第15話 特技から新しい仕事を探してみよう
順番を間違えました!
申し訳ございません!
この話を割り込ませていただきます!
喫茶店で目の前の美少女から睨み付けられてる。
無言のまま、まだ睨んでる。
…あれ?意外とこういう表情もいいかも?
俺ってMっ気あったのかも。
じっと一ノ瀬さんを見つめていたら目線を逸らされた。
「な、何よ。そんなに見てこないでよ」
「いや、睨まれたのはこっちだから」
「じゃあ、何で目を逸らさないのよ!」
「何だか心地よくなってきて」
「え?睨まれるの好きなの?先生ってそういう趣味?」
「睨まれて喜ぶとかあり得ないけど」
「じゃあ、どうしてよ」
「言えない」
「教えて」
「この前のカウンセリングの時に、むやみに誉められるのが嫌いって」
「軽薄な感じが嫌なだけだから、真面目に言ってくれるならいいわよ。え?何を誉めるの?」
「その切れ長な目で睨まれると、最初は怖いと想ったけと、何だか目が離せなくなってきて」
「そ、そう?」
「強く睨んでいる分、瞳の奥まで覗けそうな気がして…一ノ瀬さんの瞳って綺麗だよね」
「軽薄なのは駄目だって言ったでしょ?!」
「だから、そのラインがわからないんだって。普通に誉めたつもりだけど」
「それなら、その、ありがと」
やっと睨まなくなってくれたな。
「それで、かほりってここ入って来るのよね?ああ、どうしよう!三年生の出場がピンチだわ!あの子、中学生の大会記録でもうインターハイ優勝レベルなのよ!」
何それ凄い。
「何だかごめん」
「別にいいわよ、先生のせいじゃないし。そうだわ!それならなおさら先生の会社に入って、かほりより役に立つところを見せてあげるわ!」
「じゃあ、他の特技は?」
「あとは手芸かな」
「えっ?」
「意外だった?このバッグも自作なのよ。このアクセサリーもよ」
「えっ?!すごい!」
「でもそういうのってカウンセリングの仕事に関係ないわよね」
「そうでもないよ。そういうところから新しいことを考えていけるから」
「手芸でカウンセリングできるの?」
「ちょっとそういうのとは違うかな」
俺が思い付いたのは『護符』。
実は占い師をしていたときに、何度も頻繁に依頼をしてくる人に『護符』を渡して精神の安定を図ってもらったことがある。
「カウンセリング受けてもそれだけでは不安って人いるでしょ。そういう人に何か精神が落ち着くような『癒しグッズ』とか渡せないかな?」
「それいい!私、それを手伝いたいわ!」
興奮して身を乗り出してくる一ノ瀬さん。
「これ、見て!」
彼女はバッグから小さなぬいぐるみをいくつか取り出す。
「こういうのどう?」
「もしかしてこれも自作?」
「うん!可愛いでしょ!」
確かに猫っぽくて可愛いけど、猫じゃないよな?
翼生えてるし。
「これ、なんて生物?」
「…」
「え?何?」
「妖精…」
一ノ瀬さんは恥ずかしそうにそう言う。
「なるほど!そんな感じだね!」
「笑わないの?」
「何で?可愛いし、癒されるからすごくいいと思うけど」
「本当?」
「うん。じゃあ、一ノ瀬さんはグッズ担当で」
「でも一人で大丈夫かな?」
「もし同じのをたくさん作ることになるなら、舞花さんに聞くから」
「まいかさん?」
「中田舞花さん」
「え?ええええっ?!アウト・ボックスの社長じゃないの!知り合いなの?!」
「大声出さないで。ここだけの話、うちに入社予定」
「えええっむぐっ」
これ以上叫ばれる前に一ノ瀬さんの口を手で押さえた。
唇やわらかっ!
「ご、ごめんね。でもどうしてそんなことになってるの?」
「彼女も依頼人で、会社を手放してうちにくることになったんだよ」
「何がどうなったらそうなるの?もしかして中田舞花社長には時々会ってるの?」
「今日も夕方に起業のためのアドバイス受けに行くけど」
「行きたい!モデルの仕事でアウト・ボックスの衣装を提供してもらった時、中田舞花社長が忙しくて会える予定がキャンセルになったのよ。私、あのブランド大好きだから色々話したかったのに!」
凄い興奮してるな。
「連れていってもいいけど、雑談はできないかも知れないぞ」
「それでも会えるだけでいいから!」
「あと、文乃さんも行くよ」
「かまわないわよ…ねえ、さっきからみんな下の名前で呼んでるのね?」
「下の名前で呼ぶのが好きだからね。一応さん付けしてるし、嫌がられたらやめるつもりだけど」
幸い嫌がられたことってないんだよな。
「じゃあ、私も梨華さんって呼んで」
「わかったよ。俺のことは圭祐くんでいいよ」
「け、けいすけ、くん?」
「何で言いにくそうなの?」
「男の子の名前呼ぶのに慣れてなくて」
「持尾くんでもいいよ。先生ってのはやめてね。何だか恥ずかしいから」
「社長は?」
「今のところ秘書にも名前で呼ばせるくらいだからやめて」
「秘書って文乃さんのこと?」
「いや、この子」
この前の集まりで撮った集合写真を拡大して見せる。
「どこの高校の子?もしかして大学生?キリッとしててすごく秘書っぽいね!」
「う、うん」
小6って言いづらいし、驚かれてまた大声出されると困るから、人目のないところで教えることにしよう。
ご迷惑おかけしました。




