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23話 起死回生の一手

どうする? 


存在が消滅しかけている魂をこの場に召喚したら、その衝撃に耐えきれず、そのまま消滅しかねない。


ここで寝ているふわふわもこもこの小鳥ちゃんと、お友達になりたい。

救済する方法はないのかな?


……何だろう?


今、違和感を感じた。

私の考えたことの中に、ヒントがあるのかな?


ここからでも、どこにいるのかもわからないラピスちゃんの魂を回復させる手段……そうか、わかった!!


『眠ちゃダメ!! 今まで一人ぼっちで寂しかったよね。もう、そんな思いを絶対させない!! これからは、あなたに毎日話しかける。私とお友達になろうよ。あなたは、もう1人じゃない!!』


お願い、応えて!!


『友達……僕がずっと求めていたもの……本当に毎日話しかけてくれるの?』

『約束するよ!!』

『僕を虐めたりしない? 見捨てたりしない?』

『そんな酷い事、絶対にしない!!』


あ、感覚でわかる。パスが、どんどん太くなっていく。


『僕は……僕の望む言葉を言ってくれたユミルと友達になりたい!!』


この言葉を聞いた瞬間、私とラピスちゃんのパスが太く強く繋がったのを実感する。やった、使役契約が成功したんだ!!


私の魔力と体力を、ラピスちゃんの魂に少し分け与える。


『あれ? 何だろう? 力が溢れてくる? なんで?』


疲労感が身体を襲うけど、これくらいなら大丈夫だ。


『私と、お友達になったからだよ。私の力を、あなたに分け与えたの。今から魔法を使って、あなたを私のもとへ口寄せするね』


『口寄せ? よくわからないけど、ユミルに会えるの?』

『うん、会えるよ。いっぱい、話し合おう』

『うん!!』


よ~し、口寄せ開始だ!!


「今から、ラピスちゃんを召喚します!! トーイ」

「フォローは任せて」


ラピスちゃんの魂を召喚して、本来の身体内へ戻す。

お願い、上手くいって!!


私が口寄せを発動させると、ラピスちゃんの本体が光り輝き、そこを中心となって、天と地に魔法陣が浮かび上がる。しばらく様子を窺っていると、天の魔法陣から白い球形のものが出現し、す~~~っと真下に落ちていき、本体の身体の中へと入るのを見届けると、半透明だった身体が急速に色を持つようになり、存在感を増大させていく。


そして、ラピスちゃんは弱々しいながらも目を開ける。


「あれ…ここは?」

「私がユミルだよ」


私が優しく告げると、小鳥さんが弱々しいながらも上を向き、私を見る。


「この感覚、わかる…わかるよ。君がユミルだってわかる」

「こっちにいる女性が、あなたのお母さんだよ」

「お母さん?」


リアテイル様は念願の我が子からお母さんと呼ばれたせいなのか、感激の涙を流しながら、小鳥のラピスちゃんをそっと抱き上げ、自分の胸付近で抱きしめる。


「ああ…やっと…やっと…我が子と話しあえた…私があなたのお母さんよ」


「この声、ユミルよりも前に、誰かに話しかけていた人の声だ。僕に、語りかけていたんだ。この温もり…僕の求めていたものだ…お母さん、お母さん…やっと会えた…やっと……お母さん」


「あなたの名前は、ラピスよ」

「ラピス…それが僕の名前…えへへ…いい名前だ…zzzzz」


ラピスちゃんは安心したのか、リアテイル様の胸の中で寝てしまう。少し焦ったけど、よく観察したら顔色も良いし、寝顔も何だか安心しきっているかのような安らかなものだったので、私たちはほっと胸を撫で下ろした。



○○○



「リアテイル様、許可を得ずに、使役契約を結んでしまい申し訳ありません」


私は、深々と頭を下げる。生まれる前に使役契約を結んでしまったから、今後ラピスちゃんは私に縛られてしまう。勿論、一生拘束するようなことはしないけど、やっぱり親に無許可での契約は良くないよ。


「頭を上げて。私は怒っていません。むしろ、感謝しています。あの時、使役契約によるパスの強化と譲渡でしか、あの子を助ける手段はありませんでした。それに、ラピス自身がユミルを気に入っていますからね。ただ、この子の身体は生まれてから眠っている状態でしたので、身体も虚弱で、魂もまだ完全に定着していません。しばらくの間は、行動を共にできないでしょう」


「それなら大丈夫!! この街に来たばかりで、当分の間はここを拠点に行動しますから、毎日ラピスちゃんとお話しできます」


「それなら、私たちと一緒に住みましょう。ラピスの身体がきちんと成長するまでは、結界を維持しないといけませんから、王都にいる聖女とこの街の長、冒険者ギルドのギルドマスターには、私から連絡を入れておきましょう。あの3人は信頼の置ける人間なので、今の状況を私から話しておきます。ただ、あなたの場合はカーバンクルの件を伏せ、打ち明けるのは[転生者]と[伝統魔法]だけに留めておきましょう」


精霊フェニックス族の長が言うのだから、その人たちは信頼できる人物なんだ。この街で悠々自適に暮らしていくためにも、私の事情を知り、私の情報を迂闊に喋らない協力者が欲しかったんだ。どの人物もすぐには会えないかもしれないけれど、いつか挨拶を交わしたい。


「お願いします!! これから冒険者登録をして、冒険者として活動していきますから助かります」


今日から私たちの住まいは、この教会になるわけだけど、結構ボロいから崩れないかが心配だよ。それをリアテイル様に言うと…


「安心してください。ここは古い教会ですが、私が崩れないよう、魔法で補強しています。奥には、小さなキッチンと3つの部屋がありますから、あなたたちはそこで寝泊まりするといいでしょう」


やった!!

部屋も3つあるのなら、みんなが別々に寝泊まりできるよ!!

問題も解決したから、これで気兼ねなくスラム地区に住める。


「それと…」


リアテイル様が、私の頭に触れて、何かを流し込んできた。


【エレメンタルスキル[源泉(C)]を取得しました】


「[源泉]? これは?」


「精霊フェニックス族の持つエレメンタルスキルです。このスキルを使えば、体力・魔力・病気・呪いといったあらゆるものを回復させる液体を、魔力を消費することで生成可能となります。あなたはCですから、[体力][魔力]を回復させる泉を自身の魔力から生み出せます。1種類を回復させる液体であれば、今のあなたでも精製可能ですが、両方を同時に回復させる液体ともなると、魔力消費がその分大きくなりますので、注意が必要です。詳しくは、ステータスを見るといいでしょう。1日の生成限度回数は3回、1回の生成量は1人分となっており、効果保持期間は7日です。有意義に使いなさい」


ふおおおお~~~、凄くレアなスキルだよ~~~~。

私が貰っていいの?


「あ、ありがとうございます!! 絶対に悪用しません!! 誰にもバレないよう、配慮します!!」

「ふふふ、カーバンクルたちが愛するのも理解できます。いずれは、フェニックスの加護も与えたいですね。私の権限で、スキルと使役項目を隠蔽しましたので、鑑定スキルによる露見を防げますよ」


ということは、私が人前で使用しない限り、絶対にバレないってことだ。

余程のことが起きない限り、使用は控えよう。


この街に来て2日目だけど、いきなり凄い経験をしちゃったよ。

よ~し、新たなスキルもGETできたし、これからも頑張るぞ~~~~。


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