめり込んだ。
「Gyu!? Rururururururururu!!」
フルスイングで打たれた砲丸のような勢いの岩に《紛う者》が一瞬顔を顰め、次の瞬間には岩石諸共後方にある壁に叩きつけられていた。
「はっはー!! あたしと鑪さんに向かって来るとか、百年早いんだっつーの!!」
「ふむ、百年程度でこやつが我等に匹敵する力を得ると、晶子はそう思っておるのか?」
「とーぜん百年で足りる訳無いですよね!! ほんっと百年程度であたし等に敵うと思ってんのかって話ですよもちろん分かってますよ!! おいこら聞いてんのか淀みのぉ!! オメェみたいな淀みの煮凝りが固まって出来たきっしょい魔物なんか百億万年経ったところであたしと鑪さんに勝てるわけねぇーんやで!! 一昨日来やがれやクソッたれが!!」
恐らく、鑪はただ純粋に疑問に思っただけなのだろうが、晶子は高速で自身の発言を撤回し、怪物に向かって中指を立てる。
「常世の時にも思っておりんしたが……晶子様、素に戻るとびっっっっっっっくりするほど口が悪うなるのでありんすね」
「あ、あはは……」
盛大に啖呵を切った晶子を見て、満が口元に手を当てて驚いたように言った。改めて自身の口の悪さを指摘されてしまい、何となく居た堪れなくなる。
「お主……常世で一体何をやらかしたのだ……?」
「誤解です!! あたしはただ報連相をちゃんとしなかった女神に対して小一時間くらい説教しただけですが!? あたし、何も、悪い事してない!!」
それを傍目で聞いていた鑪から呆れたように問われ、晶子は必死に弁明した。常世でのあれこれ——当然ながらゲームや現実世界について諸々を抜きにして——を説明すれば、とりあえずは納得してくれたらしい。
「ふむ……よもや、それほど昔から黒羽と白雲が女神側についていたとはな。それで? 女神とまた接触していたのか? 常世で? そこな者達がいる前で?」
がそれはそれとして、鑪としては名目上の監視を続けている立場的に、あまり女神と交流を持ってほしくないのだろう。
仕方ないとは理解しているようだが、やはり女神の名が出るのはあまり良い気分では無いようだ。
「アッアッアッ鑪さんこれには深い訳がですねっていうかそもそも悪いのは女神の奴でしてあたしはマジでこれっぽちも悪くないんですが!?」
晶子としては、黒羽達の事やその他色々をきちんと報告・連絡・相談しなかった女神が悪いと思っている。軽率に満の前で女神を呼び出し、話をした事は反省しているが、そもそも女神がきちんと話をしていれば良かったのだ。
(ぐうぅ……!! 最推しの拗ねた姿はとても貴重で大変美味しいですありがとうございますけれど今はそれどころじゃ無いんだよねぇ!!)
「軽率に女神とコンタクト取ったことについては、ホントに申し訳なく……でもでも、あの時は呼び出して話をしないとどうしようも無かったんですぅ!!」
そうやって言い訳を並べる程、鑪の機嫌は急降下していく。その証拠に、鑪は爪先を踏み鳴らすようにして触覚を上下に揺れ動かし、苛立たし気な雰囲気が全身から滲み出ていた。
(ああああああああ触角が、触覚が激しく揺れておりますぅ~!! 明らかに嬉しい時とかの動きと違うから分かる。あれはイラっとしてる時のやつぅ!!)
鑪の機嫌をどうやって直そうか、必死に頭を捻っている晶子の耳に、くつくつと笑う低い声が聞こえてくる。
ハッと顔を上げれば、顔を背けて肩を震わせる鑪が目に入り……。
「っ……た、たらさん、あたしの事、揶揄いましたね!?」
「くっくっくっ、はて、何のことやら」
(笑いながら恍けたって説得力も何もねぇーんですよ!?)
「その笑顔最高ですありがとうございます!!」
「晶子様? もしかして、本音と建て前が逆になってません?」
歯を食いしばりながら言い返した晶子だったが、最推しの笑顔に負けてついつい本音がまろび出てしまった。新に指摘されて初めてそれに気付き、誤魔化す為の咳払いをした。
「Kiiiiieeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」
「喧しい!!」
「うるせぇ!!」
尚、これらのやり取りは全て怒声を上げながら突撃して来た《紛う者》の攻撃を往なしながら行われていた。
一際甲高く絶叫する《紛う者》に対し、鑪と声を揃えて怒鳴り返した晶子は、怪物の胴に再び一撃を入れて吹き飛ばす。
「ったく、人が話をしてる所に茶々入れてくんなや」
「全くであるな」
話の流れをぶった切って来た怪物に軽く舌打ちをして言い捨てた晶子に、隣の鑪が同意の言葉をかけた。
最推しが自分と同じ気持ちで、同じように怒りを見せてくれた事に高揚感が募り、ついついだらしない笑みを浮かべてしまう。
「……お主、ほんに我の事を好いておるよの」
「は? 当たり前ですが?? 何を今更な事言ってんですか張っ倒しますよ??」
それを見た鑪の言った言葉に対し表情を落して即答すれば、彼の動きが止まった。
(あれ、固まっちゃった)
天に向かってピンと伸びた触角は僅かに震えており、流石の晶子もそれが一体どんな感情を表現しているのか分からなかった。
(んんー?? 怒ってる訳では無さそうだけど、これどんな感情よ??)
「鑪さんそれどんな感情??」
「嘘でしょ晶子様」
「嘘でありんすよね晶子様」
思った事をそのまま口にしただけだったのが、それを聞いた満といつの間にか顔を上げていた新がドン引きした顔で晶子を見る。
「え? 何が?」
そう聞き返すも、二人は忽ち「あちゃ~」と言いながら目元を押さえて天を仰ぎだしてしまい、ますます訳が分からなくなる。
鑪ならば何か知っているかと視線を向けるが、彼も彼で顔を片手で覆い隠し、深く深く溜息を吐いていた。
「え、鑪さんなんでそんなふっかい溜息吐いてるんです?」
「お主が……いや、何でもない……」
首を傾げた晶子を見たと思えば、鑪は言いかけた言葉を飲み込んでもう一度、今度は呆れを含んだ息を吐き出した。
「えぇー……何なんです、三人そろって人の顔見て呆れたみたいに」
「実際呆れてるんですよ……」
「なぜ!? あたし今そこまで呆れられる要素あった!?」
どうして呆れられているのか理解出来ない晶子が反論するも、双子は顔を見合わせて一拍置いたあと、やれやれと肩を竦めてしまう。
(むー……それにしても、顔を隠す動作も天を仰ぐのも肩竦めたのも、ぜーんぶ一緒! 双子なだけあって、やっぱ息ぴったりだね!)
納得がいかないと不満げだった晶子だがそれはさておき、WtRsでは絶対に見る事が出来ない双子の仕草に内心ほっこりしていた。
(ゲーム内だと二人が生きて再会する場面なんて無いし、問題が解決してる訳じゃ無いけどちょっと達成感はあるよね)
神樹編のシナリオにおける二人の結末は、満が名前以外一切登場せずに終わるか、新が死亡し満がその魂を常世へ連れて行くかに分かれる。
結果だけで言えば、後者は再会を果たしたと言えるのかもしれない。だが肉体も何もかもを失って魂も砕け散り、極僅かな欠片だけしか残らなかったそこに、果たして新本人の意識があったのか。
(そこらへんは、作中では明言されないんだよね。最後のシーンで満ちゃんが新くんだった欠片を拾い上げて話しかける所があったけど、あそこの台詞もどっちかというと独白っぽかったし)
これに関しては製作陣も『読者の想像にお任せします』と丸投げしており、未だネット上で密かな論争が巻き起こっていたりする。
(ってそんな事考えてる場合じゃないわ。……あれ?)
戦場で考える事では無いと頭を振って意識を戻した晶子だが、ふとある者がいない事に気が付いた。
(黒い手が、いない……?)
そう、先程まで晶子や満達の周りをちょこまかと動き回り、密かに戦闘の手助けをしてくれていた黒い手。
実は彼——彼女かもしれない——は秘技と魔法が混ざり合う戦いの中、満と新に降りかかる淀みの泥を跳ねのけたりなど影ながら補助をしてくれていたのだ。
そんな黒い手も、足元に広がる血の海から怪物が現れるなど予想だにしていなかったに違いない。
(ほんとにチラッと見えた程度だから確証はないけど、多分あの黒い手も弦ちゃんを助けられなかったんじゃないかな。でもそれなら、もっと反応があっても良いと思うんだけど……満ちゃんと新くんの事も気にかけてたけど、なんだかんだ弦ちゃんが一番のお気に入りっぽかったし……)
「ねぇ満ちゃん。黒い手は何処に行ったの?」
晶子は丁度この場に黒い手に関係する人物がいる事を思い出し、その者に黒い手の行方を尋ねてみる事にした。
すると、満はおもむろに左袖の中に手を入れると、そこから手のひらサイズの小さな桐箱を取り出した。
「弦が《紛う者》に食い殺された瞬間、暴走しかけんして……慌てて回収し、この中に封じ込めたのでありんす」
「あー……だからこんなガタガタ小刻みに動いてんのかいな」
晶子の声に反応したのか、満の手の上に乗せられた桐箱の動きがより一層激しいものになる。
「これは、出せって言ってますよね??」
「解放した瞬間に闇落ちして、あの怪物と融合した末にそこにいるだけで瘴気や淀みを振りまく存在になっても良いのなら、お望み通りそうしんすが?」
「あ、結構でーす」
ガチトーンの満の言葉に即返事をすれば、桐箱の中の黒い手が抗議するようにさらに激しく揺れ出した。
あまりの揺れっぷりに晶子もドン引きする中、満は何事も無かったかのように桐箱を袖へと戻すと、「ところで」真顔で話を続けた。
「ところで、《紛う者》の姿が見えんせんがどこへ行ったのかご存じでありんすか?」
「!!」
満の言葉を聞いた瞬間、晶子は彼女を抱えてその場から飛び退く。同じく新を抱えて鑪が退避した直後、晶子達がつい数秒前までいた場所の足元から、胴にまで裂けた大口を開いた《紛う者》が飛び出して来た。
齧り付けなかった事が不満だったらしく、《紛う者》は獲物を逃すまいと六本の腕を無理矢理に伸ばし、晶子達を捉えようとする。
ブチブチと筋肉が無理に引き延ばされる不快な音と共に近づいてくる怪物の腕を見上げ、秘技を発動させようと武器を構えた晶子だが、それよりも早く新が魔法を発動させた。
「ホーリーアロ―!!」
新達の周囲に光で生み出された幾本もの矢が、雨のように《紛う者》へと飛んでいく。一本、また一本と〈紛う者〉に命中する度に怪物の体からは煙が立ち上り、相手の体力を微々たるものながら消耗させているようだった。
(それだけじゃない。淀みは元を辿れば闇に近しい性質を持つものだが、相性的に相殺される関係の光魔法を受けて、《紛う者》のマナがちょっとずつだけど削れてってる!)
《紛う者》の姿形を維持しているのは、淀みの魔物が喰らった常世を彷徨う怨霊達を元にした大量のマナだ。
そのマナが削れるという事は、怪物が形を維持できなくなるという事を意味している。
「Kyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!?」
つまり、見た目のわりに頑丈な体も、見目麗しい顔も、鬱屈とした美しさを演出している灰色の翼も……《紛う者》のありとあらゆる部位が崩れ始めるという事を意味していた。
「うわぁ、えげつない……でも新くんナイスだぜ!!」
「と、咄嗟に発動させましたが、お役に立てて良かったです……」
鑪の小脇に抱えられている新がへにゃりと笑えば、その頭を大きな手がそっと撫でる。驚いて顔を上げた新に対し、鑪は特に何かをいう訳でも無く、無言で《紛う者》を睨みつけていた。
(はうぁ……!! 言葉で褒めるんでなく頭良しよししてあげる鑪さんも最高だけど、そんな鑪さんに撫でられてちょっぴり嬉しそうにしてる新くんがもうかーいいんだよ本当にありがとうございますぅ!!)
緊迫した場面なのは分かっているのだが、推し達の尊い姿を目撃する事になって、晶子は思わず鑪達を拝んでしまった。
「晶子様、暢気にそんな事をしている場合じゃありんせんでしょう? 一刻も早う《紛う者》に対処しなければ、このままでは奴の逃亡を許す事になりんすえ?」
感動で内心咽び泣いていた晶子に、呆れ顔を隠しもせずに満が言う。その言葉にハッと正気を取り戻した。
(そうだよなんで気付かなかったの? 弦ちゃんが喰われた今、この部屋にある魔法陣を維持する事のできる人材は誰もいないのに!)
『根の間』にいる者達の中で、魔法陣をまともに扱えるのは鑪と弦の二人だけだ。このうち、鑪は魔法とあまり相性が良く無い為、必然的に弦に軍配が上がる事となったのだが……。
肝心の弦は《紛う者》の腹の中に収まってしまい、『根の間』の室内は怪物の血液まみれ、これでは何時抜け出されても可笑しくは無かった。
「……ん? ちょい待った」
そこまで考えて、晶子は初めて大きな違和感に気が付いた。
黒羽と白雲の介助があったとはいえ、弦は問題なく魔法陣を維持する事が出来ていた。更に言えば、床に元々刻まれていた物だけでなく、黒羽達が追加した分の魔法陣すらも一人で安定させていた。
となれば、普通であれば弦が死亡した時点で維持者が喪失しており、魔法陣の効果が全て消えてなくなっているはず。
ところが現在、『根の間』では未だ魔法陣が正常に働いており、《紛う者》どころか高濃度の淀みを含んだ血液も階下に流れ出したような形跡は無い。
「弦ちゃんは……《紛う者》に食べられて、死んだ、はず……だよね?」
そう、あまりにも不可解なのだ。
晶子の言いたい事を理解した三人も、驚愕の表情を浮かべて『根の間』の中をぐるりと見回した。
新がマナを纏った手で空間をなぞるように動かせば、それに反応して床だけでなく、壁一面に黒羽達が仕込んだと思わしき大小様々な魔法陣が光を伴いながら現れる。
「じゃあ、なんで……魔法陣が今も動いているの?」
その疑問に答えられる者は、誰もいなかった。
次回更新は、4/11(金)予定です。




