Regrets - 未練 加筆修正版 8
8.
"出会い1"
== 樋口眞奈 + 神崎 蓮==
「あっ・・あのっ・・」
「何か叫んでたようだけど、もしかして泣いてた?」
眞奈は恥ずかしかったけれど知らない相手だ、旅の恥はかき捨てじゃ
ないけど・・この先会わずに済ますことの出来る相手だと思うと
正直にコックリと頷くことができた。
「私は僧侶だ。まぁ、教会で言えば神父のようなものだな。ほら教会といえば
懺悔をする部屋があって見えないところで神父が懺悔を聞くだろ? あれと同じだと思ってよければ私に悩みを相談すればいい。泣きたい時はまたその土管を使って
くれていい」
「どうしてこんな所に土管なんてあるんですか?」
自分が泣くために入ったとはいえ、不思議だった。
「さぁ? どうしてだろう、私がここに来た時にはすでにあったので。
今度住職に聞いておくよ。懺悔とかしなくても気が向いた時に
寄ってみてください。実は大抵ここには私ひとりで、退屈してますから。
私の下手なお経や説法、あっ、掃除なんかも手伝ってくれるとうれしいし」
彼はそう言って、まるで遊びに来てという気楽さで誘ってくれた。
彼は神崎 蓮と言ってこのお寺の僧侶だと名乗り私の相談に乗ってくれると
いう。彼は私が思っていたより少し若かった。私はもう50才前後だと思って
いたのだけど、私より8才上の43才だという。僧侶だから?とても落ち着いた
感じがする。だけど話を聞いていると若いなと思った。
もう来ないわよ、そう思いながら私は帰路に着いた。
だが強がってもう行かないって思ってたのに、私は引き寄せられるように
そのお寺をちょくちょく訪ねるようになったのだった。