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「ハッキリ言っとくわ。あたし、推しを卑下するような奴と手ぇ組むなんざ死んでもごめんなんやわ」

 晶子にとって弦と言う少女は、WtRsにおける推しの一人である。

 生まれからして決して平穏とは程遠い人生を歩んで来た彼女だが、当人はそんな逆境にめげる事無く、献身的に主人公の手助けをしてくれる心根の優しい少女だ。

 例え実の父親から嫌悪と憎しみを向けられようと、決して愛されないと分かっていても、それでも愛さずにはいられない。

 だが、肉親から愛を得られない寂しさを埋める為、弦は神子たる新の言葉を信じ、彼に誘導されるようにして主人公と行動を共にする。しかしその結果は——。

(この子の終わりが、あんな悲しいもので良いはずがない……!!)

 ゲームで新との協力を選択した主人公に待っているのは、何も残らない空虚な未来だ。有翼族どころか神樹すら消え、新も、満も、何もかもが最初から無かったかのように世界から消え失せる。

 それが新の望みであり、自身から半身とも言える姉を奪った有翼族への復讐である以上、同じ一族の者である弦が共に消失してしまうのは仕方のない事だったのかもしれない。

 だが、そんな結末、晶子は認められなかった。

「英雄だろうが何だろうが、この際どうでもええ」

 いきなり頬を叩かれて反応出来ず床に崩れ落ちた黒羽達に、黒い手を引き剥がした晶子がベッドを下りってゆっくりと近づく。

「これまでは満ちゃんと新くんの御先祖ってのと、英雄の一角やからって事でそれなりに尊敬しとったけど、今の一言でそれも綺麗さーっぱり無くなったわ」

 言うなり、晶子は呆然と何が起きたのか理解出来ずに固まったままの黒羽達の胸倉を掴み、強引に立ち上がらせる。

「「うっ、しょ、晶子様……」」

「ハッキリ言っとくわ。あたし、推しを卑下するような奴と手ぇ組むなんざ死んでもごめんなんやわ」

 晶子がそう言い捨てると、黒羽達は驚いた表情を浮かべて黙り込んでしまった。

「女神! そう言う事やから、あたしはあたしで好き勝手させてもらうからな!!」

 胸倉を掴んだままの状態で宙に叫んだ晶子に対し、女神からの返答は無い。

「チィッ……あんの駄目神め、返事もせんとは良い度胸やんけ」

 思わず大きな舌打ちが出てしまったが、仕方が無いと握りしめていた服からそっと手を離した。

(感情に任せて、弦ちゃんの顔打っちゃった……あああああああやらかし~……でもでもだって、黒羽達の言い草に腹立ったんだもんんんんん)

 激情のままに行動した事を後悔しつつ、晶子は皺の出来てしまった弦の服を整える。その際に、襟口から見えた鎖骨のあたりに青痣のようなものを見つけ、顔を顰めてしまった。

(気付かなかった……他の住人か、それとも族長がやったのか。どっちにしても胸糞悪い……くそっ)

「チッ」

「「っ」」

 堪えきれず再び舌打ちをした晶子に、弦の肩がビクッと跳ねたのが見えた。

(び、ビビられてる……中の二人はどうでも良いけど、弦ちゃんに怖がられたように見えるのはちょっと心にくる……)

 表立って晶子と会話しているのは黒羽と白雲だが、体はあくまで弦の物。傍目から見れば、晶子が弦を怖がらせているようにしか見えない構図である事は明確であり、推しにそんな態度を取らせてしまったとショックを受ける。

(あ、赤くなっちゃってる)

 ちょっぴり泣きそうになっていた晶子だが、打たれて僅かに赤くなってしまった弦の頬が視界に入り、優しく撫でる。

「……弦ちゃん。痛くしちゃって、ごめんね」

 弦本人の意識は体の奥底に眠っているらしいが、それが痛みを感じないという理由にはならない。だからこそ、彼女の意図せぬ間に痛い思いをさせてしまったのではと考えた晶子は、小さな声で謝罪を口にした。

「「っ……!! 晶子様!!」」

「ぇ、あ、おわ!?」

 途端、泣きそうに顔を歪めた黒羽達が急に抱き着いてきて、晶子はベッドの上に逆戻りする羽目に。

「な、なん、なっんぞ……なんぞ??」

 何故自分は押し倒されたのか、何故に黒羽達は首筋に顔を埋めて泣いているのか、何故満はこちらを微笑まし気に眺めているのか。

(え、えぇ……ど、どういう事??)

 フレーメン反応をする猫のような顔で硬直していた晶子だが、黒羽達が泣き止む気配は一向に無く、埒が明かないとしくしく泣き続ける弦の肩を押して顔を上げさせた。

「えーっと……? 何が何だか分からないんだけど……??」

 驚きのあまり思わず言葉遣いが標準語に戻ってしまった晶子が尋ねるも、返ってくるのは沈黙のみ。

 更には押し倒された態勢のままなせいで、弦の瞳から流れ落ちる雫が、小雨のように降ってくる。

(……まるで、本当に弦ちゃんが泣いてるみたい)

 声も無く泣く姿が、色んな感情を押し殺している弦の心の叫びのように思えた。推しの泣き顔に胸が締め付けられた晶子は起き上がると、幼子にするように弦の体を膝に座らせる。

 良く見えるようになった顔を両手で包みながら、指の腹で涙をそっと拭ってやれば、黒羽達は擽ったそうに身を捩り遠慮がちに頬刷りをした。

(ぐっ、中身は弦ちゃんじゃ無いのにがんわぃいいっ!!)

 ぎりぃと歯を食いしばりながら突然の可愛さに悶えていれば、少し落ち着いたらしい黒羽達が眉根を寄せて言った。

「「しょっ、こ様。さ、先程の失言、許して、欲しいとは言いっ、ません。ですが、どうか、謝罪させてっ、ください。本当に、申し訳っありません、でした」」

 しおらしく言葉を紡いだ黒羽達に、一体どうしたのか首を傾げる。

「いや、だから、どう言う事?」

「「先程の言葉、あれはっ、晶子様を試す為に言った事です」」


“ここからは、私が代わりに話しましょう“


 涙は治まりつつあるものの、未だしゃくり上げて話すのも辛そうな黒羽達を見兼ねてか、今までだんまりを決め込んでいた女神が名乗り出て来た。

「あ、今の今まで気配を消してた女神様じゃないですかやだー」


“べべべ、別に怒った晶子が怖くて隠れてたとかそんな訳無いですってあはははは”


 ついからかいの言葉をかけた晶子に、女神はあからさまに動揺した様子で言い訳をする。

「いやいくら何でも分かり易すぎ。てかわざとらし過ぎて白けるよ?」


“私に対する辺りが強い!! もっと優しくしてください!!”


「はいはい分かったから、説明してください」

 やいのやいのと抗議する女神を適当にあしらい、晶子は黒羽達の態度が急変した理由を尋ねた。

 まだ不満そうにしていた女神だが、咳払いを一つした後、真剣な声色でとある話をし始める。


“今から遥か昔、まだ有翼族がここまで差別的な種では無かった時代。神樹に一人の青年がおりました。青年は光と闇の眷属の特徴を受け継いでいながらも、魔法の腕前は半人前、武術に至っては全く持ってセンスが無い。何をするにも中途半端な成績しか残せず、一族の中では落ちこぼれとして馬鹿にされていました”


(読み聞かせか? てか何で今??)

 朗々と童話を語るような女神に、意味が分からず困惑する晶子。

(というか、この青年ってもしかして……)

 何より、昔語りの中に登場した人物がある男を連想させてくるせいで、不快感から眉間に皺が寄った。


“ある時、有翼族の翼を狙う人間達の襲撃を受け、青年は他の戦士達と共に戦いに身を投じました。激しい戦いの末、有翼族達は人間を一人残らず駆逐する事に成功はするのですが……”


「「ぐすっ、青年は唯一人、最後の戦場となった荒野に捨て置かれたのです」」

 言いにくそうに口籠る女神の言葉を引き継いで、ようやく泣き止んだ黒羽達が青年の末路を語る。

「「自身の持てる力で懸命に戦った青年ですが、戦い慣れした相手に敵うはずもなく。致命傷を受けて息も絶え絶えな青年を見て、一族の者達は彼を嘲笑いました。そして、あろうことか彼をその場に置き去りにしてしまったのです」」

 それは、あまりにも酷い話であった。

「な、にそれ……仲間なんじゃないの? 家族なんじゃないの!? 重傷を負った同族を、どうしてそんな簡単に!!」」

 沸き立つ怒りに飛び起きた晶子は、目の前で顔を伏せる黒羽達の肩を掴み、何度も揺さぶる。それを止めたのは、満の白魚のような手だった。

「晶子様」

 満は弦の肩を強く握りしめる晶子の手に自身のものを重ねると、そっと剥がしていく。

「あちき達翼を持つ民にとって、戦えねえ者は塵に等しいのでありんす」

 絞り出すように告げられた言葉には、諦念の色が滲んでいた。

「彼の宝石を核に持つ種と同様に、強欲で卑しい者達から長らく狙われ続けてきんした。身を守るには、力が無うてはいけんせん」

「……青年には、力が無かった。だから、捨てられた?」

 晶子の呟きに、満は静かに頷いて見せる。

「「彼は、戦場の真ん中で涙を流していました。ただただ自身の不甲斐なさに腹を立て、幾度も罵りを口にし……泥と血と汗に塗れながら、己を只管に呪っていました」」

 その悪態が誰に向けられたものなのか、黒羽達はあえて口にはしなかった。しかしながら、晶子には分かっていた。

(青年の罵倒の矛先は恐らく、自分を戦場に置いて行った仲間達と、半端な力しかない彼自身……)

 青年の心中がどれ程のものだったか、残念ながら晶子に知る術はない。少なくとも分かるのは、彼はその頃から既に、『新と同じく一族に対する憎しみを募らせていた』という事だ。

(でなきゃ、あんなところで戦士を刺さなかっただろうしね)

 黄泉の門を開く直前、新に何かを吹き込まれて戦士を殺した族長。彼こそが、女神達の言う青年その人なのだろう。

「「彼は歯を食いしばって痛みに耐え、死にかけながらも生きる事を切望していた。それを見つけた我々は、青年に一人の娘を引き合わせる事にしました」」

 世界に半ば溶け込む形で漂っていた黒羽達は、生を渇望する青年を救う為にとある出会いを用意したと言う。

「「まだ『黒黴病』がそれほど嫌われて無かった頃、有翼族で唯一その病を発症した者がおりました。一族の中でも最も美しい白を持ちながらも、病によって醜くなり、周囲から距離を置かれていた女。名は、得鳥」」

「!!」

 得鳥——それは族長の妻であり、弦の母親である女の名前であった。

「「得鳥は『黒黴病』の影響で病弱であり、戦う事はおろか武器を持つ事も出来ません。代わりに豊富な知識を生かして、薬師として活躍しておりました。我々は彼女を戦場へと誘導し、青年と引き合わせたのです」」

 死に体の戦士を見つけた得鳥は、懸命に彼の手当てをすると、共に集落へ帰還。何か言いたげな住人達を無視して、傷口から感染症を患い病床に伏す青年を付きっきりで看病していたのだとか。

「「初めはプライドの高さ故に、青年が得鳥に当たり散らす事も多かったです。ですが、得鳥の穏やかな気質と柔らかな雰囲気に絆されて、気付けば二人は番になっておりました」」

 落ちこぼれの戦士と、醜さから煙たがられる薬師。一族の中でもはみ出し者に位置する二人は存外に相性が良かったらしく、番になって間もなく子供を授かったと言う。

「それが弦ちゃん?」

「「ふふ、やはり分かってしまいますか? そう、晶子様の言う通り。得鳥の腹に宿っていたのはこの子です」」

 花が開くように微笑んだ黒羽達が、弦の胸元に手を当てる。心臓に重ねる風にして置かれた色白な手は、まるで脈打つ鼓動に耳を傾けているようにも見えた。

「「子が生まれるのを今か今かと待つ二人は、とても幸せそうでした。けれど……その幸せも、長くは続きませんでした」」

 弦が宿って半年ほどが過ぎた頃、得鳥の病状は悪化の一途を辿り、ベッドから起き上がる事すらも出来なくなった。

「「原因は、腹に子を宿した事でした。子が出来た事によって体内の属性バランスが崩れ、このままでは母子ともに命が危うい、という所にまで陥ってしまったのです」」

 光と闇の力をバランスよく持つ父親と、強い光を宿しながらも闇に侵食された母親。そんな二人の間に生まれる子供が、強い力を持たない訳が無かったのだ。

 それまでは比較的上手く釣り合っていた得鳥のマナバランスが、弦を妊娠した事で可笑しくなり、親子共々を危険に晒す事態にまで発展してしまったのである。

「「間もなく、彼女は子を産むか諦めるかの二択を迫られました。妻を愛していた青年は子を諦めようと説得するのですが、彼女が首を縦に振る事は決してありませんでした」」

「おいおい……いくら奥さんが大事でも、子供をおろせとか頭可笑しいんか」

 青年の発言にドン引きしながらも、それだけ彼が妻の事を大切に想っていたのであろう部分にだけ理解を示す。

「「……我々は、どうにかして二人の命を繋ぎとめる事が出来ないかと必死でした」」

 俯いたままの黒羽達が、今どのような表情をしているのかは分からない。

「「なんとか得鳥と弦を救おうと、パワーバランスを崩す要因になった弦の中に入り込み、中から調整をかけようと試みました」」

 黒羽達の働きかけは功を奏し、母子は延命出来た。しかし、唯一の誤算が黒羽達に襲い掛かる。

「「弦との親和性が高すぎたせいで、我々はこの体から抜け出す事が出来なくなったのです」」

「……えっ、もしかしてだけど、肉の器ってそう言う?」

 戸惑いながら真意を問い返せば、黒羽達はおずおずと頷いた。

「「得鳥は、娘の誕生を喜びながら、数日の内に息を引き取りました。結果として最愛の者を亡くすことになった青年は咽び泣き……妻が衰弱する要因となった娘を嫌悪するようになったのです」」

「やっぱただの逆恨みっていうか、命がけで弦ちゃん生んでくれた奥さんが報われないわ」

 きっと、一族から蔑まれてき続けて来た青年にとって、得鳥の存在は何にも代えがたいものだったのだろう。

 その最愛を奪われて、正気ではいられなかったのかもしれない。だが、それではあまりにも弦が哀れだ。

 母親に望まれてこの世に生まれたにも関わらず、弦は父親からは全てを否定され続けた。それでも大切だった人を失った父親に寄り添い、彼が少しでも立ち直れるようにと彼女なりに努力もした筈。

 けれども、父親たる族長から返って来るのは、冷たい眼差しと嫌悪の表情だけ。

(弦ちゃん、よくもまあ心壊さなかったなぁ……いや、もうとっくに壊れてたのかもしれない)

 そうと自覚していないだけで、弦の心は当の昔に愛を返されるのを期待していないのかもしれない。それは、ある意味一種の自己防衛に該当するのだろう。

「「我々は悔いました。半端に手助けをしたせいで、弦から母親を、青年から妻を奪ってしまったと。だから、少しでも弦が生きていきやすいようにと、彼女の中に宿る光と闇の力を調整し続けてきたのです」」

「あ、もしかして……弦ちゃんが『黒黴病』発症してるのに黒斑が無いのって」

「「我々が二つの力のバランスを取り、症状の悪化を防いでいる為です」」

 黒羽達の話を聞いた事で、『黒黴病』を患っているのにも関わらず弦にだけ黒斑が無い理由に合点がいき、長年の疑問が解けて少しスッキリする。

「で、あたしにあえて肉の器だって言ったのは?」

「「女神から貴女の話は伺っておりました。しかし、相手は一度対立した高位の神。おいそれと信用するには、些か不安がありました」」

「色々見せられたのに?? 結構な情報量あったと思うけど、それでも信用出来ねぇってそうとうよ?」


“嫌われてる訳じゃ無いですぅうううう!! ちょっとあのアレですぅ! お互いを知る時間が無いが為のすれ違いですぅうううう!!”


「いやうるっさ」

 急にぎゃあぎゃあと騒ぎ出した女神に思わず顔を顰め、晶子は鬱陶しそうな表情で宙を見上げた。

「てか、別に嫌われてるとは一言も言ってねーんだわ」


“絶っっっ対!! 遠回しに言ってました!! あれは絶対、ぜーったい言ってました!!”


 しつこく念を押すように繰り返す女神に、晶子はうんざりしてわざとらしく溜息を吐く。


“ちょっと!! 今すっごく大きい溜息吐いたでしょ!?”


「あーはいはい、ごめんねごめんごめん」


“返事がおざなり!! 私これでも女神ですよ!? もっと丁重に扱って!!”


 いい加減面倒くさくなってきた晶子は、まだあれこれ言い続ける女神を無視して黒羽達に視線を向ける。

「五月蠅い女神はほっとくとして。まあ、あんた達が言いたい事も分からんでもないよ? つい最近までやりあってた相手が喚び出した異邦人、それも女神の力を持った存在なんて、正直疑ってもしゃーないよね」

 晶子の言う通り、いくら和解をしたと口では言っていても、黒羽達にとっての女神は世界から自由を奪い生きとし生けしものを縛り付ける悪しき神。

 そんな相手から持ち掛けられた話など、普通に考えて罠の可能性を考慮しない訳がない。

「「そう、ですね……でも、結果として貴女は、晶子様は我々の言葉に怒り、弦を大切に想ってくれているのだと再確認出来ました。だから今度こそ、貴女を信じたいと思います」」

 そう言うなり、黒羽達はいそいそとベットから降りると、床に跪いて首を垂れる。

「「我等、光と闇を司る者。我等はここに、女神の使者こと再編者殿の力添えになる事を誓います。どうぞ、世界の為に——」」

「あーはいはい、堅苦しいのは無し!!」

 長々と続いて行きそうな文言を遮り、晶子は黒羽達に苦笑した。

「色々と言いたい事はあるけど、とりあえずあんた達が弦ちゃんを無下に扱ったりしないって事でOK?」

「「もちろんです!」」

「ならいいや。この後、現世に戻ったらやる事山盛りだろうから、精々こき使わせてもらうって事でさっきのはチャラね」

 ひらひらと手を振って言えば、黒羽達はほっとした様子で息を吐くと任せて欲しいと力強く返事をした。

「あ、満ちゃんもお願いね」

「わかってやす。そもそも、今回の事態を招いたのはあちきの弟でありんす。ならば、彼の暴走を止めるのは姉の役目でありんしょう」

 晶子の言葉に頷いた満の目は、強い決意と覚悟で満ちている。もしかしたら刺し違えてでも止めようと考えているかもしれないと思い、現世に戻った時は彼女の動向に注意しておこうと心に決めた晶子だった。


“——!! 晶子!!”


 何かに気付いた女神の声が響いた瞬間、常世の空間が大きな地響きをたてて揺れた。

「うおっと!?」

「「わっ!?」

「きゃっ!?」

 突然の振動に倒れ込んだ満を受け止め、ベッドにしがみ付く黒羽達の頭を庇う。そんな晶子の体を、ずっと近くにいた黒い手が掴んで吹き飛ばされないようにしてくれた。

「ありがとう!」

 晶子がお礼を言えば、手は器用に親指に当たる部位を立て答える。

(……この揺れ、常世からのじゃないな?)

「ちょっと女神! 何が起きてんの?」

 生粋の日本人である晶子は、震度四程度の揺れが地の底で起きたものでは無いと察知し、すぐさま何か知っていそうな女神に呼びかける。


“あの得鳥擬きの魔物が、凄まじい速度で成長を続けています! 神樹の住人も数人食べられた後のようで、かなり不味い状況です!!”


「冗談でしょ??」

 女神から齎された情報に、晶子は絶句するほか無かった。

次回更新は、2/21(金)予定です。

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