第7話 先生は雇われたい
期待のシングルマザーが出ますがまだ情報だけです。
学園外からの依頼がたくさん来るが、無料なのでなるべく中身を厳選して観ている。
漏れた人は起業して有料で良ければよろしくお願いしますって返事してるけど、有料でもいいって言ってくれるかな?
料金形態も考えないと。
「圭祐くん、変わった依頼があるわよ」
「どれどれ?」
『私は33歳の日本人女性です』
日本人女性って言い方からして変わってるな。
『実はすごく惚れっぽくて困っています。今まで4人の男性と付き合い、妊娠しては逃げられています』
おいっ!
『また好きになった人が出来たのですが、今度こそ本当に私の運命の人でしょうか?』
これ、恋愛占い相談みたいだな。
「とりあえず、返事をして情報をもらおう」
「わかりました。じゃあいつものを送っておきますね」
恋愛相談向けのテンプレートを文乃さんに送ってもらう。
翌日。
「圭祐くん!すごいの来た!」
文乃さんに急かされて画面を覗き込むと、昨日の惚れっぽくい女性からの返事だった。
「嘘だろ?」
久野叶羽 33歳 日本人女性
娘 高校1年生 ニーナ(ロシア人とのハーフ)
娘 中学3年生 シャル(フランス人とのハーフ)
娘 小学6年生 ビアンカ(ブラジル人とのハーフ)
娘 小学2年生 ノーラ(エジプト人とのハーフ)
「すごいでしょ?」
「確かにな。すると五人目は…」
今好きな相手 メイソン・ブラウン(オーストラリア人) 19歳
「やっぱり外国人…って若っ!」
「これ、すぐに会った方が良くない?」
「そうする」
今日は火曜日だから、メグと出かけられる週末まで待つと遅いよな。
「よし、事務所に来てもらおう」
「会社に来る初めてお客さんね!局長としてしっかりもてなすわ!」
「そうね!先生も頑張るわ!」
「奈美先生?」
「先生はここを貸してくれているけど、部外者ですよね?」
それを聞いてガックリとする奈美先生。
「だって、だって、私だって起業のことを少しは手伝っている訳だし、出来れば圭祐くんが卒業した時に雇って欲しいなって」
「「えええっ?!」」
そんなこと考えていたのか。
「先生、はいこれ。どれか選んで」
文乃さんが試作中の心理テストカードを先生に見せる。
「これ」
「どうしてこれを選んだの?」
文乃さん、俺の真似をしてるな。
「二つの星が寄り添ってるから、仲がよさそうだなって」
「先生のその気持ちは『嫉妬』で、私たちを羨ましがっているだけですね。仕事はやめない方がいいですよ」
「文乃さん!適当なこと言わないで!」
「いや、驚いた。だいたい合ってる」
「うそっ!」
「やった!」
試作品のカードの裏には『暗示 恋人 嫉妬 保護』とか書いてあってそれを読んだのだろうけど、なかなか上手い『見立て』だ。
こうやって従業員の人がそれなりに観れるようになれば、ネットだけでもある程度の相談に乗れるかもな。
そのためにはカードを全部パソコンに取り込んで…それは後回しだな。
起業はまず目先の準備からだ。
それよりも先生のことも解決しないとな。
「文乃さん、羨ましがっているからって、転職していけないってこともないぞ」
「え?」
「本当?!」
奈美先生、嬉しそうだな。
「元々起業したらって言ったのは私だし、もっと圭祐くんの力になりたいのよ!」
「それは嬉しいけど、成功するかどうかは分からないぞ」
「大丈夫!だって、私は圭祐くんのおかげで今があるんだから!」
「えっ?」
「文乃さんもそうでしょう?」
「う、うん。圭祐くんのおかげでコンテストにも出れたし、練習時間なくて賞は取れなかったけど、悔いはなかったわ」
「だから」
「「私たちをずっとそばに置いてください!」」
練習もしていないだろうに、そんなにきれいに言葉を合わせられるなんて。
本気なんだな。
「分かったよ。これからもずっとそばに…ちょっと待って。これって何だか」
「あ…」
「あっ…」
二人の顔が真っ赤になる。
「違うの!これは従業員としての意気込みで!」
「局長としての気持ちなの!他意は無いの!」
「局長?」
「え?うん、そうなの。もう役職貰ってるの」
「えええええええ!!」
何故か防音の音楽準備室からも漏れ出しそうな大声を上げる奈美先生。
さすが声楽部の顧問。
「わ、私も!私にも役職ちょうだい!」
やっぱりそうなるのか。
「先生の役割が決まってからでいいですか?」
「文乃さんは何の役割で局長なの?」
「高校生以下の事務方の総括です」
ドヤ顔でふんぞり返る文乃さん。
「私は、私は、えっと…」
「奈美先生の特技とかなんです?パソコンとか出来ます?」
「無理」
できるならカードの取り込みとか頼みたかったんだけどなあ。
「特技は料理以外の家事です」
先生、丁寧語になってるよ。
そんなに自信無さそうに言わなくても。
あと、料理苦手なんだ。
「奈美先生のおうち、お部屋とかきれいだったものね。そういえばいつも店屋物を取ってくれてたのは…」
「料理だけは駄目なんです」
「目玉焼きが爆発するとか、黒い物体ができるとか?」
そんなマンガみたいなこと…あるのか?
「じゃあ…明日持ってくるから食べてみて」
「わかったよ」
「私もいい?」
「文乃さんのも作ってくるわ」
「違うわよ。私も作ってくるの」
「ええっ?!」
「比べないと分からないよね?」
「そんなあ、比べられたくないわ」
そして明日のお昼は二人のお弁当を食べることとなった。
「あと、この依頼人にも連絡しておいてね。いつ会えるか」
「わかりました」
さて、どんな人なんだろうな?
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