第五話 女の子でも可愛いものは可愛い
あの人の家に着くと、既に当たりは綺麗な夕暮れになっていた。家に入ると私はまっすぐ真ん中に案内された。
家といっても一軒家では無く、山小屋と表現したほうがいい家だ。あれから誰かと遭遇して戦闘になる、なんていうことは無く無事辿り着いたが、まさかこのような家だとは思いもしなかった。
私はまず着いたらあの人の名前を尋ねた。
あの人の名前はフラウ・マクベル。
フラウさんは特に仕事をしている訳ではなく、金が稼げれば何でも良いと言うポリシーらしい。
誘拐をしてる時点で何と無くそんな気はしてましたけどね……。
私は記憶が無く、名前が無いと言うとフラウさんが名付けてくれると言ってくれた。
そして出てきた名前が、リセ・フランチェスカ。
「その名前ってどういう意味があるんですか?」
「フランチェスカは適当で、リセはみずみずしいって意味だ」
「リセのほうはどういう理由で?」
「だってお前まだ若いだろう?」
「……そ、そうですね」
若いって……。結局そっちも適当な気がしなくも無い……。
とは言っても、折角つけてもらった名前を拒否する訳にもいかないし別にこれでいいかな……。
「さて、と」
フラウさんは床に置いた女の子二人に目をやる。
「この二人の体を洗ってもらいたいんだが、外にある水道で洗ってきてもらっていいか?」
「別に構いませんけど、良いんですか?」
「何を心配している?」
フラウさんは疑問を顔に浮かべる。
「もし途中で起きて逃げられちゃったら大変ですよ?」
今はこの二人が気絶しているから何の問題も無いが、フラウさんは家に入ってから二人の縄を解いた。今もし起きてしまえば暴れる可能性が十分に有り得る。
別に私としては逃げられようが大した問題ではないが、私のせいで、なんて思われるのも良い気分ではない。
「大丈夫だ。この二人には束縛がかけてある」
「その、束縛ってなんなんですか?さっきも最後にかけて気絶させてましたけど」
「束縛は私のオリジナルの呪文でな。この呪文にかけられた対象は私から離れることが出来なくなる。それと、束縛をかけられた者はかけた者へ攻撃することが出来なくなる。とはいっても相手が完全に戦意喪失している状態でないとかけれないし、離れられないとはいっても10m位はなれることは出来るがな」
「……でも、それだと離れられなくても私に攻撃きません?」
「大丈夫だ。束縛は私が許可すれば私の効果を他人と共有することが出来るようになっている。今私はお前と共有している状態にしてある。だからお前は攻撃される心配はしなくていい」
「……なるほど。私に危害が及ばないことが分かったのでそれ以上聞くのは止めます。なんか面倒になってきました」
まだこの束縛と言うものを完全に把握した訳ではないが、これ以上聞いても私にメリットがあるわけでもないし、無駄に時間が消費されるのは目に見えている。
「私も説明するのは面倒だ。まあ、分かってくれたなら頼んでいいか?石鹸は水道の隣に置いてあるはずだ」
「了解しましたよっと」
私は二人の体を難なく持ち上げる。一体この力は何処から湧いて来るんだろうか。どう考えても10歳の力でないことは明白である。
ま、考えても無駄だしさっさと済まそうかな。
私は考えを纏め、家の外へと歩き出した。
―――――――――――
「さて、この水道かな」
私は玄関の扉の直ぐ隣にある水道の隣に二人を置いた。
既に服は脱がせてある。
この家に来る際にもこの水道はチラッと目に入った。
この二人をここで洗うということは風呂が無いか、ただ単にこの二人を風呂に入れてまで綺麗にする必要は無いと判断したか、このどちらか。
別にどちらであろうと私にはどうでもいい事だけど。
私はホースの付いた蛇口の栓を捻り、この二人に水道の水をかけた。
「ひゃっ!?」
「んぅ……?」
私が水をかけると、二人とも別々の反応で目を覚ました。驚いた反応で目を覚ましたほうがちっぱい女の子。鈍い反応で目を覚ましたのがエルフの巨乳っ子。
「此処は?……ってお、お前はあのときの女と一緒に居たチビ!?」
「チビとは失敬な。君と5,6cm位しか身長に差はないと思うけど?」
「う、うるさいわね!そんなことより何で私は裸なのよ!?」
女の子は慌てて無い胸を両腕で隠す。
服を着ていない事に恥ずかしがっているのか、あたふたしている。
「別に隠しても隠さなくても、その胸じゃ……ね?」
「あ、あんたもちっちゃいでしょうが!」
大きな声で叫びながら私の胸を見る。
私まだ10歳だし、仕方ないと思うんだけどなぁ……。
まあ、女の子はやっぱり気にするものなのかな?
女の子が喚いている間にエルフの女の子は背伸びをしてその場に立ち上がった。
「ええと……、私はフラウさんに攫われて来たはずなのですが……。あなたは?」
「え、あ……えっと。リセ・フランチェスカって言います」
エルフの女の子の丁寧な口調に思わず私も丁寧に返してしまった。
そもそもフラウさんの名前を知ってるって事は任意の誘拐なのか?……いやまさか。自分から奴隷になりたいなんて思ってるわけ無いだろうし……。
「リセ・フランチェスカさんですね。それで、私は今何故裸なのでしょうか?」
「そうよ!何で私たち今裸なのよ!?それにアンタ私たちに水ぶっかけたでしょ!?」
私たちの会話に叫び声を上げながら混じってくる。正直なところもう少し声のトーンを下げてくれないかなぁ……と思う。
「ええっと、それはですね。フラウさんにお二人の体を綺麗にするように、と言われたのでお二人の体をこれから洗おうとしていた所ですよ」
「あらあら、それはお手数おかけします」
「ふざけんじゃな……って!アンタはそれでいいの!?」
「私は別に良いと思いますよ?自分で洗うより人に洗ってもらうほうが気持ちが良いではないですか」
「……エルフって頭おかしいの?」
はぁ、と女の子は大きなため息をつく。
「まぁまぁ、君はそこに立ったまま止まっていて下さい。お姉さんはちょっとしゃがんで下さい」
「冗談じゃない……あれ?体が動かない?」
女の子は動こうとしているのか必死な表情を見せるが、全く身体は動いていない。
恐らくフラウさんの束縛の効果が発動しているのだろう。先程私が止まっていて下さい、と言ったのがそのまま効果として反映されている様だ。
「では洗おうと思いますが、その前にお二人の名前を聞いても良いですか?」
「……何と無くアンタの言葉に逆らえないことは分かったわ。仕方ないから名乗ってあげる。私の名前はリリカ・メルベル」
「私はセリア・シュリアードと申します」
「リリカちゃんにセリアさんね」
「ちゃん付けするな!」
リリカをちゃん付けで呼んだら顔を真っ赤にして怒り出した。
これはからかい甲斐がある。
「まあ、そんな怒らずに」
私はリリカの頭を撫でた。
リリカのショートヘアはとても触り心地が良く、滑らかな感触だった。
いつまでも撫でていたい位気持ちがいい。
「……さ、触るなぁ!」
リリカはジタバタしながら私の手を頭から振り払った。
「そんなに怒らないほうがいいよ?折角の可愛い顔が台無しだよ」
「か、可愛いとか言うな!」
私と目があったリリカは直ぐに目を逸らしてまた怒る。
何だ、可愛い一面もあるじゃないか。
はぁ、男だったら悶々としてたんだろうなぁ……。何せ二人とも裸だし……。
無論、性的な意味で。
「えっと、じゃあ改めて失礼しますね」
「う、うう……」
「はい、よろしくお願いしますね」
リリカが嫌悪感むき出しの顔をしているので、先にセリアさんの身体から洗うことにした。
「では、失礼して……」
私は近くに置いてあった石鹸を手に取り、水を含ませ泡立てる。
私の服は血を綺麗にしたのと同様に、水がかかっても直ぐ乾く様だ。
よし、これくらい泡立てたら後は手でいいかな。
ある程度泡立て、石鹸を元の場所においてセリアさんの背中に触れる。
するとセリアさんは一瞬ピクっとしたが、直ぐにそのままになる。
よく考えたら裸の女の子の背中を洗ってるって凄まじいシチュエーションだよねこれ……。
自分が男だったら。
「セリアさんどうですか?」
「とても心地よいです。人間の方に洗って頂くのは初めての事ですが、悪いものではありませんね」
セリアさんはニッコリと笑顔で此方に返答してくれた。
さて……次は前か。
「次は前を洗いますね」
「はい、お願いします」
セリアさんの声からは何の警戒も感じられなかった。
まあ、今の見た目は10歳の女の子ですしね……。
背後からセリアさんの大きな二つの山に手をかける。
く、くそう……。男だったら……男だったらぁ……!
悔やまれる気持ちがこみ上げてくるが、女である以上仕方が無い。
「あっ……」
「どうかしました?」
「い、いえなんでもないです……」
私が胸に触れた瞬間セリアさんは何かを言おうとしたが、何でも無いということであれば追求するのは止めておこう。
それにしても綺麗な胸だ。
ツヤ、ハリがしっかりとしているばかりでなく、大きさに見合った重さがとても羨ましく思える。
素晴らしい。
それに柔らかいし、揉んでいるだけで気持ちいい。
性的な意味は無いが、感触がとても心地よい。
「これは……良い!」
「……?」
明らかに胸ばかり弄っているが、この際そんな事はどうでもいい。
セリアさんが疑問の表情を浮かべるが、理由は分かる訳もない。
女でもこれほどの物を触っていると気持ちが良くなってくる。
とは言ってもいつまでも弄っているわけにも行かないので、前後洗い終え、ホースを構える。
ちゃんと下のほうも洗いましたよ?
「えっとじゃあ、泡流しちゃって大丈夫ですか?」
「はい。お願いしますね」
セリアさんに承諾を貰い、私はセリアさんに水をかける。
「んっ」
少し水が冷たかったのかセリアさんはまたピクっと反応した。
さて、セリアさんを流し終えたことだし……。
セリアさんの体を洗っていて裸のまま放置していたリリカのほうへと視線を移すと目が合った。
リリカは目に涙を浮かべながらプルプルと震えている。
「あれ、どうかした?」
「どうかした?……じゃないわよ!いつまで私を裸で放置するのよ!?」
リリカは動かないまま此方に向かって叫び声をあげる。
「ごめんごめん、今から洗ってあげるね」
私の言葉に安心したのか、リリカは黙り込んで目をつむる。
意外と素直なところが可愛いなぁ……。
思わず私はリリカの手を掴んで引き寄せ、唇にキスをした。
「ふぇ……?」
咄嗟の事で理解が追いつかないリリカは呆けた顔をしている。
ああ、キスしちゃったよ。女の子同士で。
男でなくてもリリカのこんな可愛いところを見せられちゃったらついキスしたくなっちゃうよ。
私はそのまま強引にリリカの口の中に舌を入れる。
「んぅ!?」
リリカは状況を把握したのか、急に顔を赤らめる。
私の舌を押し返そうとするが、混乱しているのか力が弱い。
私はリリカが動けないのを良い事に、そのまま押し倒した。
セリアさんがあらあら、とか言っていたような気がするがこの際気にしなくてもいいだろう。
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