「……ねぇ、女神。この世界の事、ちゃんと知っておきたいから答えて欲しい」
※ 後半辺りの諸々に違和感を感じたので文章の加筆・修正を行いました。
「で、何で今まで隠していたの?」
説教という名の八つ当たりを一頻り吐き出し満足した晶子は、ぐすぐすと姿無く泣いている女神に問いかけた。
“うぅ、えっと、そのぉ……………………ごめんなさい。隠していた訳では、無いのです”
女神はしばらく口籠って答えにくそうにしていたが、遂に申し訳なさを含んだ声色で謝罪すると、観念したように語り始めた。
“この世界に喚んですぐに話そうかとも考えていたのですが、見覚えのある世界とは言え、晶子は猶予も与えられずいきなり異世界に召喚された身。そんな貴女に、世界の歴史を長々と語ったりするのは気が引けまして……”
「気遣いはたいっへん嬉しい事でありますが、こう言った大事な事情を何も知らされないままなのはとてつもなく不愉快且つ、困るのですが??」
“オッシャルトオリデス”
心の底から反省している様子なのは分かった晶子は、やれやれと溜息を吐いてそれ以上しつこく追及はしない事にする。
「黒羽達とは、何時から繋がってたの?」
“黒羽と白雲との接触は、私が貴女をこの世界に招くよりもずっと前になされていました。その際、二人には私の計画を話し、いざという時の保険として備えてもらう事にしていたのです”
「……今回は確かに、二人のおかげであたしは生きてるし、そこは助かったけども」
晶子の言うように、黒羽達が居なければ族長の攻撃によってつけられた傷により、命を落としていただろう。
最悪の事態が起きていたかも知れないと改めて実感した晶子の背を、冷たいものが流れて身震いした。
“私も、まさかあんな事になるとは思ってもみず、とても焦りました……本当に、晶子が無事で何よりです”
まだ少し涙声ではあるものの、そこに含まれる安堵の色に、ほんの少しのくすぐったさを感じる。
(んんんん、はぁ。姿は無いのに、この反省した声色聞いてるとどーも『飼い主に叱られて落ち込む犬』が想像されて仕方ないのよね……あたしって、もしかしてちょろすぎ??)
「ん、んん。あー……まあ、別にあんたに悪気が無いのは分かったし、もう良いよ。それと、心配かけてごめん」
“ぼんどうでずよ!! わだじ、じょうごがじんだら、どうじようっで!!”
「いやすっごい泣く。落ち着け?」
最近、自分の知らない世界事情をちらほらと知る事が増え、もしかしたら女神に騙されているのではと疑った瞬間もままあった。が、彼女のポンコツ具合を思い返せば返す程、その可能性は無いに等しいなと瞬時にその考えを否定する。
(それに……ここまで感情表現豊かで嘘付けない感じを見るに、こっちを騙して自分に都合よく使おう~とか、まず無理やろ。ポンコツ駄目神やし)
“あまりにびどい!! ぜんぶ、ぎごえでまずがらね!?”
「おっと忘れてた」
脳内回線が繋がった状態だと心の声も女神に筒抜けになっている事を忘れていた晶子は、更に泣き出してしまった女神にやれやれと肩を竦めた。
「この際だから色々聞きたいって思ったけど、それどころじゃ無いな……早く上に戻らないと」
神樹に来てから気付いた諸々を問い質したいところではあったが、現世がどうなっているのか分からない以上、既に女神への説教で無駄に小一時間も使ってしまっている。
新が黄泉の門を開けてしまったという事を鑑みれば、何時までもここにいる訳にはいかない。
何より鑪とアルベート、そして子供達の無事を一刻も早く確認したいと、逸る気持ちを抑えてベッドから起き上がろうとした。
「「あ、ダメです! 回復したとはいえ、まだまだ万全では無いんですから!」」
「そんな事言ってられないよ! こうしてる間にも、鑪さん達に万が一の事が合ったら……!!」
黒羽達が押し留めようと肩に触れるが、純粋な力関係では晶子の方に軍配が上がる。暖簾に腕押し状態ながらもなんとか止めようと必死になる彼女達を押し切り、立ち上がろうとした晶子。
「ぐえっ」
途端、腹部が強い力で圧迫され、思わずえずいてしまう。何事かと視線を下げれば、黒い何かが腹に巻き付いていた。
「く、黒い手?」
「晶子様、落ち着いておくんなんし」
全く身動きが出来ず困っていた晶子の前に、成り行きを静かに見守っていた満が歩み出る。
「ここは常世、現世とは隔絶された境界の先にある国でありんす。常世は時の流れが現世の十分の一程度しかありんせん。よって、そう焦る必要はありんせんよ」
「……あ、そっか。常世と現世は時間の流れが違うんだっけ」
基本的に、WtRsのゲームには時間経過の描写は無い。一部のサブイベントでは専用の夜マップが用意されていたが、会話だけで進むものだったので移動等は不可な仕様だった。
「そう言う細々したところ全部載ってて、あの資料集にはほんっと妄想の補完・手助けをしてもらったんよ……って、あっ」
随分昔の記憶になってしまった資料の事を思い出した晶子だが、感傷に浸るあまりぽろっと口にしてはいけない事を呟いてしまう。
ばっと両手で口元を隠し、冷や汗をだらだらと流す。視線は右往左往し、あからさまに動揺している晶子の姿を見て、満と黒羽達が困ったように苦笑した。
「「落ち着いてくださいな。先程告げた通り、我々は女神と早々に出会い、和解を済ませております。つまり」」
「……ちょっと待て」
意味深な笑みを浮かべて中途半端に言葉を区切る黒羽達に、晶子は嫌な予感がして別の意味で冷や汗が止まらなくなる。
「「晶子様が我々をどれ程に愛し、心を砕いてくださっているのか……そして、幸せを願ってくださっているのか、従前に理解しております。でもまさか、異世界ではあのようにして我々、もといこの世界の者達の事を題材にした本を製作される方々が多数いらっしゃるとは、不思議なものですね」」
「おぎゃあああああああああああああああああああ!?」
確実に同人誌の事を言われていると察した晶子は、この世の終わりだと絶叫した。
「おっまえ女神ぃいいいいいいいい!!」
“だだだだだっでぇえええええ!! じょうごのごど、ぜづめいずるにばぢょうどよがっだんですぅうううう!!”
「だからってなぁ!? なんであたしのプレゼン資料が同人誌なん!? もうちょっとなんか他にあったやろ!?」
“あなだの、わだじだぢにだいずるあいが、いぢばんわがりやずいどおぼってぇぇえ……”
「あといい加減泣き止め? 聞き取り辛いわ」
“あっあっ、すいません……”
スンッと表情を無くして文句を言えば女神は晶子のイラつきを瞬時に察知したようで、即話し方を普通に戻した。
「そんだけスッと戻せるっちゅうことは、嘘泣きか??」
“違います!!”
「ホンマかいな」
「「あ、あの~……」」
女神とコントのようなやり取りを続けていると、黒羽達がおずおずと声をかけてくる。
「あっ、ごめんごめん。この女神があまりにもポンコツかつアホンダラだから、話が長くなっちゃって」
「まあ、そこらに関しては置いておくとして、もっと他に聞きたい事があるのではありんせんか?」
「とりあえず、三人ともあたしが女神とぽんぽん会話してることに対して、何とも思わないのね」
満からの質問に、内心ずっと気になっていた事が口に出る。
傍から見れば、晶子が盛大な独り言を喋っているようにしか見えないはずなのに、あまりにも平然と受け入れている満達。
黒羽達は女神と協力関係にあるからと言われればそれまでであるが、満に関しては、なぜそうも平然と受け入れる事が出来ているのか不思議だった。
「黒羽と白雲はともかく、満ちゃんは女神の事、知ってたの? あと、今のあたしの呟き聞いても、何か思う所ない感じ?」
かなり淡泊な反応をする満に尋ねるが、彼女は少々困ったと言いたげな仕草はするものの、無表情なせいで言動のちぐはぐ感が際立っている。
「いえ。女神との関係や晶子様のご出身については、今会話されているのを聞いて初めて知った所でありんす。その、せっていしりょう?? も、異世界にはそのような代物があるのかと、内心はとても驚いているのでありんすが……」
そうは言うものの、満の表情には全く持って変化がない。と言うよりも。
「分かりにくうござりんすか?」
「いやうん、分かりにくい以前の話で、そもそも表情がピクリとも動いてないんだわ」
「おーまいがー」
両手を頬に当て、何故か棒読みの英語で驚きを表現する満に晶子は苦笑する。
「ぶっちゃけちまうと、娯楽も何もありんせん常世で暮らしていると、表情を動かす必要性を感じなくなってくるのでありんすよね」
「それ言って良いやつ?? 周りの黒い手達みんな、ショックで雷に打たれたみたいになってる人……人? いるよ??」
手塩にかけて育てた子供がそんな風に思っているとは知らなかったのだろう黒い手達は酷く衝撃を受けたように固まると、一部はしおしおと萎びて床に丸まってしまった。
(ウーム、黒い手達の反応を見るに、結構自我というか変異前の記憶とか個性を色々と引き継いでるっぽいな……ちょっと面白い)
「まあまあ、あちきの事はお気になさらず。黒羽様と白雲様は、やはり女神と繋がりがあるから驚かねえのでありんすか?」
「いや無理があるよ?? 強引に話を戻しても無かったことにはならないよ??」
さらっと何でもないように流そうとする満に、流石の晶子もツッコミせざるを得なかった。
「「えっと……我々は女神と話す中で、色々と聞き及んでいましたので……」」
そう言って何とも言えない空気に割って入って来たのは、仕方が無いなぁと言いたげに眉を下げる黒羽と白雲だ。
「ふ~ん?? ……あたしには伝えないくせに、黒羽達にはちゃんと言ってるのねぇ~?」
“その節はあのホント色々と申し訳ありませんでしたお願い許して!!”
少々意地悪く呟けば、またも女神は全力で謝罪の言葉を口にする。もし姿が見えているのなら、土下座しているのだろうと想像がつく程。
「冗談よジョーダン。まっ、三人が女神の事にある程度理解を示してくれてるのは有難いけどね。さて……」
一頻り女神で遊んで満足した晶子は、しばし聞きたい事について考え込む。神樹に来てからというもの、この世界について様々な憶測が生まれ続けた。
これまではゲームの記憶があったせいで気にも留めていなかった事柄ばかりだったが、アルベートや鑪、弦達と会話を重ねる中で、認識のズレはどんどんと大きくなっていく。
「……ねぇ、女神。この世界の事、ちゃんと知っておきたいから答えて欲しい」
外界とは時間の流れが違う常世だからこそ、溜め込んでいた疑問を解消できるいい機会であろうと、晶子が姿の無い神に尋ねる。
“…………えぇ、必ず、嘘偽りなく、答えましょう”
しばしの沈黙の後、女神は意を決したように、晶子の問いかけに返事をした。
「まず一つ目。この世界には色んな種族がいるけど、彼らは一体何時から存在するの? 多分だけど、魔力放流の前は人間しかいなかったんだよね?」
“晶子の仰るように、この世界には元々、人間しか種族は居りませんでした。有翼族や宝石族、彼等以外の種族も、全て魔力放流のさいに生まれた種。膨大なマナの流れに侵食された事で命を、自我を得た動植物達の進化した姿なのです”
この答えに、晶子は驚きを隠せなかった。てっきり人族以外の種族達は、鑪や他の英雄達と同じく人間から変異した者達だと思っていたからだ。
「え、じゃあ、当時生きてた人間達は?」
「「大半は、魔力放流の流れに飲まれて跡形もなく消滅しました。今現在まで生き残っている人間達は、女神が辛うじて守りの加護を与えた者達の生き残りなのです」」
女神の代わりに答えた黒羽達の言葉に、無意識に握り締めていた手に力が入る。だが、精霊達の助力無くして助かる事はなかったであろう英雄達のその後を思えば、力を持たない一般人が、強大なマナの波に呑まれて無事であれる訳はない。
(当然、と言えば当然か……)
「じゃあ、二つ目。多種族達が魔力放流の後に生まれた新しい種族だってのなら、満ちゃんと新くんは、黒羽達の子孫では無いって事になるよね? なんで二人の子孫だって事になってんの?」
そう、一番の問題はそこである。晶子はこれまで、ゲームの情報だけを鵜吞みにして『有翼族は光と闇の英雄の子孫である』と信じていた。
しかし、今の話から有翼族と黒羽達に血縁関係はない事は明らかであり、『有翼族が黒羽達の子孫である』という部分に矛盾してしまう。
“それに関してですが、恐らく有翼族達の元の存在が、光と闇の精霊の眷属であった事に由来するのだと思います”
曰く、光と闇の精霊は、鳥型の眷属を数多く有していたのだという。彼らは狂信的に二体の精霊を慕い、彼らこそがこの世界の神に最も近しい者であると常々宣言していたのだとか。
“一時期、女神を降して新たな神として持ち上げようとしている、と精霊達から報告されて頭を抱えたものです……”
「うわ……まんま有翼族じゃない??」
困ったように溜息を吐いた女神に、どこかで聞いた事のある話だなと晶子はドン引きする。
「というか、光と闇の精霊の眷属って鳥なんだ? てっきり風の精霊の眷属かと思ったけど」
降って沸いた疑問を何気なく口にした晶子に、女神はそれも間違いでは無いと指摘した。
“鳥の形をした眷属と言えば、一般的に風の精霊シルフィードが従える者達の総称です。しかし、その中で唯一、光と闇の精霊の元に自ら鞍替えした種類の鳥がいるのです”
「「光の精霊には白鷺が、そして闇の精霊には烏が仕え、二体の元で寵愛を受けていたそうです」」
「白鷺と烏、色味的にも意味合い的にもピッタリってか」
現実世界において、白鷺には回復や癒しを願うスピリチュアルな意味がある。また、烏も知恵者として様々な媒体でも親しまれており、どちらも光と闇にうってつけの性質を持っていた。
「「色彩豊かな有翼族達は、眷属以外の鳥達が姿を変えた者達でしょう。そうして似たような形の者同士で引かれ合い、一つの大きな種族として確立した」」
「で、長い年月の中で混じり合い、有翼族は光と闇、そして風の性質を持つ一族として数を増やしていった……あれ、でもそれだといよいよ辻褄が合わなくなるじゃん」
女神達の話を総合して導き出される答えは、『精霊の眷属が元となって生み出された有翼族が黒を忌色として拒絶している』という事だ。
光の精霊の象徴たる白と、闇の精霊を的確に表す黒。有翼族がかつての眷属達という理論でいくのであれば、新を崇拝する意味は良く分かる。
だが、それではなぜ黒を嫌い遠ざけるのか。本来なら、白だけでなく黒も神聖なものとして扱っていなければ可笑しいというのに。
それなのになぜ、彼らは黒というものをここまで拒むのか。
「それについてでありんすが、事の発端は恐らく族長かと」
「族長? ……あ!」
急に出て来た族長の存在に首を傾げた晶子だったが、すぐにどういう意味か見当が付いて声が出てしまう。
「!! そっか……あの人の奥さんが亡くなったのは『内外マナ乖離症候群』、通称『黒黴病』で!!」
「彼の者は愛しい存在を黒き病によって奪われんした。故に黒を憎み、あちきや同じ黒の混ざった娘を毛嫌いしたのでありんしょう」
「そもそも、『内外マナ乖離症候群』もとい『黒黴病』ってなんなの?」
劇中でも度々耳にしていた不治の病、しかしてそれが一体どう言った原因により発生するものなのかは一切明かされない。
“『内外マナ乖離症候群』と『黒黴病』は、そもそも似た性質を持った全く別の病気なのです”
晶子からの質問に女神は一つそう前置きをすると、二つの病状について説明を始めた。
“まず『内外マナ乖離症候群』ですが、こちらは晶子もご存じのように、体内で生み出されるマナと、肉の器が受け付けるマナの性質が乖離している事によって起きる病気です。『黒黴病』も、症状自体は『内外マナ乖離症候群』と酷似しています。しかし、この二つの病には明確な違いがあるのです”
「明確な違い?」
“『黒黴病』の特筆すべき点は、『光と闇以外の眷属の血を濃く受け継いだ有翼族の中で、体内で生成するマナに闇の力が色濃く反映された者にのみ発症する』という事です”
そう言った女神の言葉に、ハッとした晶子。確かに思い返して見れば、翼に黒斑を浮かび上がらせていたのは、みな色鮮やかな翼を持つ子供達だけ。同じく『黒黴病』を発症していると言われているのに、灰色の翼を持つ弦には黒斑が無い。
「『内外マナ乖離症候群』と『黒黴病』は本来全く別の病気。でもって、宿すべきで無い性質のマナを持っているから、それが黒斑って形で翼に滲みだしてるって事?」
「「そう言う事になります。弦の母親は『黒黴病』だったと言う族長の恨み言から察するに、彼女は光と闇の眷属の血が薄かった上、闇の力を発現させてしまった事で発症したのでしょう」」
まさか今まで同一のものだと思っていた病が、似た性質の別のものだったとは。
(待ってくれいよいよ時系列がごちゃごちゃになって来たぞ……えっと、そもそも魔力放流があったのが五百年前で、そこから異種族が誕生。で、そこからなんやかんやで有翼族が纏まって……ん?)
驚愕に言葉も出ない晶子が情報を整理しようと考えを巡らせている最中、ふいに弦の目と視線が交わった事で新たな疑念が生じた。
「白と黒の翼を持つ者達は精霊の眷属が元ネタで、それ以外の人達はみんな鳥なんかの動物から変異した者なんだよね?」
「「そう言う事になります」」
「じゃあ、弦ちゃんと族長は? 二人は灰色の翼を持ってるけど」
神樹編の物語の中に、新と満以外に純白と漆黒の色を持つ者はいない。鮮やかな色どりが存在する集落で、唯一くすみ煤けた色をしているのは弦と族長の親子だけだ。
「それに、どうして黒羽達は弦ちゃんの体を使っているの? 今こうして貴方達が表に出ている間、弦ちゃんの意識はどうなってるの?」
段々と剣呑さを帯びていくのを自覚しつつも、晶子は止める事が出来なかった。
黒羽と白雲は、確かに好きなゲームの登場人物だっただろう。だが、ほとんど関りという程の関りも無かった者達より、何度も連れ回し思い入れのあるキャラだった弦の方が、晶子にはずっと大事だった。
「ずっと後回しにされてたけど、ちゃんと答えて。弦ちゃんは無事なの?」
無言のまま、見つめ合う晶子と黒羽達。数分のようにも、数時間のようにも感じられた沈黙の後、先に話始めたのは黒羽達だった。
「「この子は無事ですよ。黄泉の門に引きずり込まれる晶子様を守る為、無意識に光の力を使った反動をうけて、眠っているだけです」」
「貴女達が出てくる事で、魂に何か変質が起きたりは?」
「「ありません。そも、彼女は我等と共存出来るように生み出された子だからです」」
黒羽達の言葉に、思考が一瞬停止する。話の意味を理解したくないと、脳が警鐘を鳴らしているようだった。
「「弦と言う少女は、我々を現世へ、正確には晶子様の御側にいけるよう設計された、いわば肉の器なのです」」
パンッ、と乾いた音が室内に響き渡る。気が付けば晶子は、弦の頬を引っ叩いていた。
次回更新は、2/14(金)予定です。




