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650字短編

花火 (テーマ・悲しみ)

作者:

 蒸し暑さから解放され、渇いた風が吹き抜ける夜。蝉が夏を繋ぎ止めようと盛大に鳴いていた。

 祭り囃子に明るい声が虚しく響く中、私は星空を見上げていた。


 私は雪深い山奥で生まれた。顔にシワを刻んだ職人堅気のお父さんに見守られ、ゴツゴツした手で優しく育てられた。


 そうして順調に成長した私は、今日初めて町に来た。


 町は大きかった。高い建物があり、大勢の人がいる。山とは違って動物たちの声はない。代わりに自動車や人の声がする。

 正直、五月蝿すぎた。ここで生活しろと言われたら無理と答える。それぐらい私には合わない。


 夕方になり、町の外れにある神社に連れてこられた。緑が多くて虫の声がする。


 私が安堵していると、お父さんがねじり鉢巻をした人と話し始めた。途中で私の頭を撫でながら、自慢の子だと紹介する。

 私はちょっとくすぐったい気持ちになった。


 それからお父さんは祭りの準備をする、とどこかへ行った。することがない私はボーとしたまま待っていた。


 太陽が沈み、ちらほらと星が顔を出してきた頃、お父さんが帰って来た。その顔は笑顔なのだが、どこか影を落としている。


 その表情で私は悟った。ついにこの時がきたのだと。


 お父さんは私を愛おしそうに抱き上げると、舞台へと連れていった。


 私はここから飛び立つために生まれた。さあ、覚悟は出来ている。私の勇姿を目に焼き付けるがいい。


 爆音とともに空高く舞い上が……らない。ダメ、このままだと……


 阿鼻叫喚と火の粉が舞った。

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