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校長の独白2

校長という仕事は、校内のことよりも対外的な仕事が多い。特に私立は理事会との兼ね合いもあり、様々な仕事をさせられる。


そんな中でも鴻上は暇があれば校内をまわった。自分の高校がどのような状況なのか、以前のような事件は起きないだろうか、それを自分で確認をしたかった。


ちょうど二年前、校内をまわっているとき、美術部の油絵の作品を見かけた。

鮮やかな色で描かれたそれは、花か、それとも何かの動物なのか、一見して理解ができないものだった。

しかし少し離れて見ると、それはわかった。


脳だ。


動物の脳なのか、それとも人間の脳を抽象的に書いているのか、それは鮮やかなピンクでとても美しかった。


この絵を描いた生徒はどんな生徒なんだ。

気になった鴻上は美術部の顧問を呼んで聞いた。


「あー、あれは光明寺ですよ。1年の。変わったやつでして、出してくる作品は全部臓器。しかも、人間のだって言うんですよ。気持ち悪いから辞めなさいといっても、次から次に臓器を出してくる。完成度も高いし、今では黙認という感じです。それにしてもよくもまぁ、こんなに色んな臓器を書いてきますわ」


そういって顧問が見せてくれたのは水彩画の肺や、粘土細工の肝臓。圧巻なのは、針金で作った顔面神経の模型。まるで型でも取ったかのような作りだった。


鴻上は光明寺に会ってみたいと思った。


翌日の昼休みに光明寺のクラスを覗いた。いた。まさに光明寺だろうという生徒が教室の端で色鉛筆で絵を書いていた。

そっと見てみると、やはり何かの臓器のようだ。


「君は解剖か何か好きなのかね」


鴻上が尋ねると、光明寺は頭を振って、こう答えた。


「解剖なんか興味ありませんよ。ただ造形が好きなだけです。こんなモノが自分の中にもあるなんてゾクゾクするじゃないですか。いまだって、僕の中の何かの臓器が動いてモゾモゾしてるんですよ。それはきっとピンクでヌメッとしているんですよ」


光明寺はニヤッと笑った。鴻上は、この生徒の気味の悪い趣味がなんとなくだが理解できた。ヌメッとした臓物が自分の中でも蠢いていて、それは触れないがきっとゴソゴソしているのだ。


悪趣味だが、誰もが惹かれる対象だろう。

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