双剣使いの魔王ダラク
私は目覚めると見たことの無い場所にいた。目の前には道化師みたいな服装をした人が立っている。いや、道化師で間違いないか。私が目覚めたのが分かると道化師みたいな人が話し始めた。
「君はこれから異世界に行くのです」
「そうか。記憶にないけど私は死んだんだな」
「いえいえ、これは異世界転移です」
なるほど。私は死んでいないのか。てことは戻れるかもしれないってことか。まあ退屈だから戻らなくてもいいんだけど。てか異世界転移なのに異世界転生みたいな感じになっているのは何故なのか? まあこれは気にしないでおくか。
「そういうことなので今から言う五つのうちのどれか一つを与えましょう」
「なんだ?」
「転移先の言葉や文字が分かるようになる記憶、転移さ」
「その記憶で」
「即答ですか」
言葉や文字が分からないと話にならない。これで決まりだ。武器とか金とかは向こうでも手に入るし。
「それでは転移開始です!」
私は見たことの無い場所から小島に移された。海を挟んだ先に町が見える。そこに行けばいいのだろう。服のままだが泳いでいくか。
泳ぎ終わって町の砂浜に上がった。町の看板には異世界の文字が書かれているが、私は異世界の言葉や文字が分かる記憶を貰ったので読むことが出来た。この町の名前はオワタウンか。変な名前だな。
「貴様は異世界の者だな」
「ん?」
黒い服に黒いマントを羽織った長身の男が話しかけた来た。
「我の言葉が分かるか?」
「ええ」
「そうか。なら教えてやろう。我が名は魔王ダラク。マサル国の支配者だ。そして貴様をこの世界に来させたのはクガワの里のバンバだ。奴は無駄に異世界の者を送り込んでくるのだ。そして我はバンバのよって来た異世界の者を葬っているのだ」
言葉が分かるので言っていることが分かる。つまり、私の前に立っているのが魔王のダラクで、この国がマサル国で、私をこの世界に転移させたのがクガワの里のバンバということか。
「話しは終わりだ。覚悟しろ!」
「マジかよ」
ダラクは黒い双剣を出して向かってきた。異世界に来て早々魔王に会ってこの世界のことを少しだけ教えてもらった後で殺されるとか、理不尽だな。だがダラクは高を括っているだろう。何せ魔王にとってただの人間は下等生物にすぎないのだから。
「そこだ!!」
「なにっ!?」
ダラクの攻撃は単純で分かりやすい。ダラクの攻撃を避けて腹を思いっきり殴ってやった。
「がはっ!!? ・・・貴様、やりおるな。なら手加減する必要は無さそうだな!」
これはもう攻撃はしない方が良さそうだな。これ以上は自殺行為だ。とりあえず逃げるか! 北の道に行こう!
「待て! 貴様! 逃げるつもりか!?」
双剣持ってる奴に待てと言われて待つ奴がいるかよ。そんなの死にたがりだ。私の方が走るのは速いようだな。これなら逃げきれそうだ。
逃げていたら何も無い土地に着いた。振り返ってみるとダラクは追ってきていない。一安心し、この土地を見回ってみる。多分、かつては町があったのだろう。北に橋があるが崩壊していて先には進めない。川に水が流れていないので進めないということは無いが、面倒だから別の道に進むか。西の道には進めるな。