02
チルトとミレイ、二人の住むこの小屋からは、二人にとって憧れの地でもある城塞都市ディーボが一望できる。
チルトは小屋の上の屋根で日向ぼっこをしながら、城塞都市ディーボを眺めるのが日課になっていた。
今日は朝からちょっとしたハプニングがあったため、もう既に太陽は真上を過ぎてしまったが、まだ冬の開けたばかりのこの時期にはちょうどいい温度になっていったため、チルトとしてはラッキーハプニングだった。
それにしても、ミレイの胸はいつになったらあの城塞都市にいる女の人たちみたいに膨らむんだろうか、と不思議に思うチルトであった。
「ちょっと!なんか変なこと考えてないでしょうね!」
「なんも考えてないからその右手に持ってる物騒なナイフはしまってください」
どうやってだろうか、チルトのかなり失礼な疑問に感づいてナイフを腰から取り出すミレイに、やはり女は怖い、とチルトは思う。
しかしどうして小屋の上にいるチルトが、小屋の中にいるミレイがナイフを取り出した事に気付けたのか、これはミレイの勘とは違って現代のニッポンの科学では説明できないことである。
なぜなら、この世界、お気付きかもしれないが、地球とは全く関係のない別の世界であるからである。
――――事は、十五年前に遡る
チルトとミレイは、有明智斗と有明美澪という双子であった。
二人の出産日は台風がその村を直撃した日で、年季の入った建物はギシギシと音を立てていた。
出産は田舎の村で、一番出産に立ち会っている村の村長の妻の元で行われた。
母親を必死に鼓舞する声と甲高い産声と共に先に出てきたのは智斗であった。しかしその後、美澪が母親の身体から出てくるのを見る者は誰もいなかった。
智斗が生まれ、母親に抱かれたその瞬間、轟音が鳴り響き、雷鳴がつん裂き、残ったのは焼け果てた小屋と絶命した誰かも分からない黒焦げだけであった。
――――智斗は生まれて間もなく、美澪は生まれる前にして命を落としてしまったのだ。
その後、どういうわけか、智斗と美澪は白い世界で食べる事も寝る事も必要とせず、ただ二人だけの空間で二人だけの退屈なような幸せなような空間を十年も過ごしていた。
そして、十年がきっかり経ったある日、私が現れたわけである。