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36話 誘拐されちゃった

目の前は暗闇。

両手足は縛られたまま。

アイリス様とメイリンさんの気配を殆ど感じない。


誘拐されて危険な状況だけど、自分のステータスだけは目隠しされている状態でも確認できたおかげで、心に安心感が芽生えてくる。


うん、落ち着いてきた。

この状況で出来ることは、トーイやガルト様、リアテイル様に通信を入れること。

問題は、誰に通信するかだよね。


トーイやリアテイル様の近くは、ラピスが必ずいるから、通信すると気づかれてしまい騒がしくなる。ガルト様は聖域を離れられないけど、呪縛から解き放たれていることもあり、私の状況を聞いても、冷静な対応をしてくれると思う。


『ガルト様、聞こえますか?』

『ユミルか、どうした?』


今の返事から察すると、まだ誘拐の件を聞いていないのかな。もしかして、トーイやリアテイル様たちも、私が誘拐された事に気づいていないのかもしれない。


『緊急事態発生です。私……アイリス様絡みで誘拐されちゃいました』

『は? 誘拐だと!?』


突然言ったら、驚くよね。


『理由は不明ですが、誘拐一味はアイリス様の捕縛を目的としており、一緒に付いてきた私も何処かの小屋に誘拐されました。両手足を縛られ、目隠しもされて身動きできない状態です』


声を発する事なく相手に会話できるから、この使役契約による通信機能は超便利だよ。


『アイリス……[タウセントの神童]か。彼女絡みということは、研究関係か?』

『多分、そうだと思います』


ここから、どう行動しようかな? こう言った場合は、我々を頼れとガルト様から言われているけど、これから先もずっと頼ってばかりいると、孤独になった時に何も出来なくなってしまう。かといって今の私は4歳、どう頑張っても物理的な意味合いで、犯人達と渡り合えないし、人相手に長を召喚するわけにはいかない。


どうしよう?

どう行動すれば正解なの?


『誘拐か……問題あるまい。ユミルを、こちらへ召喚すればいいだけのこと』

『それはダメ!! アイリス様とメイリンさんを放っておけない!! 引き渡しまで1時間あるから、その間にアイリス様たちの居場所を探ってみる。この小屋の中にいるはずなのに、何故か気配を探れないの』


『落ち着け。まずは、誘拐される前の状況を我に教えてくれ』


いけない、ガルト様の言うとおり、一旦落ち着こう。私は深呼吸をして、ガルト様に誘拐されるまでの経緯を話していくと、彼はため息を吐く。


『災難のもとへと降り立ったかと思えば、次は災難の方からユミルのもとへやってくるか。そのレパードとかいう魔物、おそらくスキル[チャーム]を使ったな。あれで魅了された者はスキル行使者に一時的に支配されることもあり、本来持つ気配や存在感が薄れてしまう』


そうか、それで気配を察知しきれなかったんだ。


『強度の程はわからんが、アイリスを生かしているのなら、奴らの目的は彼女の頭脳だろうから、それほど強い力で支配していないはずだ。恐らく、軽い衝撃を与えれば、スキルを破れる』


それなら私の力でも、打ち破れるかもしれない。


『ユミルは、私の言いつけをきちんと守っていたことで、難を逃れたようだな』


『はい。【常日頃から、身体内にスキル[反射]を行使しておけ】、これがなかったら私も魅了されていました』


タウセントの街中で、目に見えるレベルでのスキル[反射]を行使できない。高レベルの人であれば、その現象を見ただけで、何のスキルかがわかるからだ。だから、毒・麻痺などの状態異常系、催眠・洗脳などの精神干渉系のスキルや魔法にはかからないよう、長から注意を受けていた。私は、それを忠実に守ったからこそ助かったんだ。


『うむ、良い心掛けだ』


今の間に、私の抱えている疑問を長にぶつけてみよう。


『ガルト様、レパードはアイリス様とレンタル契約したことで、今は彼女の従魔なの。なんで、主人に逆らった行動が出来るの?』


これが1番不思議なことだ。契約時、テイマーギルドの人からも、レンタルであっても、主人への暴力だけは固く禁じられている。それが、スキルによる行為なら尚更だよ。


『それは、簡単な話だ。〈二重契約〉』


二重? どういう意味?


『隠蔽に関しては、トーイ達から聞いているな?』

『うん、知ってるよ』


自分のステータスの中でも、相手に知られたくない項目がある場合、それを隠せるスキルがある。一つが[偽装]、鑑定で見られても、異なった名称にしているので、相手が誤認する。この偽装を更に進化させたのが[隠蔽]、項目そのものを消すことができる。


『偽装と違い、隠蔽を行使すると項目を消せるのだが、使いこなしているものは、その上に下地になっている項目と同種類の内容を載せることができる』


『どういうこと?』


『レパードの場合、使役契約だ。奴の真の主人は、今その場にいる男のことだろう。その名前を隠蔽で隠し、その上にテイマーギルドの者やアイリスの名前を入れることで、契約そのものは機能していることもあり、鑑定スキルで見られても怪しまれることはないのだ』


あ~~~そういう事か!!

それならテイマーギルドの人たちにもわからないよ。


『この場合、レパードの主人はその男のままであるため、アイリス達に逆らうことも可能だ。おそらく、アイリスは10歳の子供、学会へ行くにあたり、信頼できる人や魔物の護衛を雇うと考え、事前に冒険者ギルドやテイマーギルドへ侵入し、お前達を待ち構えていたのだろう』


そうなると、半分私の責任かもしれない。

元々、私の護衛を雇う予定だったもの。


そうなると、今回の犯人ってアイリス様の研究の競争相手で間違いなさそうだ。彼女を危険視しているのはわかるけど、自分自身の破滅だってありえるのに、なんでこんな事をするのかな?


『ユミル、気をつけろ。研究者達は、頭が切れる。学会を欠席させるため、二重、三重と策を張り巡らせているだろう』


そうなると、この誘拐が失敗した時に備えて、別の策が動いているってことかな? 相手が何を考えているのか不明だから、そっちの方はわからないけど、今はアイリス様とメイリンさんに合流して、ここを脱出しよう。


『そっちはわかんないから、脱出だけを考えるよ』

『どうするつもりだ?』

『あのね……』


このまま、あの人たちにやられっぱなしというのは嫌だ。

4歳児には4歳児なりのやり方で、あいつらを驚かせてやる。


思いついた策を話すと、ガルト様は豪快に笑い出す。


『その策、面白いな。その方法であれば、我々の正体も勘付かれることは絶対にない。ユミル、奴らに一泡吹かせてやれ』

『うん!!』


よ~し、反撃開始だ!!


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