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「お姫ちゃんとその家族を、あたしが幸せにする事よ!!」

※ 晶子の技名を統一する為に変更しました。その後の展開には変更はありません。

 長い螺旋階段を駆け下りた晶子は、戦闘音が聞こえる方へ向かって大理石で出来た広い廊下を走り続けていた。

(こういうお城の廊下って無っ駄に広くて長いんだから!!)

 延々と続く似たような景色に若干うんざりしながらも、段々と濃くなっていく淀みに焦りを滲ませる。

(まだ距離があるはずなのに、こんなに濃くマナを感じるなんて……ダイアナさん、結構な大技使ってんな……それもバカスカ)

 空気を震わせて届く多属性のマナに、戦いが先程よりも激化しているのが手に取るように分かった。

 その大半はダイアナが放ったものだろうが、間に混ざる幾つかの土属性魔法は、恐らくアイオラか皇帝一家の誰かの魔法だろう。

(お姫ちゃんはお父さん達が殺される前に合流出来たんだ……良かった)

 スーフェ達が間に合ったという事は、ヘリオ皇帝達はゲームのような死に方をしないという事。それに安堵しつつ、これから始まる未知の展開に不安が隠せない。

(! 攻撃がまた激しく……うっ、しかも淀みも濃くなって……)

「……おぇ」

 とたんに強くなる腐臭に口と鼻を手で押さえ、吐きそうになるのを堪える。

(これ、誰かがダイアナさんの地雷ぶち抜いたんじゃね?)

 苛烈で凶悪性の高いマナを感じ、漠然とそんな事を思う。

 今の彼女にとって皇帝一族は、この世で最も大切な愛しい人を見捨てた薄情な家族でしかない。しかも、淀みによって精神を汚染されているせいで、完全に見境が無くなっている。

 そんな状態では、例えどんな些細な言葉であってもダイアナの精神を逆撫でしかしないであろう。

(地下道でダイアナさんに会ってるお姫ちゃん達は、多分滅多な事は言わないだろうし。これは……次男か三男……いや、手紙の文章的に見て、これは次男の方が余計な事を言ったんじゃなかろうか?)

 残念ながら、晶子は皇帝家次男・三男については詳しい訳では無い。公式設定でも明らかになっていない部分の多い二人だが、それでも何となく、晶子の勘がそう告げていた。

(とにかく、このままじゃダイアナさんも持たない。早くみんなの、お姫ちゃん達のとこに行かないと!!)

 逸る気持ちを抑え、一歩前へ踏み出そうとした晶子。

(……ッ!? 左から何か来る!?)

 急激に収束するマナの気配を感じて、咄嗟に後ろへ飛び退く。次の瞬間、目の前を凄まじい威力で青白い光が通り過ぎ、晶子は後ろにひっくり返った。

 派手な音を立てて砕けるガラスの破片から頭を守りつつ、視界を遮る土埃に咽ながら、何事かと手でそれらを払う。

「……うっそだろおい」

 思わずアルベートのような言葉が口から出たが、それも致し方ないというもの。

 先程まであった大理石の廊下には太いレーザー痕が刻まれ、光が突き破ってきた壁や窓は高熱で焙られたように溶けている。

 あのまま進んでいれば自分も……と、晶子は内心ゾッとした。

(今のって、もしかしてプリズムスパーク……? そ、それにしては、威力高過ぎじゃない??)

 光と土の特性を併せ持つ魔法の一つであるプリズムスパークは、WtRsでもよく使われる高威力魔法だ。晶子も良く御世話になっていた魔法の一つであったが、ここまでの威力があったとは思わず、口元を引き攣らせる。

「晶子!! 何かすっげぇ光とデッケェ音してたけどよ、大丈夫か!?」

 呆然と座り込んでいると、ようやく追いついてきたアルベートと鑪が慌てて駆け寄って来る。

「う、うん。間一髪で後ろに下がったから……」

「怪我が無くて何よりである。……しかし、まさかこのような高威力の魔法すら使いこなすとは……」

 片膝を着いて晶子の心配をしつつ、鑪はそう言って廊下の痕をさらりと撫でた。

「かなり厳しい戦いになると予想されるが、勝算はあるのか?」

「無い!!」

 鑪の言葉に、晶子ははっきりと否定を返す。

(本当は、色々考えてた事はある。けど、それって全部『ゲームのシナリオを前提』にした時の想定なんだよね)

 スーフェ達と過ごしてきて、何が最善か、どうすればあの悲劇を起こさず済むかを考え続けてきた。しかし、なまじWtRsの情報を持っているせいもあり、どうしてもそれらを前提にしてしまうのだ。

「説得とかも考えなくも無かったけど……地下道でのダイアナさんの様子からして、話なんて出来ると思う??」

「無理だな」

「無理であるな」

 微妙な顔で即答した二人に、晶子は吹き出す。

「まあ、そう言う事。言葉ではどう頑張ったって駄目だろうし、もうそうなったら、拳で語らうしかないよね!!」

「暴力は全てを解決するみたいに言うんじゃねーよ!!」

 アルベートの全力ツッコみをスルーして、サムズアップする晶子。調子に乗ったような様子に、質問した鑪も呆れたと溜息を吐いた。

「こんだけ漂ってくる淀みが濃いって事は、ダイアナさんの精神汚染も行くとこまでいっちゃってるって事でしょ。会話もままならなさそうだし、話して駄目なら殴って止めろってね」

「……一理ある、か」

「ホントか!? お前ホントにそう思ってんのか鑪!?」

 晶子の弁論に納得した鑪を見て、アルベートが驚愕する。対する晶子も、まさか鑪が同意を示すとは思わず、ポカンを間抜けな顔をしてしまう。

「どの道、戦う術がある状態では相手は抵抗を止めぬであろう。ならば、抵抗する気すら起きぬようにしてしまえば良い。して、手足を切り落とすのか?」

「物騒!! 鑪さんそんな事言う人でした!?」

「っくく、冗談である」

 あまりに人の心が無い発言にギョッとすれば、鑪は笑いを堪えるようにそう言った。

 しかし、鑪は他の英雄達からして『真面目が人の形を取ったような人物』と言わしめる程の性格の堅物。

 そんな人の口から飛び出たそれは、冗談というには嫌に本音を含んでいるような気がして、いくら普段お茶らけている晶子であっても笑えなかった。

(こ、こわぁ~~~~~!? 本気で冗談なのか分からんから余計にゾワァってするぅ~!!)

「……鑪、流石に今のは笑えねぇ。今後、絶っ対に言うんじゃねぇぞ? いいな? 振りじゃねぇからな??」

「む……そうであるか。相分かった」

 無意識に両腕を擦っていた晶子と注意を促すアルベートを見比べて、鑪は少し残念そうにしながら頷いた。

(んんんんんん、渾身の出来だと思ってるギャグが伝わらなくてしょんぼりしてる感が凄い、かわよ……じゃなくって!!)

 触覚が少し下がっている鑪に悶えていた晶子は、尻もちをついた際に放り出された薙刀を持ち直し、服の汚れを軽く払って立ち上がる。

「ここでうだうだ言っててもしゃーない。道も出来たし、最短距離でお姫ちゃん達を助けに行くよ!」

 そう言って今しがた出来たばかりの穴に向き直ると、晶子は右手を目線の高さに持ち上げ、親指と人差し指でL字を作る。あーでもないこーでも無いと呟きながら角度を調整し、納得出来る場所を見つけてニヤッと笑った。

「何してんだよ?」

「こうすんの、よっ!!」

 晶子はアルベートへ簡単に答えながら、左手に握っていた薙刀を槍投げの要領で思いっきり投げた。

「なん、おま、はああああああ!? お前何してんだ!?」

 突拍子もない晶子の行動に唖然とするアルベートを軽々と小脇に抱えると、隣に並んだ鑪に頷きかける。一瞬ポカンとしたものの、彼はすぐに大声で笑いだした。

「カッカッカッ!! 良かろう。いざ、参る!!」

「突撃じゃい!!」

 ほぼ同時に駆け出した二人は大幅なショートカットを経た事で、あっという間に目的の場所へと辿り着く。

(帝国編ラストバトルの舞台、皇帝の間! 戦闘が激しすぎて内装はめちゃくちゃだし、うわ、玉座もバラバラにされてる……)

 豪華絢爛で威厳に満ち溢れた場である筈のその部屋は、無残な変貌を遂げていた。

 本来なら天井で煌びやかに部屋を照らしていた巨大な光石シャンデリアも、戦闘の余波を受けて床に落ち、あちこちに欠片が散らばっている。

 玉座が破壊された上座に佇むのは、泥濘のような淀みに侵されて宝石が黒く濁ったダイアナと、その腕の中で尚も眠り続けている痩躯の男。

 対面には、ボロボロの状態で抵抗を続けているスーフェとアイオラ、そしてヘリオ皇帝とアラゴ・トパシオン兄弟が、目を丸くしてこちらを見ていた。

 晶子は双方の間に突き刺さった薙刀の元まで走り寄ると、それを引き抜いて宣言する。

「この戦い、ちょっと待ったぁ!!」

 並び立った鑪と共にスーフェ達を背に庇うと、ダイアナへ薙刀の刃先を向けた。

「はへ!? お姉様!? それに鑪様まで!?」

「なぜここにいるんです!?」

 突然現れた晶子達に、スーフェとアイオラは動揺を隠せない様子。

「おい! 俺様もいるだろうが!!」

 と、自分だけ名前を呼ばれなかった事が不満だったらしく、晶子に抱えられた状態でじたばた暴れながら、アルベートが猛抗議を始める。

「えっ、あっ、ご、ごめんなさい。アルベート様」

「よしっ!」

「あんたは子供か!」

「……締まらぬな」

 緊迫した空気が一気に緩み、鑪が目頭を押さえながら溜息を吐く。

 そんな彼は、急に放たれた魔法弾を見事な刀捌きで一刀両断した。アルベートをそっと下ろした晶子も、自身に向かってきた炎の塊を握り直した薙刀を軽く奮って消し飛ばす。

(うん、会話中に敵が待ってくれたりするゲームやらアニメのお約束は適用されない。現実ってショッギョムッジョだよね……)

 内心うんざりしていた晶子は、ふいにぽかんと口を開けて呆気に取られているヘリオと目が合った。

「お前達は……あの時の二人組か?」

「どうも、こないだぶりです!!」

 何が何だか訳が分かってない様子でこちらを見るヘリオに、晶子はよっと挨拶をする。

「貴様ら、皇帝陛下に対し何たる無礼!!」

「父上、英雄様はともかくとして、こちらの方々とは面識が?」

 あまりにも気安い言動に、彼を守るように剣を構えていた青年達の眉間に皺が寄った。

 晶子は手紙の内容を思い出し、金色のウルフカットの精悍な顔付きにスカイブルーの瞳の青年が次男のアラゴ、亜麻色のミディアムヘアにやや幼い顔立ちをしたサフランイエローの瞳の少年が三男のトパシオンだろうと当たりをつける。

(ああ、うんまぁ、お兄ちゃんズとは初めましてだから、仕方ないんだけどね……)

「お兄様! この方達は怪しい人ではありません! 困っている私達を色々助けてくれたのです!」

「前にダイアナに襲撃された時にも、僕達を庇って戦ってくれたんです」

 兄弟になんと弁明しようかと晶子が悩んでいると、スーフェとアイオラがそう言った。

「うむ。この者達は決してお主等を傷付ける事はせぬ。この我が保障しよう」

「ス、スーフェとアイオラのみならず、英雄様の御墨付、だと!? な、猶の事意味が分からん! お前達! 一体何者だ!!」

 次いで鑪が安心させるように告げるも、それが逆に不信感を募らせたらしい。僅かに驚いた表情から一変、攻撃的な顔つきになり晶子達を睨みつけた。

(まってめっちゃ警戒されてるがな!? まさかアラゴ兄ちゃん説得せなアカンやつ!?)

 妹とその御付きの者を誑かした不届き者と思われているのかと、冷や汗をかいていた晶子だが。

「答えろ!! 何の魂胆があって誰よりも愛らしく、尊く、真面目で一生懸命に家族の事を想う妹スーフェと、努力家でしっかり者ででも偶に抜けた所がある我が第二の弟でもあるアイオラに近づいたのだ!? あと何より偉大で寛大で、誰よりも偉大な父上にかような言葉遣いをするなど……万死に値するぞ!!」

「偉大って二回言ってるし、さては君家族の事大好きだな?」

「お兄様!!」

「アラゴ様!!」

 凛々しい顔つきで惚気のように家族の事を上げるアラゴに、主にスーフェ達から非難の声が上がった。嬉しいのと恥ずかしいのが鬩ぎ合っているようで、赤くなった二人の顔はにやけ顔にもしかめっ面にも見える。

「アラゴよ……」

「アラゴ兄さんってば……」

 対して、アラゴの言動はいつもの事なのか、ヘリオとトパシオンは呆れたように脱力した。

「まあ、とりあえず。あたしがお姫ちゃん達に近づいた理由はただ一つ!!」

「ほう? それはなんだ!!」

「お姫ちゃんとその家族を、あたしが幸せにする事よ!!」

 一際大きな氷の塊を薙刀の一閃で処理した晶子は、真っ直ぐにアラゴを見る。自信満々に言い切れば、彼は酷く驚いた様子で口を噤んだ。

「あたしの一番の目的は、あたしが知ってる人達の悲劇をぶっ壊して、ハッピーエンドを届ける事!! その為になら例え火の中水の中、それこそ深い闇の中だったとしても飛び込んでいける!!」

 晶子はお返しと言わんばかりに、力いっぱい薙刀を振り上げる。刃が青く光り輝いたかと思うと、そこから氷で出来た刃がダイアナへ向かって飛んで行った。

斬閃(ざんせん)氷月(ひょうげつ)!!」

「くだらない」

 しかし、ダイアナは顔色を変える事無く、炎の壁を魔法で創り出す。氷の刃と炎の壁がぶつかり合った瞬間小規模の爆発が起き、立ち昇る水蒸気によって視界が覆われてしまった。

「悲劇を壊して、ハッピーエンドを届ける? いいえ、そんな事は出来ない。させない。アメジア様を見捨てた者達に、明日の朝日は訪れ無い」

 コツコツと響くダイアナの足音に、晶子達は武器を構え直す。

「そうよ、させない。お前達は今日、ここで、死ね」

 相手の居場所を特定しようと目を凝らす中、白い煙の奥から突如として黒い影が口を開けて飛び込んでくる。反射的に薙刀でそれを防ぎ斬りつけたは良いものの、その正体に目を剥いた。

(《潜む者》!? まさか、未來さんもいたりする……!?)

 未來まで相手にするのは厳しいと、晶子は周辺のマナを探知する。《潜む者》が居る為しっかりと探れた訳では無いが、幸いな事に彼女がいる気配は無かった。

 晶子がホッと胸を撫でおろしていると、ダイアナの影からこれまでで一番大きな蛇が現れる。

「これは、()る方から頂いた力。この力と、極限までマナを高めた私がいれば、アメジア様は目をお覚ましになるのです!」

 すり寄って来る黒い蛇を撫でながら、ダイアナは恍惚とした表情を浮かべる。その瞳は濁っており、もはやどんな言葉も届きはしないだろう。

「その為には……お前が必要なのよ、アイオラ」

 彼女が言い終えたのと同時に、《潜む者》が大口を開けて襲いかかってくる。晶子は素早くアイオラの前に立ち塞がると、薙刀の一振るいで首を刎ねた。

「あの方が言っていた……かつて世界を破滅寸前まで陥らせた忌々しき女神、その力の加護を受けし邪悪な存在がいると。お前がそうだな?」

「だったら何? 手加減でもしてくれるわけ?」

 背後から聞こえた息を呑む音に続いて、困惑や嫌悪、疑惑の視線が突き刺さる。晶子はそれを甘んじて身に受けながらも、ダイアナから目を逸らさなかった。

「いいえ、寧ろ絶好の好機というもの。かの邪悪な女神の使徒を倒したと、アメジア様に喜ばしい御報告が出来ますから」

「ふん。残念だけど、それは無理だと思うよ」

 うっとりした顔で影から呼び出した《潜む者》を嗾け続けるダイアナを鼻で笑いながら、晶子はそう言った。

「まあ……それは、お前が勝つから等と俗物的な事を言いたいので?」

「アメジアは目を覚まさない」

 淡々と言い捨てた晶子の言葉に、ダイアナの動きが止まる。

「……は?」

「同族に手をかけて、得体の知れない力を手に入れてまで求めて……でもね、そんな淀みまみれの力じゃ、アメジアは目覚めないんだよ。それどころか、その力を使ったらアメジアは」

「穢れた女神の使徒風情が、アメジア様の名を呼ぶな!!」

 感情を爆発させたダイアナが、大量の魔法陣を呼び出した。休み無く放出される無数の魔法を鑪と共に片っ端から叩き落す。

「どいつもこいつも邪魔ばかり……!! どうして上手くいかない!!」

 苛立ちから頭を掻き毟り、美しい(かお)を悍ましく歪ませたダイアナは、ふと何かを思いついたように顔を上げた。

「そうだわ……別にアイオラがいなくたって、今の私なら出来る筈!! うふふ、アハハハハハハッハハ!! そウよ! 私なラ! 私にしカ出来なイノよ!! さあ、オ前達!! アメジア様を目覚めさセルのヨ!!」

 高笑いと共に、ダイアナは数匹の《潜む者》を使ってアメジアに力を注ぎ込み始める。膨大な量と質のマナをその身に受け、アメジアの体は黒い靄と様々な色の輝きを伴って宙に浮かび始め、天井に近い所で制止した。

「まずいって、こいつらっ!! 邪魔!!」

 今から起ころうとしている事を察して止めに入ろうとするも、《潜む者》に妨害されてしまう。

そうしているうちにも、アメジアの周りの靄と輝きが彼の体に吸い込まれて行き、明滅を繰り返す灰色の卵の形を成した。

「アメジア様! よウやク、御目覚メに!!」

 歓喜に震えるダイアナが、両手を広げて主人の帰還を心待ちにする。ピシリと音を立てて表面に亀裂が入り、いよいよアメジアが——。


——バキバキグチャゴギッゴボボボボ


「……え?」

 異常な音を響かせて卵から出て来たのは、宝石の鱗を持つ蛇の下半身と、人間の男の上半身を持った怪物だった。

 男の顔立ちはアメジアに似ていたが、髪や瞳、指先の爪等あらゆるところが宝石に置き換わっており、端麗な美しさが怪物の異様さを引き立てていた。

(ここ、ゲームだとダイアナさんが闇落ちしてボス化してたのに、よりによってこうなんのかよ……別のボスが出てくるかもって覚悟はしてたけど、これはまじで笑えん)

 本来のボスに差し変わって登場した存在に、晶子の額から汗が流れ落ちた。

「アメ、ジア、様……?」

 そんな中、まさかアメジアが怪物化するとは思っていなかったらしいダイアナが、血の気を無くした顔でフラフラとそれに近づいていく。

 名を呼ばれた怪物はダイアナを一瞥すると、興味無さそうに目を逸らした。それでも縋りつこうとする彼女を鬱陶しく思った怪物は、尻尾で叩き潰そうとする。

 未だに状況が呑み込めず立ち竦んでいるダイアナを救ったのは、比較的近くにいた晶子……では無く。

「ダイアナ!!」

「スーフェ様!!」

 いつの間にか走り出し間一髪で滑り込んだ、スーフェだった。ダイアナを抱きしめて勢いのまま転がる事で、何とか尻尾の一撃を躱したのだ。

「アルベート! アイオラ君達と一緒に、お姫ちゃんの所行って!!」

「分かった!」

「鑪さん、今回も共闘お願いします!」

「うむ。存分に使うが良い」

 指示を聞いて行動を開始するアルベート達から怪物の意識を逸らす為、晶子は腹の底から声を出して名乗りを上げる。

「あたしの名前は晶子、女神に選ばれた『再編者』だ!!」

 帝国の命運を左右する戦いが、幕を開けた瞬間だった。

次回更新は、7/26(金)予定です。

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