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24話 冒険者として活動を始めます

ラピスと出会ってから、4日が経過した。


このたった4日で、両手で持ち上げるサイズだったラピスの身体は、母親リアテイル様からの魔力をご飯として食べたことで一回り成長し、灰色だった毛も緋色へと変化しつつある。初日はよろよろと立ち上がるのも必死だったけど、今ではゆっくりとてとてと床を歩いており、その回復力には目を見張るものがあり、見ている私たちも非常に癒される。それに、ラピスの羽が日増しにフワフワモフモフになりつつある。完全な健康体になったら、トーイの時のように抱きしめたい。


今は赤ん坊で不安定な状態だから、私も我慢しないとね。ラピスも元気になりつつあるせいか、教会から出ていこうとする私を見て、毎回『僕も行きたい!!』と宣言するのだけど、当然リアテイル様の許可は下りない。


「ユミル、僕も外へ行きたい!!」


ほら、今回も私が教会の外に出ようとしたら、気持ちを私にぶつけてきた。


「ダメです。今は、我慢の時ですよ。あなたの身体が年齢に見合うようになるまで、もう少しの我慢です。今出ていけば、身体を壊してしまい、すぐに倒れてしまいます。そんな事になれば、ユミルも悲しみますよ」


リアテイル様からのお叱りで、ラピスはしゅんと項垂れてしまう。弱々しかったあの声が、ここまで元気になるのは嬉しいけど、今は我慢の時だ。こうやってお叱りを受けた後、ラピスは必ず悲しげな表情をとり、『僕を連れてって』と潤んだ目で私を見つめてくる。子犬が飼い主に向かって必死に訴えているようで、私も連れていきたい衝動に駆られてしまうから要注意だ。


「ラピス、焦りは禁物だよ。今はいっぱい食べて、よく眠ることが大事なの。あなたのお母さんも、『いっぱい食べて必死に魔力訓練を行えば、2年分の成長が身体に順応して大きくなる』と言ってたでしょ? それまでは、我慢だよ。私も強くなって、あなたの足手纏いになりたくないの」


「それは…わかってるけどさ」


ラピスの成長速度が、非常に速い。


初日は母親のリアテイル様から魔力を少し貰っていただけで何も食べていないけど、2日目からはふやかした野菜類とかを食べ始めていき、3日目になると、その量が2倍に増え、母親の魔力をもっと欲しいとねだるようになった。


昨日の時点で、私の魔力量を既に超えているとトーイから教えられた時は、かなりショックだったよ。私もラピスも最弱だから強くならなきゃいけないのだけど、魔力量で既に追い抜かれているから、私自身も体力や魔力、スキル、魔法を鍛えていかなきゃだね。


「ユミル、僕はガルト様やリアテイル様と話し合うから、申し訳ないけど今日もカイトと2人で頑張ってね」


リアテイル様とラピスに出会って以降、トーイはカーバンクル族とフェニックス族の橋渡しの役目に徹している。


リアテイル様自身にはギンガ、キシリス、ドーズという側近の3人がいて、普段はスラム地区内の偵察と護衛を行なっている。3人はトーイと年齢も近いのだけど、人化すると何故か18歳くらいの男性になる。これに関しては個体差があるようだ。私も挨拶し、時折交流を図っているので、今ではお友達同士となっており、鳥になると、それぞれが異なる綺麗な羽色をしているので、すぐに区別も付く。強さ的にはトーイと同じくらいと言われたのだけど、彼女自身がどの程度強いのかがわからないこともあり、とりあえず【凄いです!! 3人はリアテイル様とラピスを守る守護騎士なんですね!!】と言ったら、言葉の響きが良かったこともあり、私のことを気に入ってくれた。


私とトーイは、この4人と出会った経緯をすぐに長ガルト様に通信で伝えると、彼も驚いたようで、100年間の情報が欲しいとリアテイル様に訴えたことで、今はトーイを経由することで毎日会議を実施している。[私が長をここへ召喚すればいいのでは?]と思ったのだけど、どうやら3日前に聖域にいる先代長が目覚め、健康に関しては問題ないのだけど、100年以上眠り続けていたこともあり、現状況を把握してもらうため、今はカーバンクルに起きた出来事を100年分説明しているところらしい。そこに、私とトーイが精霊フェニックス族と出会った報告を2日前に行ったものだから、渡りに船という形となって、現在互いの情報交換を行なっているのだ。


トーイは、私を護衛できなくなったことで、かなり心配していたけど、カイトさんが私と一緒に行動を共にしてくれることになったし、この街の治安が思った以上に良いので、不安ではあるけども、私たちの事情の一部を知るカイトさんに任してくれたようだ。彼がトーイと合流するまで、討伐依頼を受けず、採取依頼や雑用依頼だけをこなしていくと言ってくれたことが決めてとなった。


「カイト兄と合流してから、冒険者ギルドへ向かうね。行ってきま~す」


スラム地区には幽霊43人と、私と同年代の孤児が4人住んでおり、トマス爺が全員を紹介してくれたことで、私はその人たちとも仲良くなって、友達関係を築くことに成功している。孤児4人は私と年齢も近く、すぐに打ちけることに成功した。4人全員がカイトさんのことを慕っており、【カイト兄】と呼んでいるので、今は私もそう呼ばせてもらっている。


43人の幽霊さんたちは、前街長が既に処刑されていることもあり、半透明の身体以外は普通の人間と大差なく、全員が今の生活を楽しんでいる。リアテイル様の悩みも解決したことで、全員が成仏する日も近づいているけど、それはもう少し先の話になるかな。


リアテイル様の悩みを解決させた翌日、私とトーイはカイト兄の案内で冒険者ギルドへ行き、私だけ冒険者登録を行い、Fランク冒険者になった。冒険者には年齢制限がないけど、4歳の私は周囲から浮いているようで、みんなが私に注目した。そんな中でカイト兄を見つけたのだけど、なんだか元気がなかったので、私の方から話しかけてみた。


どうやら、切実な悩みを抱えているようで、私もトーイも困ってしまった。


彼はスキル[神経強化]を入手したことで、同年代の冒険者仲間たちに、パーティーに入れてもらえないかと相談したけど、誰も了承してくれなかった。カイト兄が嫌われているんじゃなくて、今のみんなが求めている者が、回復や補助魔法に長けた者だったからだ。


私とトーイの場合、回復に関してはスキルとポーション類で、補助に関してはスキルと魔法で補えるので、今は火力のある仲間が欲しい。今のカイト兄では火力不足だけど、その後の訓練次第で延びる可能性もあるので、仲間に引き入れた。私たちが了承すると、ここがギルド内であるにも関わらず、喜びを爆発させたので、こっちとしては少し恥ずかしかったよ。


ラピスの件を解決させて以降、カイト兄には私とトーイの抱えている事情を全て話しているから、私たちの力を知っている。精霊カーバンクルのトーイに認められたのが、相当嬉しかったのはわかるけど、事情を知らない周囲の人たちは、そんな彼を見て、あからさまにドン引きしていた。


カイト兄の持つスキル[神経強化]の方だけど、毎日回避訓練や感覚強化訓練を重ねているので、扱い方にも慣れたようだけど、目下の彼の悩みは攻撃力だ。魔力が皆無な分、こっちはどうしても一般人よりも劣ってしまう。今は、攻撃を強化させる筋力トレーニングと新規のスキルの習得を目指しているけど、焦りは禁物とトーイから言われているので、彼は素直に意見を聞き入れ、基礎訓練に励んでいる。私なりに考えていたこともあるけど、今は身体作りに専念してもらった方がいいかな。


その後、私だけ冒険者として活動するための初心者講習を2階の教室にて学び、無事に終わってから1階へ戻ると、カイト兄とトーイは既に周囲の冒険者たちと打ち解けており、大勢で談笑していたので驚いたよ。雰囲気も和やかだったので、初心者講習で起きたことを皆に言うと、多くの冒険者が大笑いして、私の頭を撫でてくれたっけ。


パーティー編成が12歳のカイト兄、見た目12歳のトーイ、4歳の私とかなり偏っているから周囲と打ち解けられるか気になっていたけど、それも杞憂で終わった。皆が私に優しく接してくれており、虐める人は誰もいなかったのだから。


さあ、今日もカイト兄と一緒に冒険者を楽しもう!!


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