4.妹、来襲
よろしくお願いします!
「来ちゃった」
「帰りなさい」
俺の部屋で、兄妹の会話が繰り広げられる。
「いーやーよー」
「帰るんだー。俺はお前をそんなワガママに育てた覚えはありません!」
「お兄様に育ててもらったんじゃないもん!」
「そんな屁理屈を言う子は帰りましょう!」
俺の部屋の押し入れで戦う兄妹。
「どうしたんだい?」
「あ、女将さん!こいつが妹で、こっちの世界に来たいって勝手に来たんです」
「初めまして。妹のソフィと申します。以後お見知りおきを」
それはそれは見事なお辞儀をした。
「あらあら、勝手に来るのはダメだよー。レディとしてもダメだねぇ」
妹はむっとしたようだ。
「貴女、失礼ね。私は王女よ?お父様は王様よ?お分かり?見ればすいぶんと貧相なお召し物のようで……。侍女はいないの?」
「コラ!女将さんになんて失礼なんだ!こっちの世界ではお前も平民だ。俺も平民として生活をしている」
妹の顔色が青白くなった。
「ウソ……ウソよね?お兄様が平民なんて……」
「事実だ。平民として生活ができないようだったら、こっちで生活などできない!そのために1年みっちり勉強するわけですし。そういうわけだから、お前は元の世界に戻りなさい!」
俺には妹が悪戯をするような笑顔が見えた。
「いやよ。楽しそうだから、1週間お邪魔するわ。お兄様の部屋はどこ?」
「ここだ」
「え?ここは物置じゃないの?」
「失礼だね。十分一人で生活できる広さだ。お前、帰らないんだろ?トイレはあっち。風呂はそっち。侍女いないからな。あー、お前のその服。こっちだとコスプレ過剰だな。女将さーん、プチプラでこいつに服を調達してくれないか?本当に迷惑だなぁ……。今着てる服は……そうだなぁ質屋に売り飛ばすか?装飾品は持って帰ればいいよな。はぁ、面倒……」
女将さんに背中をバシッと叩かれた。……痛い。
「お兄様に何を!」
「1週間世話するって決めたんだ。ぐちぐち言ってないで、さっさと準備だよ」
「……はい。まず、お兄様ってのは禁止。お兄様ではなく、『お兄ちゃん』だ」
「そんな……平民のような……」
「平民をやるんだよ、1週間」
「女将さん、こいつを店に出す?」
「うーん、難しいね。酔っぱらいの相手とか無理でしょ。あと、あんたが女に口説かれてるときとか乱入しそうだし?」
「ですよねー。せいぜい見学させますか?」
「乱入しないといいんだけどね」
「お世話かけます」
俺はこの時ほど自分が不甲斐ないと思ったことはない。あの時妹を帰すことが出来ていれば……
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