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些細な嘘から始まった  作者: 紗倉 悠里
第二章 〈現在と狂い〉
3/21

最初の始まり。

時は、昼休みーーー

「ヤアァッッッ!」「トオォッッ!」

二人の男女が江戸を舞台にしたドラマの殺陣の練習をしていた。

男は、鈴木一斗。茶色い短い髪。整った顔立ちで笑みを浮かべている。服は、素朴な白い服だ。と言っても、白いTシャツに少し砂を付けて、傷を付けて江戸風に作り上げたモノだ。ズボンは、普通の白い短パンだ。やはり、砂と傷は付けているが。

女は、如月霞。青い腰まである長い髪をなびかせている。彼女と美しい顔立ちをしている。表情は真剣だ。服は、赤い着物をきている。だが、下の方は現代の女子高生のスカートほどの短い丈だ。その方が動きやすいから、という霞の提案から、作り変えられた。

セットは、江戸時代を忠実に再現され、刀まで完璧だ。大体は木造。暖簾もあり、目立つ大きな字で【江戸】と描かれているので、ついつい目が言ってしまうほどだ。

殺陣の練習中であったが、昼休みという時間だからと、二人の自主的な練習だったため、周りには二人以外の人間は

清水 乙と、数名のスタッフだった。が、スタッフ達は後に弁当を買いにセットを出ていった。つまり、三人しか居ない。

「あっ……」

霞は、目の前を飛ぶ蚊を見つけた。

ーーブーン

蚊の羽音が聞こえた。霞は、虫が嫌いだ。

その羽音のせいで……その蚊のせいで、動きが一瞬緩んだ。

それが元凶だったのである。



「空きあり!」

一斗は、そう言うと霞の顔をセットの刀で強打した。

霞の顔からは、みるみる血の気が引いた。そして、ばったりとその場に倒れた。

「しまった!」

一斗がそういった時はもう遅かった。

霞は、うつ伏せのまま動かない。

霞は、死んでしまったのか?

分からない。演技なのかもしれない。

だが、死んだとしれば、一大事だ。

そんな事がバレるとどうなる事か。

そう思い、彼の頭にこんな考えが浮かんだ。

ーー廃棄する!

一斗は、周りを見回した。

昼休みという時間帯で幸い、周りに人は見つからない。

清水は、煙草を吸いに外へ行ったようだ。スタッフは、何処かで弁当を食べていることであろう。

一斗は、霞を静かに抱え上げ、走り出した。

まだ、冷たくはなっていないし、まだ顔も青白くない。なら、お姫様抱っこをしてるとでも、おもわれるだろうか。

万一の人眼を避ける為、セットの裏道を通り、息も出来ないほど走る。そして、殺めてしまったかもしれない罪悪感を背負っていた。

ももう頭は真っ白だった。だが、これだけは考える事が出来た。

ーー廃棄する。


ついた場所は、白虎橋。

ここは人通りが少なく、狭い路地を抜けた先にある川に掛かる橋である。

川は、清らかで底まで見えるくらいである。

「…………」

一斗は、きょろきょろと注意深く周りを見回した。

誰も居ない。チャンスだ!

「ボチャン……」

水面は、まるで一斗を責めるような鈍い音をたてた。

小さな波は、悪魔が踊るかの様に。

一斗には、全てが自分をせめているかのように思えた。

霞は、底へと沈んで行ったーーーーーー

かと思われたが、実は岩に引っかかっていた。

だが、それを確認せずに、一斗はその場から冷静を装って歩いて、セットに向かった。



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