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「あたしが聞きたいのは——貴女、本当に弦ちゃん?」

※ 文章の気になる部分を修正・加筆しました。

  常世の設定について若干の変更あり、詳しくは本編をご覧ください。

  物語の大筋自体に変更はありません。

 ごうごうと風の唸るような音に、晶子は目を覚ました。

「……こ、こは……」

 怠い体に鞭打って、上体を起こす晶子。覚醒したばかりでぼうっとする頭をなんとか働かせながら、薄暗い部屋の中に目を向けた。

 晶子が寝かされていたベッドは、部屋の入口から右手の奥。そこから見える範囲でぐるりと見回すだけでも、部屋の全貌を知ることが出来た。

 赤黒い岩肌を掘って作られたような室内は、必要最低限の家具が揃えられているだけ。照明代わりなのか、部屋の壁が時折赤く光りながら脈打っているおかげで、ある程度の明るさは保っているようだ。

 更に晶子の目を引いたのは、箒や叩きを持ってせっせと掃除に励む数体の黒い手が蠢いている事だった。

 その内、晶子のいる位置から最も近い所にいた一体が晶子の目覚めに気付き、音も無く近寄って来ると、文字通り身振り手振りで何かを伝えようとしてくる。

 何ならしきりに頬や腕を触ってはおろおろとした様子で手を振るので、晶子は相手が何をしたいのか、漠然と察する事が出来た。

「……え、あ、もしかして、心配してくれてる……?」

 思わず口をついて出た言葉だったが、どうやら正解だったらしい。黒い手は晶子が意図を理解してくれた事に喜んでいるようで、より激しく手を振り回す。

 そしてちょっと待ってて、と言うような仕草をすると、そのまま部屋を出て行ってしまった。

(……今のって、常世の黒い腕、だよね……? 思ってた以上に感情表現豊かだなおい)

 常世の黒い腕とは、WtRsで常世の一部セーフティエリア内に配置されている、NPCの一種である。主人公に対して友好的であるものの、会話は一切出来ず、メッセージウィンドにも意味不明な文字の羅列が並ぶだけ。

 攻略に必要な情報を持っている訳ではないが、文字列には一定の法則があり、有志の解読の結果、常世での暮らしぶりや満の事を話しているのだとか。

(あの情報出てきた時は、解析班マジすげぇ!! ってなったよねぇ~。実物の黒い手、ちょっと可愛く感じるかも)

 鼻歌すら聞こえてきそうな様子で出て行った黒い手を見送りながら、晶子はそう言うのも悪くないと考える。

(じゃ、なくて! 黒い手がいるって事は、もしかしてここ常世の、満ちゃんの部屋だよね? あたし、どうしてここに……あっ!)

 WtRsの常世は、そのほとんどが同じようなグラフィックになっているマップだった。更に、入退場する度にマップがランダムに切り替わると言う鬼畜仕様。考え無しに入り込めば忽ち迷子になり、右も左も分からないまま途方に暮れるプレイヤーの多かった事。

(常世マップはマジでマッピング大事)

 かく言う晶子もその一人であり、二周目をプレイ中に初めてここに足を踏み入れたが、一時間以上かかっても外に出ることが出来ず半泣きで彷徨っていた記憶を思い出す。

 そんな常世の中で、唯一絶対に動かない安置エリアとなっていたのが、ここ『満の私室』なのだった。

 では何故、常世にある満の私室にいるのか、そう考えて自分の身に起きた事をようやく思い出した。

 族長の槍によって貫かれた腹部を触るが、風穴どころか痛みすらも感じない。むしろコンディションは絶好調と言っても良いくらいであり、何なら神樹へ来る前よりも体が軽い気がする。

(何が起きたの? 確かにあの時、あたしは死にかけてたはずだし、新くんは常世の門を開いちゃって……)

「そう、あの子は黄泉の口を開けんした。だからこうして、あちきが主さんを助ける事が出来たのでありんす」

 突然聞こえて来た見知らぬ声に、咄嗟に身構えてしまった。

(気配を一切感じなかった!! って)

 一体何者だと部屋の入口を見た晶子は、そこに立っていた人物に目を見開いた。

 肩口で切り揃えられた漆黒の髪に黒い瞳、血の気の引いた青白い肌。そして、背中に折りたたまれた闇色の翼。

(満ちゃんだああああああああああああああ!!)

 この常世の国の管理者であり、新の双子の姉である有翼族、満その人であった。

「そう身構えねえで。あちきは主さんと敵対する気はありんせん」

(あ、やっぱ生の方の満ちゃんも一人称わっちのありんす語なんだ。……こんな廓言葉、一体誰に教わったんだ??)

 なんて場違いな事を考えながら微動だにしない晶子を見て未だ警戒が解かれていないと思ったのか、満は苦笑しながら入室し、ベッドの側まで歩み寄って来る。

 右下から左上に向かって切り揃えられたアシンメトリーな前髪から覗く黒い瞳には、確かに敵意は浮かんでおらず、敵対しているわけでは無いと確信した晶子は構えを解いた。

(……あ、そっか。黒い手は満ちゃんの使い魔、てか使い魔みたいな存在だから、さっきの子は満ちゃんを呼びに行ったって事か)

 常世のあちこちを徘徊している黒い手の正体は、死者の魂の成れの果てであり、満の従者である。

 本来現世で死んだ命は、常世に落ちると時間をかけて人の形を失い、人魂へと変貌を遂げる。『洗礼』と呼ばれる一連の流れは、死者が新たな輪廻へと廻る為に必要不可欠な工程であり、逆に言えばこれを受けていない魂は生まれ変わる事が出来ないのだ。

(人魂になった死者は、生前の記憶の中で最も印象に残っている言動を繰り返すだけの存在になって、余程の事が無い限り無害なん、だけ、ど……。たまぁ~に、強すぎる未練を持っているせいで上手く人魂に成れずに、魔物になっちゃう人がいるのよねぇ)

 晶子の言うように、時折、強い未練を抱えているせいで洗礼を拒み、『怨霊』という魔物に変質する魂がいる。

 怨霊になると、命あるもの全てを憎むようになり、無差別に生者を襲うようになってしまうのだ。変質した魂に救済する方法は無く、討伐するほかない、のだが。

(ま、それを何とかしちゃうのが、満ちゃんの凄いとこなんだけどね!)

 満が常世に投げ落とされて数年後、それまでは度々現世に抜け出していた怨霊達が、一切外に出る事が無くなったのだ。

 その理由は、新と協力しないルートを選択後、常世で満との会話中に聞く事が出来る。

(常世に投げ込まれた赤子を、まさか当時の霊魂達が憐れんで代わる代わる育ててくれたとか考えられんくない?? 実際にあったから満ちゃんが居るんやろうけども)

 生まれて間もない上に、まだ生命力に溢れていて懸命に泣き声を上げる姿に我慢が出来なかったと育ての親達から聞いたと満は話してくれるのだ。

 尚、余談だがゲーム内の満はその時だけ、僅かに口角が上がったグラフィックをしていたりする。閑話休題。

 そうして常世に住まう者達に英才教育を受けた結果、満は闇の力を自在に操れるまでに成長を遂げた。

(怨霊に変質した魂を縛り、契約させることで自身の使い魔として更に変化させる。ほんっと、闇の力を色濃く受け継いでる満ちゃんだからこそ、出来た事よね)

 浄化や癒しを司る光の力と違い、闇は破壊と汚染の力を持つ。満はそういった闇の力を利用し、怨霊化した者達を従属させる事で混沌としていた常世を統治したのだった。

(にしても、満ちゃんが統治する前の管理者は誰なの? 混沌としていたってゲームでも言ってたくらいだから、相当杜撰だったってのは想像に容易いけどさ)

「まずは謝罪を。無関係な主さんを、有翼族の問題に巻き込んじまってごめんなんし」

 なんて事を考えていた晶子に対し、満が深々と頭を下げた。まさか謝罪されるだなんて思ってもおらず、晶子は一瞬何が起きたか分からずポカンと口を開けて固まったが、すぐに我に返って慌てふためく。

「え!? あ、いやっ、あたしは自分から巻き込まれに行ったようなもんだから、気にしないで良いよ! 逆にお世話になったみたいで」

 だから顔を上げてと言い、晶子は徐に風穴があった部分を撫でた。恐らくだが、死にかけていた晶子を救ったのは満だろう。

「でも、どうやって傷を治したの? かなりの深手だったし、正直自分でも死んだと思ったくらいなんだけど」

「傷……あぁ、それを治したのはあちきじゃありんせん」

「え?」

 治療を施したのが満では無いのならば、誰が晶子の傷を治したのか。首を傾げる晶子の耳に、バタバタと慌ただしく駆けてくる足音が届いた。

(足音? え、常世にいる人型のNPCって満ちゃんだけのはず……)

 しかし、当の満は今、晶子の隣に居る。どう言う事だと困惑していれば、部屋の扉が蹴破られんばかりの勢いで、バンッと開かれた。

「うぉう!? って、ぇええええ!? つ、弦ちゃん!?」

 あまりの勢いにベッドの上で仰け反った晶子だったが、現れた人物を見て更に驚愕する。息を切らして現れたのが、弦だったからだ。

 彼女の後ろから黒い手が大手を振っているのが見えた事から、どうやら彼の手が呼びに行ったのは、満では無く弦の方だったようだ。

「ど、どうしてここに!?」

「はぁ、はぁ、あの時、黄泉の手に引きずり込まれていく晶子様を見て、咄嗟に手を伸ばしたんです。そのまま、はぁ、一緒にここまで落ちて来てしまって……」

(……ん?)

 弦はそう言うなりベッドに駆け寄ると、無事で良かったと晶子が座ったままのベッドに駆け寄り手を取った。

 反射的に弦の手を握り返した晶子だったが、ふと何か違和感を覚えて眉を顰める。

「……弦ちゃん?」

「晶子様、痛みはありませんか? 傷は魔法で何とか塞ぎはしたのですが……」

 ペタペタと晶子の頬や首を触り、体に異常は無いかと不安そうにしながらしきりに確認する姿は弦であるに違いないのだが、どうにも可笑しい。

 常世に落ちる前と違って、今の弦は雰囲気がやけに大人びているように感じるのだ。

(この、喉に小骨が引っ掛かった感じ……でも敵意は無いみたいだし、何より傷も癒してくれたし……)

 そこまで考えて、晶子はハッとした。

「……ねぇ、弦ちゃん」

「どうかされましたか?」

「弦ちゃんって、光の治癒魔法が使えたの?」

 浮遊の魔法陣で上昇していた時に、自身は中途半端なマナしか持たないと言っていた。それが量の事なのか、それとも扱える性質の事なのか詳細までは聞かなかったが、少なくともあの口ぶりからして治癒魔法を使えるとは到底思えない。

 ましてや、八属性の中でも扱いの難しい内の一つである光魔法となれば猶更の事。

「そ、れは、えっと、今まで隠していたのは謝ります。晶子様をご不快な気持ちにさせる気は無かったのです」

「いや、そこは別に気にしてないんだけど」

 少々焦った様子で俯く弦の言葉を、晶子はバッサリと斬り捨てる。あまりにも素っ気ない態度に、弦も小さく「えっ」と驚きの声を漏らしていた。

「あたしが聞きたいのは——貴女、本当に弦ちゃん?」

「っ、と、突然どうされたんですか? 私は弦、神樹で子供達と共に暮らす有翼族です!」

(あぁ、違和感の正体はこれか)

 はっきりと言い切った弦の肩に手を置いた晶子は、縋りつくようにして密着して来た弦の体を引き剥がす。

「弦ちゃんはね、自分の種族を『有翼族』じゃなくて『天翼族』って言うのよ。それに、一緒に暮らしてる子供達の事、本当の家族のように思ってるの。なのに、子供達よりもあたしの心配して……変じゃない? おまけに、やけに冷静に現状を受け止めてる感じだし」

 普通、突然常世に落ちてしまったのであれば、もっと取り乱しパニックに陥る者が大半だろう。

 だが、この弦の姿をした者はやけに落ち着いていて、動揺する素振りすらない。

「病気やらを抜きにしても、有翼族の中じゃ弦ちゃんは一般的な住人と変わらない。なのに、そんな子がこんな常世に放り込まれて、怯えも泣き喚きもしないってちょっと異常だよ」

「……」

「貴女……ううん、貴方は、誰?」

 完全に下を向き、表情の見えなくなった彼女は沈黙したまま答えない。

(……これ、正体がバレたからって攻撃してこないよね? え、無いよね?? なんかあったら満ちゃんが助けてくれるよね??)

 至近距離で襲われては今度こそ危ういかもしれない、と気付き冷や汗が背中を流れていく。満も黙って事の成り行きを見守っているらしく、室内は静寂に包まれた。

(きまずぅい!! ど、どうしよ、こんな空気にした張本人として何か言うべき!?)

「「……ふっ」」

 重苦しい静けさに耐え切れず晶子が口を開きかけた時、不意に弦の姿をした誰かが小さく笑った。

「「やっぱり、貴女は聡い人ですね」」

 そう言うなり顔を上げた彼女は、困ったような微笑みを浮かべて晶子を見る。瞬間、目の前の娘の姿が、ある人物達に重なった。

「……ま、さか……」

「「ふふ、流石は異界から女神に選ばれた再編者。あっという間にバレてしまいましたか」」

 重なって聞こえる男女の声が、晶子の事を称賛する。

 真っ直ぐに晶子を見つめる灰色の瞳も、灰色の翼と髪も、まごう事無く弦のもの。しかし、その体から流れてくるマナは、明らかに彼女の物とは一線を画していた。

 困惑に呆然と眼前の人物を見る事しか出来ない晶子に、弦の姿をした誰か達がくすくすと笑う。

「え、は……えぇ?? ちょ、っと待って欲しい……」

(声も姿も弦ちゃんのはず……はず、だよね? でも、この声、どっちも弦ちゃんのとは違う……えぇ!?)

 意味の分からなさに痛みを訴え始めた頭を抱えながら、必死に何が起きたのかを理解しようと試みる晶子。

 驚きのせいで回らない頭をなんとか働かせる為、眉間を揉んだり蟀谷を圧したりしながら思考を整理しようとしていた矢先、弦の姿を使っている二人の声が耳に入った。

「「混乱するのも仕方が無い事でしょう。正直な所、我々もここまで上手く表に出てこれると思っていませんでした。これも全て、この娘の協力あってこそです」」

「っ!! 待って、それって体は弦ちゃんのって事だよね? 弦ちゃんは!? 弦ちゃんは大丈夫なの!?」

 突如として現れた二人に意識が逸れていた晶子は、ハッとして弦の肩を強く掴んだ。

(怪我は……ないみたい。服も最初から来てる灰色のローブドレスだし、翼も異常なし)

 外傷は無さそうだという事にホッと胸を撫でおろすものの、未だ状況は掴めないまま。

「……うん、自分で考えても分からん。説明して。どうして二人が弦ちゃんの体を乗っ取ってるか、そもそもなんであたしは生きてるのか」

 少し険を含ませた声で問いかければ、弦の中にいる二人は居住まいを正すと改めて名乗りを上げた。

「「改めて、お初目にかかります。我々は、白雲と黒羽。かつて、鑪殿と並び立ち、女神に抗った者。再編者殿の危機を察知し、暗がりの奥深く、光明の彼方より駆けつけた次第にございます」」

 弦——否、弦の体を借りて現れたかつての英雄は穏やかな笑みを浮かべると、晶子にむかって恭しく一礼をする。

 まるで晶子を自分達よりも上位の存在のように扱う黒羽達に、更に訳が分からなくなった。

「ていうか二人とも、あたしが女神の使者だって知ってるの?」

「「存じておりますよ。ずっとこの子の中で様子を見ていましたから」」

「心読まれた!?」

「「全て口に出ていますよ」」

「うっぷす」

 心の中で呟いたつもりが、普通に口から出ていたようだ。苦笑気味に返されてしまっては何も言えず、思わず口元を手で覆い隠してしまう。

「と、とりあえず、あたしが女神側の人間だって分かってたのに、何でそんな受け入れ態勢なの??」

「「確かに我々は、遠い昔に女神と互いの信念や想いの為に戦った。けれど、あの日……ウィプスとシェードが我々を生かしてくれたあの日から、世界はより複雑でままならないものだと思い知ったんです」」

(それって……あの夢の……?)

 晶子の脳裏に、二人の英雄を救わんとする精霊達の姿が浮かんだ。あれは本当に夢だったのか、それとも誰かの記憶を覗き見たものだったのか。

「「精霊達によって世界に存在を固定された我々は、一度姿を失いました。精霊達の持つ高純度の光と闇の力に、人の体が耐えきれなかったからです。その際、魂だけになった僕達は、世界に巡るマナの流れの中に取り込まれました」」

「それって、『魔脈(まみゃく)』の事……!?」

 WtRsの世界には、マナを各地へ運ぶ通り道が隠されている。普段、人々の目に映らぬそれは高濃度のマナで満たされており、この流れの事を一部の魔導士は『魔脈』と呼んでいた。

「「魔脈の中のマナには、世界のあらゆる事象や記録が保存されていました。我々はそこで、女神が何故、世界を管理しようとしたのか知る事になったのです」」

 女神の支配の裏にそんな事情があったなど、黒羽達は考えもしなかったと言う。

「「世界が蝕まれ始めていると知った時、僕達に女神が接触して来たんです。この先の未来で、異世界から選ばれた再編者が危機に陥った際、手を貸して欲しい、と」」

「タイム」

 話のスケールが壮大だなと思いながら聞いていた晶子だが、思わず一時停止を願い出た。

「え、女神接触して来てんの? 二人に??」

「「あ、はい……え、聞いてませんか?」」

「初耳なんやが!?」

 衝撃の事実に声を荒げた晶子は、黒羽達と満がいるのも忘れて、女神に呼びかけた。

「おいこら駄女神ぃいいいいいいいいい!!」


“はぃいいいい!! ななな、なんでございましょうか晶子様!?”


 緑茶を飲んで感動した時のアルベートの比じゃないくらいに大きな怒鳴り声を上げた晶子に、怯えを滲ませながら慌てて女神が返事をした。

「おっまえ、何してくれとんじゃわれぇ!?」


“ヒェッ……ほ、本当になんの話でございますでしょうか……?”


「黒羽と白雲の話に決まっとるやろがい!! おま、協力者がおるんやったら先に言え!? こんっな急に来られてもどう対応したらええんか困るやろ!?」


 “ああああああああああ!! そそそ、そ、その件につきましては本当に申し訳ございませんと言いますかあのあのあの!!”


「黒羽と白雲が!! あと満ちゃんも!!」

「「え!?」」

「はい!?」

 脈絡もなく名前を出されて、置いてけぼりにされていた三人が揃って驚く。そんな彼女達の様子に気付かず、晶子と女神は尚も言い争いを続けた。


“いや二人が困るんですか!? 晶子が困るんじゃなくて!?”


「当り前やろあたしは何も困らんむしろ黒羽と白雲に会わせてくれて感謝感激雨霰って感じやわ察しろ!! あと二人やなくて、三人(・・)やからな!!」

「「!!」

 そこは譲れないと豪語する晶子の横で、黒羽達が小さく息を呑んだ。


“理不尽!! じゃあもう私が怒られる必要は無いじゃないですかぁ~!!”


「それとこれとは話が違うんじゃい!! 報・連・相・大・事!!」

 結局、晶子の怒りは治まるどころかヒートアップしていき、神樹でのストレスを発散するかのように女神に小一時間当たり散らすのだった。

次回更新は、2/7(金)予定です。

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