第一話 現実は上手く出来てはいない
今回小説を始めて書かせていただくことになりました。処女作ですので誤字脱字等の指摘や、感想などを頂けると幸いです!
丁度今日、30歳の誕生日を迎えた。
30年の引きこもり生活を経て俺はついに魔法使いになった。とは言っても、30歳童貞で本当に魔法が使えるわけではない。
「はぁ、暇くせぇ」
外は雷が激しく鳴り響いて前が見えないくらいの大雨が降っている。
別に外に出るわけじゃないので、大して気にすることもないが、雨がうるさい。
せっかくいいシーンだってのに、邪魔するなっての。
そう思いながらも、エロゲをやっていく。
「きょうちゃーん!ご飯よー!」
「分かった分かった。今行くってー」
今自分を呼んだのは、母親。
俺はそこらの引き篭もりとは違って、ちゃんと部屋からは出る。家から出ないだけなんだ。
エロゲを一旦中断して、部屋から出ると目の前に母親が千円札を持って立っていた。
「きょうちゃんごめんね。サラダにマヨネーズかけようと思ったんだけど、マヨネーズが無くって。近くのコンビニにで買ってきてもらえないかしら?」
はいはい、と俺はめんどくさそうに返事をしてその千円札を受け取った。
え?お前引き篭もりで外でないんじゃなかったの?とか思ってるかもしれないが、マヨネーズがないサラダなんて誰が食うんだよ。マヨネーズのために外に出るんだ、決して母親のためではない。
俺は玄関に置いてある母親の傘を借りて外へ出た。
「おいおい、人の話聞いてんのか?」
「あんたこそ私の話聞いてんの?」
目の前でギャルっぽい女と不良っぽい男が喧嘩している。
こんな光景いつもなら無視をしていくのだが、コンビニの入り口で喧嘩をしているのだ。
つまり何が言いたいかというと、この男女が邪魔でコンビニに入れない。
しかもお互い結構怒ってるみたいで、他人の俺がちょっと失礼しますーなんて言える状況ではない。
「ああ、邪魔くさいな」
呟いた瞬間気づいた。
その男女の会話が止んで、二人とも此方を見ている事に。
しまった、と思った。
思わず呟いた声が相手に聞こえてしまったみたいだ。
「おいお前。今邪魔っつったか?」
男が青筋浮かべた顔で、俺に言って来た。
まずい、非常にまずい。こういう時なんていえばいいのか分からない。
俺がコミュニケーションを取る相手は母親とコンビニの店員だけだ。不良の対処方法なんて30歳のほぼニートの俺にはマジで分からない。
「いってる!」
言ってない、と言うつもりだったが。そんな輩と会話なんてした事がなかった俺はテンパって間違った事を言ってしまった。
そういわれた男はさらに怒り出したのか指の骨をパキパキと鳴らした。
へんなことを言った自分に情けなくなったが、そんな事を思ってる間に体が震えてきた。
別に死ぬわけじゃない。ちょっと痛いだけだ。
なんでこんな理不尽な理由で殴られなきゃいけないんだよ。
そう思ったと同時に急に横から強い衝撃が来て、意識を手放した。
―――――――
どうやら自分は死んだらしい。
死んだ事って理解できるのか?と言われたら普通は出来ないと思う。
しかも死んだ理由が不良におびえていたら、たまたま暴走した一般車に巻き込まれて、コンビニと車にサンドイッチされたかららしい。
不良に殴られて死んだのかと思った。
結果からすればマヨネーズを買いに行ったら死んだ。
マヨネーズのために死んだってことになる。
「大丈夫?」
目の前に居る美景な女性が話しかけてきた。
本当はこんな状況超うれしい。でも、喜べない。
目の前に居る人が神の下っ端でこの人がマヨネーズのために俺が死んだって事を伝えたから。
この人が悪いわけではないが、その事実を知ってショックな訳で。
「大丈夫そうじゃないわね、まあそういうダサい死に方する人結構居るからあんまり気にしないほうがいいわよ」
「そういうこといわないでくださいほんと。マジお願いします」
「それより君は地球の日本で死んだ、それで間違いないのよね?」
女性の言葉に、俺は間違いないとクビを縦に振って示した。
「ふーん、そうなんだ。それだと次の人生は結構大変になるわね」
「大変になる?どういうことですか?」
次の人生に興味がないわけではないが、大変になるといわれたら流石に気になる。
「ほら、地球って平和でしょ?あんな平和な世界滅多にないのよ。いいたい事分かる?」
「つまり、もう平和十分味わったから次は平和じゃなくてもいいだろ?てきなことですか?」
「よく分かったわね。その通り、まんまその通りよ」
それを言われてショックを受けた。今まで自分はニートとして生きてきたのに、次に新しく生まれ変わったら平和じゃない世界に行くなんて。
下手したらその世界に生まれ変わったら、マヨネーズを買いに行って死ぬなんて事はなくても。30歳まで生きられない可能性のほうが高いじゃないか。
はぁ、と思いっきりため息をついた。
「そういえば、地球の日本って言いましたよね?地球以外の、いわゆる異世界なんてのもあるんですか?」
「勿論あるわよ。危なっかしい世界ばっかだけど」
「ファンタジーな世界も?」
「ある」
その言葉を聞いて少し興味を持った。
別にニートをしていたからという訳ではないが、ファンタジー物を見たことがあるなら誰だってその世界に一度言ってみたいと思うだろう。
永住したいとは思わないだろうけど。
「そういうファンタジーな世界は危険がつきものだから、ってのもあるけど、地球みたいな、元々平和な世界からそっちに、『望んで』いく場合は私からプレゼントがあるわよ」
「えっ、プレゼントですか?」
これはアレだろうか、こういう系によくあるお前にはスキルをやるからあっちの世界で無双してもいいぞ的な。
もしこれなら行ってもいいぞ……。無双なら死ぬことがないじゃないか!
「あ、一つ言うけど。無双はできないわよ」
「え、そうなんですか……」
思わずその場で落胆した。
考えてることを見透かされたかのように否定された。
チクショウ、この人俺の考えてることが分かるのかよ。
「まあ、プレゼントって言うのは10歳から人生がスタートするっていうのと神の加護がついた武器を持ってそっちの世界にいけるって事ね」
「紙の籠?」
「ち・が・う。神の加護」
神の加護というものがどんな物かは分からないが、きっと凄いものに違いない。少なくともそれがあれば死にはしないだろう。って感じかな?
「簡単に言えば護身用とでも思って頂戴。で、そういう世界に行きたいの?」
「うーん……」
「行けよ」
この人だんだんめんどくさくなってきてるだろ絶対。
この人には悪いけど、これは次の人生なんだ。そう簡単に決める訳には行かない。
「ああ、後一つ言い忘れたけど、地球みたいな平和な世界からこういうファンタジーの世界に行く場合は10歳でいけると同時に記憶も持っていけるから」
記憶か……。
確かにそれは大きなアドバンテージかもしれない。
常識があればある程度は未知の世界でも生活できるだろうし、それにニートだったからと言う訳ではないが、知識なら結構ある方だ。
「――――あー、めんどくさ、早く行って。」
俺が深く考えていると、急にクラクラとしてきた。
「えっ……まだ決めてる最中なんです……け……ど」
俺の言葉は届いていないのか、女性は返事をしなかった。
そしてそのまま俺は意識を手放した。
「あーいい忘れてたことまだあった。まあいいや、結構いいプレゼント渡したんだし、何とかなるよね」
そういって女性はめんどくさそうにその場から立ち去っていった。
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