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些細な嘘から始まった  作者: 紗倉 悠里
第二章 〈現在と狂い〉
8/21

突然の悲劇(グロ注意!)

「着いた……」

私は、息がきれてしまい、フラフラだ。

セットに入ろうとしたその時だ。

「霞、ちょっと来てくれるかな?」

後ろから呼び止められる。私が振り向くと、そこに居たのは、柔らかく微笑む一斗であった。

「うっ、うん」

私は、一斗の後に着いて行く。

光は、居ないようだ。(実は居たのだが、葵には見えなかった)

二人は、静かで人の居ないセットの裏へ来た。

「ここなんだけどねーーーー」

一斗は、丁寧に台本の変更点を教えてくれた。

この様子だと、私は会議に遅れたようだ。

8:00以来、時計確認してなかったな……。

どちらにしろ、教えてもらえば同じだ。

一斗は、優しい微笑みのままである。

私は、その一斗に不審を感じた。

彼は利き手である右手を体の後ろに隠し、左手でぎこちなく教えるのだ。

「右手どうしたの?」

私は、自然に聞いた。特になにも考えずに。

すると、彼はビクッとなり、沈黙する。

そして、私から目を逸らして言ったのだ。


「ごめん、霞!」

彼は、私の前に右手を突き出した。

その右手に握られていたモノ……それは、ナイフであった。

綺麗な細工がされていて、市販のナイフとは思えない。

私は、ドラマの小物かと思い、

「凄いナイフだねぇ」

と、笑いながら言った。

だが、私の考えは当たってはいなかった。

彼は、私にナイフを突き刺そうとしたのだ。

私は、とっさに右手に持っていた鉛筆を、一斗の足に刺した。

何も考えていなかった。


「うっ……!?」

彼の動きは、ピタッと止まったかと思うと、私によりかかるようにして倒れた。

私の鉛筆が刺した部分からは、赤黒い血がボタボタと滴り落ちている。

鉛筆を伝って葵の手に血がつく。

「きゃっ!!」

葵は、鉛筆から手を離し、後ずさりした。

息は乱れ、頭の中は真っ白である。

分かる事は、私が彼の右足を刺したと言う事のみである。

「霞、待っ……て」

彼が、刺された右足を抑えながら、私を呼び止める。

私は、それを無視してその場から、立ち去った。

「正当防衛」

と言う言葉を、ただただ繰り返しながら。


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