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37話 劣勢からの好機を見つけ出せ

今の私は目隠しされ何も見えない状態、そこに両手足も縛れているけど、スキルや魔法を封じられていない。ということは、あの男性もレパードも鑑定スキルを持っていないということになる。


それか、単に私を4歳児だと思って、舐めてかかっているかだ。


水魔法か風魔法で、拘束されている紐を解くこともできるけど、あの男性とレパードなら私の魔力を察知して、こっちにすぐ駆けつけてくるかもしれない。そうなったら魔法を封じられる危険性もある。


特にあの男性、扉が閉まっているのに、私が起きたことに気づいてた。些細な変化であっても、絶対気づく。普通の魔法でダメなら、アイリス様とメイリン様の呪縛を解除させ、あの人を驚かせるほどの伝統魔法を披露して、ここを去ってやろう。


この状況を突破できる誂え向きの伝統魔法が、一つある。

誘拐犯の2人は[悪い子]だ。

アイリス様とメイリンさんの心にある[悪疫]を除去するんだ。


スキル[プログラム]はステータス内で実施するものだから、外に漏れることはない。


さあ、制作開始…の前に、ナイフを使って手足の縄を切ろう。



○○○



アイテムボックスの中に、ご護身用のナイフがあった。私はそれを取り出し、恐る恐る手探りで、短剣を触っていき、剣の柄を掴むことに成功する。


まず、足の縄を切ろう。

うんしょうんしょ、やった縄が切れた!!

次は、手だ。

両足が自由になったおかげで、手の縄の方も楽に切れたよ。


う~ん、凄い開放感だ!!


目隠しを外して、目が明るさに慣れてくると、ここは6畳ほどの部屋のようだ。窓も付いており、そこから陽の光が入ってきて明るい。この感じからして、まだお昼の時間帯なのかな。私は扉の先にいるであろう男性とレパードに気配を気取られないよう、そっと扉に耳を近づけ、聞き耳を立ててみる。


「レパード」

「なんだ、ケンイチロウ?」

「ユミルだっけ? 彼女…面白いね。今までに出会ってきた人間と違い、随分と個性的な子だ」


私のこと? 何を話しているのかな?


「個性的? なんだ急に?」

「だって…ほら…」

「うわ!?」


言葉が発せられたと思ったら、急に扉が開けられ、私は床に転がってしまう。慌てて前を向くと、そこは14畳くらいのリビングとなっており、長い黒髪を持つ15歳くらいの男性とブラックパンサーのレパード、そして壁際にアイリス様とメイリン様が立っている。


「な、なんでわかったの?」

「わかりやすいからだよ」

「意味、わかんない」


慌てている様子を、微塵も感じ取れない。

なんで、私が扉に張り付いているとわかったの?


「お前…どうやって…」


レパードの方は、少しだけ焦りが見える。


「縄が斬られてる。へえ~、そのナイフで切ったのか。さっきまで持っていなかったから、君は収納系スキルを所持しているようだね。4歳と聞いているけど、そういったスキルをもう使いこなせるのか。君、凄いね」


ケンイチロウと呼ばれた男性は、自分の素顔を見られているのに終始無表情で、全然焦りを感じさせない。むしろ、喜んでいるように見えるのは気のせいかな?


「アイリス様とメイリンさんに、何をしたの? あの2人、さっきから全然動かない」


「ああ、安心して。スキルで少し支配しているだけで、何の危害も与えていないから。レパードが解除すれば、すぐに元に戻るよ」


普通に、今の状況を話してくれたよ。こういう時って、黙っているものじゃないの? それにこの人の服装、何処か和風っぽい。この国の平民や貴族が着る服じゃない。


「お前、ペラペラ喋るな」

「別にいいだろ? この子の目に、希望を感じる。僕ら相手に、この状況を抜け出せる何かを持っているようだ。僕は、それを知りたい」


何で、わかるの!?


「はあ~どうやらそのようだな。また、お前の悪い癖が出たな。そのせいで、任務が失敗したらどうする? 最悪、依頼主が怒り、我々を殺そうとしてくるかもしれんぞ?」


「その時は、そいつらを皆殺しにすればいいだけのことさ。まあ、その心配はいらないけどね。今回の依頼人は、事前に僕の情報を収集し性格も理解してくれているから、失敗しても問題ないよ。それに…」


この人、抑揚もなく平然と[殺す]って言葉を使ってる。

多分…今の時点で人をいっぱい殺しているんだ。

本物の……殺し屋さんだ。


「それに?」

「誘拐してから3時間程経過しているから、僕たちの役目もほぼ終わったようなものさ」


役目って、アイリス様を誘拐することでしょ?

まだ、引き渡してないよ?


「まあ……そうだな」


どうしよう…ケンイチロウって人は、私の出方を嬉々として窺っているし、レパードの方も納得している。この状況で、伝統魔法を使っていいのかな? 


「迷うことはない、使ってよ。楽しみだ、僕に何を見せてくれる?」


心を見透かされているよ。 

この人からすれば、私のような幼女なんてすぐに殺せるはずだ。

本当に、心から楽しんでいるの?

ここまできたら、もう目の前で伝統魔法を使うしかない。幸い、この魔法は短い詠唱を終えた瞬間に発動するけど、問題はアイリス様とメイリン様との距離だ。2人に接触しないと、策そのものが機能しない。


何枚も上手な人たちに対して、上手くいくかな?


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