表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/43

38話 小屋からの脱出

今まで無感情だったケンイチロウという男性は、ほんの少しだけ顔に笑みを浮かべている。私が何するのかを、本気で期待している。レパードも、私に飛び掛かってくる様子もない。


敵の目の前で、魔法を使ってもいいの?


「それじゃあ、遠慮なく魔法を使いますよ。いいんですか?」

「ああ、早く見せてよ」


止める気配が、全然ない。

もう、ここで発動しちゃおう。


「来たれ、[来訪神]!!」


詠唱した瞬間、私の中に何かが入り込み、強烈な波動を身に纏い、鬼の仮面と包丁が顕現され、私は仮面を被り、包丁を装備する。


「面白い仮面だね」「な、この気配は!?」


評価が分かれてる。ケンイチロウさんは、何が起こるのか期待する眼差しだけど、レパードだけが酷く動揺している。


伝統魔法[来訪神のご来訪]


効果

発動者のみに、神の使者[神鬼]を降ろし、その者には[悪疫除去][大漁満足][五穀豊穣][家内安全]という4つの力が与えられる。ただし、1度の魔法行使で、いずれか1つしか力を扱えないので注意すること。


詠唱:来たれ、来訪神


①悪疫除去:発動時間 10分


包丁を相手の急所に通すことで善人と悪人たちの中に潜むあらゆる悪疫のみを完全浄化させ、心身共に健康にさせる効果がある。また、心臓部などの急所でなくとも、身体に包丁を素通りさせることで、内部の悪疫をじわじわと除去させることが可能である。


②大漁満足(地域限定:海、川、湖) 効果期間:3日


指定箇所から直径100メートル一帯の海域を浄化させ、周囲に恵みをもたらせる。


③五穀豊穣(地域限定:大地) 効果期間:3日


指定箇所から直径100メートル一帯の土壌を浄化させ、周囲に恵みをもたらせる。


④家内安全 効果期間:3日


訪れた家の家主とその家族に潜む悪疫を浄化させ、その家に幸福をもたらす。


発動条件:

①~④全てにおいて、悪意が指定箇所一帯に蔓延り、発動者もしくは発動者の認めた者が身体と心を苦しめられている。


消費魔力:500


この伝統魔法の悪疫除去は10分限定だけど、これで悪意を打ち払える。


私の右手に持つ包丁は顕現こそされているけど、実体を斬れない代わりに、発動中の魔法やスキル、人の悪意などを斬れる。


攻撃を与えるなら、初動がチャンスだ。

私は包丁をケンイチロウさんに向け、右に払うと、右手に掠った感触を掴んだ。


「妙だ。君から……!!」


どうしたのだろう? 彼の顔色が急速に変化して、頭を抱え、足をふらつかせ、片膝を床に着ける。この包丁に触れても、身体を傷つけることはできないのにどうして?


「こ…れ…は…」

「ユミル、ケンイチロウに何をした!?」


レパードがこっちに襲いかかって来たので、慌てて包丁を右に払うと、部屋の狭さと彼の巨体のおかげで、彼の右前足に包丁を通すと、その途端に彼の動きが止まる。


「うぐ…これは…何だ?」


え~何故か、レパードも苦しみ出したよ!?

と、とりあえず今のうちにアイリス様たちのもとへ行こう。


「ま…待て」


レパード、待つわけないでしょうが!!


「アイリス様とメイリンさんを助ける!!」


大丈夫、自分の制作した魔法を信じるんだ。私は覚悟と強い決意を持って、アイリス様のもとへ行き、包丁を横薙ぎにして彼女の身体へ通す。そして、隣にいるメイリンさんにも同じ行為をやった。


身体内にある悪意の浄化、これを完全に打ち払うにはどうしたらいいのか必死に考えた。人の体に潜む他人の悪意、スキル、魔法を破壊する行為、どこに潜んでいるのかわからない以上、打ち払うには一撃必殺ともいえる強いイメージが必要だった。


だから、私は人の急所を選んだ。今回は、ちょっとした刺激でスキルを解除できるとガルトさんから教えてもらったので、急所とか関係なく体に通したけど、どうやらこれだけの行為で、効果は絶大のようだ。


死んだ目となっていた2人の目と顔の表情が、見る見るうちに変化していき、魂の籠った顔へと戻る。


「あれ? 私、どうした……ってユミル?」

「私、どうしたのでしょう? ユミル様? おかしな仮面をかぶってどうしたのです?」


やった、元の2人に戻ってくれた!!

私は急いで、2人の手に触れる。


『ガルト様、アイリス様たちを覚醒させて、2人に触れたよ!!』

『了解だ……[召喚]』


私は、苦しむケンイチロウさんとレパードを見る。


「これでお別れ。さよなら」

「ま…待って…君は僕らのキ…」

「ユミル…待…」


ケンイチロウさんが何かを言いかけた時、突然景色が切り替わる。切り替わる瞬間、ふとレパードを見ると、包丁の通した箇所周辺の皮膚が、灰色に変化しているように見えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ