表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
些細な嘘から始まった  作者: 紗倉 悠里
第二章 〈現在と狂い〉
5/21

勘違い、感違い

「俺は……何をしてしまったんだ」

一斗は、ぼんやりとセットへ戻ろうとしていた。

「きゃー!一斗よ」「え、ホンモノ!?」

という、女子達の声が遠く聞こえる。

俺は、皆の前で、性格までも偽っているのか。

そう思うと、罪悪感が増すのであった。


セットに戻り、あとの時間をなにでやり過ごそう……と考えていた。

清水が紅茶を淹れてくれたので、それをのみながら。しかし、清水の紅茶は正直いうと、薄い。ほぼ水に近い。どんな淹れ方をしたら、こうなるのか謎だ。

「ん?待てよ……もしかしたら」

水風味の紅茶を飲んでいたら、おもいついてしまった、恐ろしいなにかの可能性を。

殺人をした後は、もしかしたらという考えがいくらでも出てくるらしい。

もしかしたら、誰かに見つかるかもしれない、もしかしたら、誰かに見られていたかもしれない。

『もしかしたら』には、共通点があった。

それは、必ず “誰か” が入るのである。

しかし、そんな事はどうでもよかった。とにかく落ち着かない。

気が気でない一斗は、橋へと引き返した。



橋に到着する。そして、橋から下を見た。

そこには、霞の水死体があるはずだった。

…………ない!?

ない!ない!ない!ない!何故だ?

「確か、ここに捨てた筈だ」

一斗は呟くと、周りを見回した。

霞は見当たらない。

一斗は、くまなくさがした。だが、ない。

そこにあった筈の霞が。

その時、一斗は、思い出した。

あの時にぶつかってしまった少女の事を。

名前は分からない。だが、一つ分かる事があった。

制服。すなわち、学校だ。

たしか、白虎橋の近くにある学校は、丸菜学校ぐらいであろう。それに、あの学校の制服は、白がベースのセーラー服。あの時ぶつかった彼女の制服もそれだった。

こんな時に、制服は役に立つモノだ。

「よし、行くか」

一斗は呟いた……。が、どう侵入したら良いモノか。

勝手に入ったら、泥棒とか色々あるし、怪しまれる事であろう。

ならば、大きく行けばいいのではないか?

俺は、鈴木 一斗。俳優だ。

ステージとして行けば良いんだ。

彼女が、霞を取って行ったとは限らない。確認だ。ただ、確認するだけだ。

だが、まだ問題は一つある。

ステージとして行く『理由』だ。

自分でいうのもあれだが[人気俳優]の俺が、いきなり平凡極まりない丸菜学校にステージとして行きたいなどといえば、おかしすぎるであろう。どう考えても、おかしい。

だが、他に良い理由など見つかる筈がない。

頭がどんどん混乱してゆく。

複雑に意見が飛び交い、絡み合う。細い糸のように縺れ、解けなくなる。

分からない。どうしたら、良いのか。



とりあえず、セットに戻ろう。

………霞は?

どうしよう。確か、今から江戸時代のドラマ撮影だ!霞が居ないとばれたら!

その時だ。

「タッタッタッ」

誰かが一斗の方へ走ってくる。

葵である。葵は、死体を橋から引き上げた時に落とした財布を取りに来たのだ。

勿論、死体は持っていない。そんなモノを引きずっている訳はない。 しかし、それがいけなかったのである。

まぁ、葵が考えていた計画通りだったともいえるのだが。

「霞、生きてたのか……」

一斗が言う。

霞そっくりの葵にまんまと騙されたわけだ。

葵は、驚いた。まさか、本当に一斗が霞を殺したとは。

だが、直ぐに、

「え?私は生きてるよ」

と、猫撫で声で言った。

一斗は安心した様に、

「よし、セットへ行こうか」

と、私の手を引き出した。

「まさに、計画通り」

葵は、ニヤリと笑い、静かに呟いた。


そして、その時に霞の身体は、ある家の箪笥の中へと入り込んでいた。

勿論、一人でに動いたわけではない。誰かの手によって。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ