運命の人がブサイクだと分かった瞬間の絶望感は異常
俺の名は、不知火吉彦 (しらぬい よしひこ)。
俺は運命の糸が見えるんだ。
なぜかは知らない。
俺はこの力を使って、色んな奴を助けてやった。
色は種類があって、赤は結婚したら幸せになれる相手。
青は苦手な相手。
緑は恋人か、友達。
ピンクはただのSEX繋がりか、片思い。
灰色は虚しさ。
黒は嫌い、憎しみ。
まあ単純にざっと言ってみた。
手にはない。
頭や、胸辺りから出てるんだ。
何本もね。
そして・・俺は今年社会人になりました。
就職した先で出会った女性に俺と繋がった赤い糸が見える。
そう・・もの凄いブッサイク!だったんだあああああああああああああああああああ!!。
何故だああああああああああ!?
神様ああああああ!?
どうしてですか神様ああああ!?
いくらなんでもあれは・・〈チラ〉あれはないないわああああ・・うう・・どうしてえ・・何度も友人を助けたじゃないですかあああ・・この仕打ちはあんまりですよおお・・。
つか・・全くタイプじゃないってか・・まじで不細工過ぎだろおお!?
はあ・・。
言い忘れたが、この赤い糸の人は一人に一人しか居ない。
なぜかは知らん。
好みのタイプじゃないと友人から相談された時も、ネットとか、出会い系とか探してやったが・・あ、写真や画像でもOKなんだ・・だが・・見つけられなかった。
俺の相手が・・まさか・・あんな・・あんな・・嘘だろおいいい・・やっべえ・・はあどうしよ。
不細工吉田さん「あ、不知火 (しらぬい)さん、これから宜しくね~うふふ」
不知火「あ・・はい(絶対に嫌だああああ、緑、緑の人は?いませんかあああ!?緑は恋人止まりだけど、もういいやそれで)」
いた。
不知火「(おお!?いたいたあ!)」 ブースを覗く。
美人だった。
不知火「(おっほおお!?やっべええ!?凄い美人だはあああ!?逆にしてくれええ!糸交換だろこれえ・・まあ・・無理なんだが・・)」
その後。
ちらほらアタックしてくる男達を笑いながら躱し続ける女性。
モテるなあ・・と思いながら・・話しかけられない不知火。
友達のように吉田さんとは話せたが・・それは緊張しないからであった。
ある時、女性から小さな紙を渡された。
〈今晩食事どう?〉
不知火「・・は?・・・・え?・・は?」 見ると・・もういない。
不知火「(いやったあああああああああああ)」 席で静かにガッツポーズ。
その後。
会社に内緒で付き合い始め、同棲を始めた。
お互い最初は・・キチンとした生活だった。
しかし、お互いズボラな性格だった事が判明。
汚れた皿は流し台に山積み。
お菓子、カップ麺はそのまま。
ゴミ出しは予定日を忘れる毎日。
汚く散らかった部屋でするいちゃいちゃは・・もう・・何か・・憂鬱になってきた。
この人は・・やっぱり・・違うのかな・・と思って来た。
しかし・・あの不細工よりはマシだ、ピンクよりましだと、出来るだけ思い直し、片付ける努力をするようになった。
が。
不知火が片付け、女性が散らかす。
金曜日。
不知火が仕事から帰宅。
早めに帰宅した女性が脱ぎ散らかし、お菓子袋が散乱、アイスを食べている。
不知火「(不細工よりマシ・・不細工よりまし・・)」
そう思い、掃除している時だった。
女性「あ!これも捨てて?〈ポイ〉」アイスの袋を不知火が離れてるのに投げた。
女性と不知火の間にアイスの袋が落ちた。
女性はスマホゲームをピコピコ。
不知火「う・・うう・・ん”・・はあ・・」
女性「ん?あははは、なあにいい?泣いてんの?あははは、どしたん?〈ピコピコ〉」
不知火「もう・・終わりだな・・」
女性「は?何が~?」
不知火「・・ここは俺のアパートだ・・出て行け」
女性「・・は?・・ちょ・・は?・・何言ってんの?意味分かんない・・〈ピコピコ〉」
不知火「・・出て行け・・」 バック、枕、パジャマ、歯ブラシ、化粧品を大きい袋に詰め込む。
女性「は?ちょちょ何してんの!?どうしたの急に!?」
不知火「急に!?・・急にだと!?」
女性「・・分かった・・片すよ・・それで文句ないっしょ!?大袈裟なんだから」 嫌々っぽく片付けを始める。
不知火「・・そういう・・そういう問題じゃないんだよ・・〈ギシ〉」ソファに座る。
女性「は?んじゃ何?」
不知火「・・一緒に・・協力しようって気持ち・・ある?」
女性「・・あるよ・・」
不知火「嘘だ!お前は・・寄生する男が欲しいだけだ!・・うう・・そうなんだろ?・・はっきり言ってくれ・・頼む・・頼むから・・本当に・・正直に言ってくれ・・」
女性「・・」
不知火「・・家賃も払ってくれないし・・スマホ代だってここ最近は俺が代わりに払ってる・・でも・・それは別にいいんだ・・用入りな時くらい誰だってある・・でも・・せめて・・俺が・・財布や・・寄生場所じゃないっていう・・確信くらい・・欲しがっちゃいけないのか?・・」
女性「・・なあに?SEXしたいの?昨日もしたじゃん?・・はあ・・まあ・・別にいいけど?・・ほら・・やろ?さっさとやって・・気分を落ち着かせよ?ね?」 キスをしてくる。
不知火「・・話し・・通じないんだな・・はは・・俺の話しを・・性欲で片付けるって・・ははは・・」
涙がー・・。
女性「はあ・・んじゃあ何?・・もう・・意味分かんない・・はあ・・限界っぽいね・・もういい・・別れよ!お互いの為にそれがいいよ、んね?分かった・・元カレと、寄り戻そっかなって考えてたし・・じゃあね・・あ・・必要な分だけ持っていくから・・後は捨てといて・・んじゃ〈ガチャ・・バタン〉」
不知火「・・う・・う”う”あ”あ”あ”あ・・あ”あ”あ”あ”あ”あ”・・」 布団に顔を預けた。
月曜日。
ひどい顔で出社。
心配してくれた吉田さんと、他数人の男女と飲み会。
吉田さん「はい、ほらほら、野菜食べな?ビタミン不足凄いよ?」 野菜を取ってくれた。
不知火「・・ありがとうございます」
野菜を食べながら・・改めて吉田さんを見る。
しっかりした人という印象。
他の人とも笑い合い、ブスと言われれば、鼻を手で上げ、豚は綺麗好きで、賢いんですよお?ブヒブヒとふざける。
皆を笑わせる。
いつの間にか・・不知火も笑っていた。
それからは・・会社で、付き合っていた女性と話さなくなり、吉田さんと話すように。
ある日、ふざけて男性上司がお前彼氏一生出来ない覚悟してんだろうな!と言った。
パワハラ、セクハラ。
他の社員達は血の気が引いた。
吉田「んなもん学生時代からとっくにしてますよ~っだ!んべええ!」 舌を出した。
上司「んだその態度はああ?」 酔っ払い。
吉田「しゅみましぇ~ん、スマホに録音しましゅたああ」 スマホを見せる。
上司は一気に酔いが覚めたようで、あ~・・ごほん・・言いすぎたか?・・すまんすまん・・みたいな事をブツブツ言いながら・・そそくさと店を出て行った。
皆から、やるう!、などと言われ、また飲み直す姿に、心から凄いと思った。
1週間後。
不知火から、2人での食事を誘った。
吉田さんは驚いていたが・・うん・・と・・ひっそり小さく小声で頷いた。
顔は髪で分からなかったが・・恐く・・赤い顔だろう事は分かった。
不知火「・・(可愛い・・え?・・あ・・あれ?・・今・・何て思った?・・か・・可愛いって?)」
改めて見る。
吉田「・・後で連絡して?・・んじゃあ・・・・ね」 惜しそうに去った。
不知火「・・あ・・はい・・(嘘だろ・・意外に・・可愛いかも・・マジか・・)」
この時、容姿の可愛さと、仕草や、魂の可愛さとは全く別なモノなんだと学んだ。
吉田と飲んだ帰り道、ホテル行きます?と言ってみようとしたがー・・。
吉田「あんまり遅くなると親が心配するから・・もう・・帰るね?これ・・」5千円置いた。
不知火「あ・・い、いえ!誘ったの自分ですし!」 返そうとするがー。
吉田「いいのいいの、私がトイレに行ってる間に支払ってくれた事は感謝するけど・・でも・・私は・・あんな事・・嬉しくないから・・それは・・割り勘!だいたい1万くらいだったでしょ?んじゃ!」
タクシーに乗る。
不知火「あ・・あの!」
吉田「?」
不知火「あの・・また2人で食べましょう!?」
吉田「うん!是非!」 手を振る。
発進するタクシー。
不知火「・・〈ボーー〉・・見下してた・・見下してたけど・・やっぱ本物は違ええええ・・」
その後、吉田の事を徐々に知っていった。
親の家のローン支払いを手伝っている事。
兄弟は皆親元を離れ、老後は吉田さんが看る事になる可能性が限りなく高いという事。
吉田「この顔だし、はは・・まあ・・天命だと思ってるよ・・あはははは」 痛い笑顔。
不知火「・・」 抱きしめたい・・そう・・思った。
それから2ヶ月後。
偶に2人で飲む間柄になった。
半年後。
お互いの誕生日を祝う間柄になった。
1年後。
日曜日。
夜。
公園。
並木通り。
桜がー・・。
不知火「・・あの・・吉田綾子さん!」
吉田「はははい?」
不知火「・・俺と・・い・・いえ!好きです!俺と・・付き合って貰えませんか?」
付き合ってやる。
お前には俺は贅沢だ。
どうだ?嬉しいだろう?
そんな考えは微塵もなかった。
こんな汚い俺なんか・・きっと振られる。
ずぼらで・・めんどくさがりで・・赤い糸だと分かってて・・それでも緑を選んで・・失敗した・・俺なんかきっとー・・。
不知火は・・震えていた。
とっくに。
とっくに吉田に負けていた。
親を支えると覚悟し、働き、老後も見据え、犠牲になると分かった上で納得し、それでもー・・。
明るく振る舞い、皆を笑わせ、仕事も出来る彼女に。
不知火はとっくにー・・。
吉田「・・貴方が・・」
不知火「え?」
吉田「・・こんな惨めなあたしを・・同情で・・そんな事を思ってるのなら・・失礼よ?・・そうじゃないなら・・いいけど・・けど・・う・・う”う”・・け”と”・・も・・うぐう・・もし・・同情じゃ・・な”い”な”ら”あ”あ”あ”・・」
不知火「~~~~~~~~~~~~〈ガバア!〉同情なもんかあ!絶対同情なんかじゃない!ただ貴女が好きなんだ!それだけです!好きなだけです!好きだ!大好きだあ!」
吉田「う”う”あ”あ”あ”あ”あ”、あ”あ”あ”あ”あ”」
満月が綺麗だった。
桜が綺麗だった。
2人はその日、帰らなかった。
結婚式。
男性社員達は考え直せやら、なんやら言ってきたがー・・。
全て聞き流した。
その後。
普通より下の顔の男の子が産まれた。
厳しく、優しく、明るい母親のせいで、明るく、やんちゃに育った。
掃除、洗濯、料理、お金の管理、節約、子育て、安心して任せられた。
時々、子供と一緒に休暇をプレゼントした。
奥さんは喜んで出かけていった。
出掛けている間、不知火が家事をするのだが・・中々上手く出来ない。
不知火「・・うっく・・アイロンって・・めんどくさいんだなあ・・」
こうやって、一旦離れるという事も、時には必要なんだと学んだ。
子供「父ちゃん!ただいまあ!〈ドスドス〉」 汚れた靴下のまま。
不知火「だはああ!?おいおいい!脱げ脱げええ!」
子供「先にコーラ!〈ドスドス〉」 冷蔵庫に向かう。
不知火「ふん!〈ガゴン!〉」 げんこつ。
子供「いってええ!?あにすんだ糞親父!」
不知火「あ”あ”ん?〈ガゴン!〉」げんこつ。
子供「うううう・・」 座り込む。
不知火「誰がこれ拭くんだあ?ああん?これは誰が拭くんだあ?」 床の足跡を指差す。
子供「・・てへ」
不知火「てへ♡じゃねええ!コーラもおう買ってやんねえ」
子供「んええええ!?」
不知火「じゃあ脱いで、風呂と、コーラの前にこれ拭け!」
子供「・・はああい」 しぶしぶ拭く。
〈ピンポーン〉
子供と目を合わせる。
子供「母ちゃんだ!〈ドスドス〉」 脱がないまま、また走る。
が。
不知火「帰って来た!?」 不知火も走る。
宅急便で~す。
不知火、子供『なあんだ』
不知火、子供『・・』 見合い、・・笑い合う。
宅配員「もしも~し?〈ピンポーン、ピンポーン〉」
不知火「あ、はいは~い」〈ガチャ〉
子供「さ、コーラコーラ〈ドスドスドス〉」 台所へ戻る。
〈END)