第6話 社員希望者続出
第5話をまったく違う作品と間違えたので差し替えてあります。
不快な思いをされた方、申し訳ございませんm(*_ _)m
有名アパレルブランドの社長である中田舞香が選んだカードは『花咲く湖畔』。
「どうしてこれを?」
「だって鮮やかで、賑やかそうでしょう?」
このカードには『見栄』の暗示がある。
それを好意的に感じてるのか。
「圭祐さん、こちらを」
メグが追加のカードを探し出して手渡してくれる。
これは更なる深層心理を調べるための『第2の心理テストカード』だ。
そもそも心理テストカードは現時点で200枚以上もあり、最初は大雑把な把握ができる『第1の心理テストカード』からカードを選んでもらう。
それ次第で『第2の心理テストカード』を構築して選んでもらうのだが、この構築が手間取るので、必要以上に多いカードを示すことになって必要無い言葉を引っ張り出したりしてしまう。
メグが居れば今選んだ『見栄』と同じ暗示のカードと同じ暗示のカードと、彼女が言った『鮮やか』や『賑やか』と言った暗示のカードを集めて『第2の心理テストカード』を素早く構築できる。
これが非常に助かる。
「じゃあ今度はこちらの中から選んでください。賑やかそうなのはどれで、どの部分にその事を感じますか?」
「これね。素敵な建物がいっぱいでしょう?」
なるほど。
また、さっきと同じく『非生物』を選んだのか。
「お子さんたちとの会話って普段どんなこと話してます?」
「なるべく受験のことは言わないようにしてるわ。学校で何が楽しかったかとか、友達と何話してたかとかね」
「それっていつも同じような返事が来ません?」
「そうなのよ!答えてはくれるけど、何となく同じような返事なのよね」
「それは舞香さんが『親子らしい模範的な会話』をしようとしているからです」
「えっ?!」
明らかに動揺する舞香さん。
「だ、だって変なこと聞いて娘たちに嫌われたくないし、模範的な会話のどこが悪いの?」
「娘さん達、いつも朝ごはん食べきりますか?残したりしませんか?」
「それは…自分たちで片付けてくれるからよく見てないわ。朝は忙しいもの」
「いつもと違う様子があったら気づいてますか?」
「気づいているつもりよ」
「ここ最近で気づいたことは?」
「最近はいつも通りよ…のはずよ」
「学生ですから毎日何かあるんですよ。その何かにあなた自身が気づいて会話の材料にしないと、事務的な返事しか帰ってきませんよ」
ハッとした表情をする舞香さん。
「会社を売って子作りしてもいいですけど、その前にもう少し娘さんたちをよく見る時間を作った方がいいですよ」
「あ、あ…」
がたっ!
舞香さんは立ち上がって俺の手を握る。
ひんやりしてるけど柔らかいな。
「ありがとう!わかったわ!そうしてみる!」
「それと、会社は売るよりひとまず経営を任す程度で長期の休みを取ったらどうです?きっと娘さんたちは舞香さんの仕事を誇りに思っているでしょうから、簡単に売ったりしたら失望するかも知れませんよ」
「そうかしら?」
「お母さんの仕事より自分たちのそばにいてくれる方が嬉しいって言うなら別ですけど、そのくらいは直接聞いてみたらどうです?」
「そうね!ありがとう!あなたって最高のカウンセラーだわ!」
帰りの特急車内にて。
「メグ、ありがとうな」
なでなで
「圭祐さんはメグのこと、必要ですか?」
「メグが居ないと困るな」
「嬉しいです」
コトンと頭を持たれさせてくるメグ。
そのままメグは疲れたのか寝息を立て始めた。
ホントに可愛いやつだな。
翌週の土曜日。
今度は中田舞香さんの娘、高校3年生の雪美さんから連絡があった。
『母が世話になりました。私の相談にも乗ってください』
というわけで今度はメグではなく文乃さんが付いてきている。
相手が高校生なので文乃さんの方が助手に適任と思ったからだ。
「この仕事で遠出って初めて!」
「はしゃぐなよ」
「わかってます。メグより大人っぽい所をちゃんと見せますから」
「期待してるよ」
指定席の隣で文乃さんの綺麗な声を聞くと、それだけで癒されるな。
待ち合わせ場所はこの前に中田舞香さんに会った場所の近くのファミレスだ。
「初めまして。私が中田雪美です」
雪美さんは黒くて艶やかな長い髪をした正統派美少女っぽい女子高生だった。
「それで相談事は?」
「あなたのせいで母が変わってしまったんです」
「そうなんですか?」
「いつも同じような事しか聞かなかったのに、私たち姉妹のことをよく見てくれるようになって、話しやすくなったんです」
なんだ、クレームかと思ったよ。
「それで、『来年くらいに結婚してもいい?』って聞かれたんです」
会社を辞めるとかじゃなくてそっちを聞いたのか。
あれ?結婚はしないはずじゃあ?
「好きにすればって言ったんですけど、どうして来年かって聞いたら『相手がまだ18になってないから』って」
ん?
「『私の事こんなにわかってくれる人なら、きっとあなたたちも幸せにしてくれるわ』って言うのよ」
「そ、そうですか」
「当然、誰のことを言ってるのかか分かりますよね?」
「私だとしたら光栄ですけど、その気は無いので」
「でしょう?まったく何考えているのかしら?」
「相談ってその事でしたか。依頼人とは個人的な関係は持ちませんのでご心配なく」
ぴくっ
あれ?
今、横の文乃さんの機嫌が悪くなったような?
「あっ、居た居た」
「七海?どうしてここに?お母さんまで?!」
いきなり中田舞香さんと、中学3年生の七海さんがやってきて席に座る。
七海さんが雪美さんの隣りに座るのはいいとして、どうして舞香さんは俺の隣に来るの?
「お母さん!依頼人とは個人的な関係持たないって言ってたから離れて!」
「そうなの?でもね、二人とも私が会社を売るのに賛成してくれたでしょ?」
そっちも娘たちに聞いていたのか。
二人とも会社を売るのに賛成するとは思わなかったけど。
「それでね、圭祐さんの会社の立ち上げを手伝うことにしたの」
「「「ええっ?!」」」
俺と文乃さんと雪美さんの声がハモった。
「同じ会社の従業員なら個人的な関係を持てるわよね?」
「そんな下心丸出しなのは恥ずかしいからやめて!」
「起業の経験者だから役に立つし、宣伝力もあるわよ。どうかしら?」
「うっ」
思わず採用!って言うところだった。
「私もそこで働きたいです。従姉妹もカウンセリング受けていいアドバイス受けられたって喜んでいたし、うちの学校でも評判なんですよ!」
「七海さんの気持ちは嬉しいけど、まだ中学生だから」
「圭祐くん、メグみたいに」
「あっ、こら」
「もしかして、この前来ていた秘書の方、大人っぽかったけど中学生だったの?」
「いえ…小6です」
あ、中田一家が固まってる。
「労働基準法的には確か中学生なら軽微な仕事は許されるわよね」
「今は『見習い』というか『お手伝い』のレベルで、勤務じゃないから。それにまだ起業前だからね」
かなりグレーなんだよな。
来年になったら正式に採用するつもりだけど。
毎回メグを連れていかないのはそういう理由もあるんだ。
でも、難しそうな相手ほどメグが役に立つんだけどね。舞香さんの時みたいに。
「何か言われても私なら守ってあげられるわよ」
「うっ」
「ねえ、採用してくれないかしら?」
って胸を押し付けてこないでっ!
娘さんたちがみてるからっ!
「お母さん、年齢考えてよ!2倍超えてるのよ」
「もし舞香さんを雇ってもそんな関係にはならないですよ」
「ダメ?」
「駄目です」
「じゃあ、諦めるわ」
あら、あっさりと?
「でも、雇ってくれるわよね?」
「舞香さんさえ良ければ」
「私も私も!」
「七海さんは高校どこ受けるんです?」
「稲葉学園の高等部です!」
うちの学園じゃん!
「ちょっと七海、いつの間に?」
「さっき決めたの。レベルも丁度いいし、実は友達も誘ってるの!学園に入ったら圭祐先輩の会社に入らせてもらおうって!」
そんなに雇えるかな?
会社の規模を考え直さないと…
「会社の規模を考えたくなった?それなら尚更私を雇いなさい」
「…お願いします」
「それで雪美は?」
「私は大学受験で頭がいっぱいだから!合格したら遠くに行くから無理だからね!」
ふんっ!って感じだな。
嫌われちゃったかな。
数日後。
舞香さんからメールが届いた。
『雪美ったら、志望大学を三笠大学に変えたのよ』
この稲葉学園の近くの?
『レベル高いから頑張らないといけないけど、社員枠空けておいてあげてね。もちろん七海と友達3名のもね』
友達って3人も?!
『会社の整理が終わってから手伝いに行くから、しばらく待っててね(はーと)』
(はーと)って諦めたんじゃなかったのか?
絵文字やカタカナじゃない所が軽い冗談っぽいな。
「依頼人でも従業員ならいいんじゃないですか?そうでないと私…」
「文乃さん?」
「私、新入社員と恋愛出来ないでしょう?」
「そうか。それは困るよな」
「ね。だからいいわよね?大丈夫、舞香さんからは私がしっかりガードするから」
「おお、頼もしいな」
「それでね、私もメグみたいな肩書き欲しいな。1番だったはずなのにこのままだとどんどん追い抜かれそうだもの。ね、お願い」
上目遣いでねだるとか、ドキッとするじゃないか。
「じゃあ…『局長』で」
「なんだか凄そう!どんな役目なの?」
「高校生以下の事務方全員を束ねてもらうよ。できる?」
「任せて!」
とても役職名が『御局様』から思いついたとか言えないな…。
お読みいただきありがとうございます。