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第1話【ナギ】

学園恋愛ファンタジーです。軽くBL臭い部分も後々出てきます。お嫌いな方はご遠慮ください。ソフトエロも後々出てきます。こちらも苦手な方はご遠慮ください。内容に偏りがあることをあらかじめご了承ください。

 私立椿山学園。小中高大一貫教育をモットーに作られた総合学園である。

 小中までは普通科のみだが、高等部からは普通科、美術科、音楽科、体育科と別れ、大学部は文学部、芸術学(美術/音楽)部、体育学部に分かれている。そのため、高等部の美術・音楽科、体育科に関しては外部の学校から入試を受けて入ってくるものも多い。事実、学園側も非常に力を入れているため、スペシャリストが輩出される。


 中緒凪は椿山学園大学部大学院美術学部デザイン研究科建築デザイン専攻に所属していた。しかし彼は、この学園では珍しかった。

 なぜなら、彼のように大学院からこの学園を選び、入学してくるものはほとんどいなかったからだ。

 受験生自体は、外部からのものは多い。しかし、学園側がそれを受け入れない。高等部での入学は多いにも関わらず、その後は編入生もほとんど受け付けない。

 そのため、一種独特の雰囲気があるのも事実だった。それを含め、ナギは野性のカンにも近い、彼自身の感覚で何かを嗅ぎ取っていた。

 この学園には、それ以外にも何かある、と。


 2階建てから3階建ての、やたら敷地面積が広く平ぺったい校舎がそれぞれの学部学科ごとに独立して建っていた。その校舎群が囲む中心には、芝生と木々に囲まれた公園のような広場があり、さらにその中心にはドーム上の集会場があった。そのドーム以外は、一体誰の趣味なのか、おとぎ話にでも出てきそうな、古くさい城のようなデザインだった。そしてそれほど広い敷地にも関わらず、ここには小中高大院を含めて3200人ほどしか学生がいない。

 それに何よりおかしかったのが、その校舎を外界から護る柵のようにそびえ立つ12の塔。窓もなく、入り口も一つしかない。直径60mほどの狭い塔なのだが、高さもあり、数もこんなにあると、異様な迫力である。

 その異様さに、ナギは何も言えなかった。口うるさい彼が。正確には言いたくないくらい不愉快だった。

 その後、彼は根拠もなくこういった。「とにかく怪しい」と。彼自身にとっても、それは野性のカン以外の何者でもなかった。 

 しかし、そのカンが間違っていなかったことを、ナギは先日体感した。

 そして、それをはっきりさせるために、彼は高等部に足を運んでいた。


 昼休み。高等部の学生は思い思いの場所で昼食をとっているようだった。ナギは昼休みを楽しむ高校生達であふれかえる中庭を抜け、学園の第7の塔にほど近い美術科の校舎に入った。隣にあるのは音楽科の校舎で、その間に美術科音楽科共通の学生食堂があったので、彼は真っ直ぐそこに向かう。


「美術科って、普通科とは離れてるんだな。知らなかったよ」

「……何しに来たんですか?」


 キツネうどんを食べながらではあったが、それなりに丁寧に対応したのは橘彼方だった。女生徒に騒がれながら、6人がけのテーブルに座るカナタの向かいに、当たり前のようにナギは座った。彼に隣に座られた木津詠持は、ナギのことをほぼ無視していた。一緒の席に着いていた別の男子生徒たちは、言葉も出ない。


「お前ら、高等部普通科の中緒惑マドイと聖って知ってる?」


 向かいに座るカナタと、隣に座るエイジを交互に、しかし真っ直ぐに射抜くように見つめながら、ナギは話を始めた。


「マドイ……ヒジリ?同じ名字ってコトは、兄妹か何か?」

「……カナタ、お前ってホント、いろんなこと疎いって言うか……興味ないよな?普通科の双子の中緒姉妹って言えば、美人で有名だぞ?美術科まで噂になる程度には」

「エイジの言う有名の基準が判んないよ。オレは知らないもん」

「……もしかして、建築の中緒凪って、あの中緒姉妹のお兄さん?!噂には聞いてたけど、すげーな、こうやってみると確かに顏似てんなー!」


 ちょうどエイジとナギを挟む形になってしまった周藤励が騒ぎ立て、ナギの顔をじろじろと上から下まで眺める。その行動に、ナギは眉をひそめた。


「何、レイも知ってるの?」

「だから有名だって。……って、カナタに言ってもしょうがないか」


 レイの言葉に、カナタの隣にいた別の学生も頷いた。


「えっと……確かお前、カイジだっけ?」

「そりゃ漫画の主人公だよ。エイジです!中緒先輩」

「先輩とかいいっつったじゃん、めんどくさい。お前は知ってんだよな?」


 しっかりと自分の目を見るナギに、エイジは戸惑い目を逸らしながらも、カナタに代わり彼に答える。


「聞いたことはありますし、顔も知ってますけど、面識はないですよ。何たってここは美術科ですから。食堂だって別だし。音楽科とはそれなりに交流ありますけどね」

「そうか。オレ、一応あいつらの兄貴なんだけどさ」

「へえ。中緒姉と顔は似てるけど、同い年くらいに見えますね。ちっこいし」

「殴られたい?エイジくん?」


 笑顔で拳を握るナギに、


「遠慮しときます。てか、こんな所で人殴ったら、あんた犯罪でしょ。オレ、いろいろ聞いたんですけどね、あんたのこと」


 エイジがちらっと、カナタの顔に残る傷を見た。

 つい、昨日の出来事だ。


「中緒道場っていう合気道の道場の師範代なんだってね、あんた。建築Dの人が教えてくれた」


 わざとらしく、エイジは笑って見せた。


「ああ……。中緒の父への義理だけどな。だから、手はあげないけど」

「合気道なんかやるんですか。そんな風には見えなかったけど。ちっこいし」

「だから、ちっこいの関係ねえっつの!お前ちょっとでかいからって、ナカタ!」

「カナタですよ」

「……えっと、そんな話をしに来たんじゃない」


 わざとかと思ったが、どうも天然だったらしい。わかりにくかったが、恥ずかしそうにしていた。

 エイジのナギを見る目が、明らかに馬鹿を見る目になった。


「何ですか?お話って。なんか周りがうるさいですよね、今日は」

「って、カナタ、お前、この人の天然ぼけをスルー?しかもこの状況、判んないわけ?」

「状況?……女の子が多い。音楽科かな?」

「いちいちカナタにつっこんでんなよ、エイジは……」


 いつものことだと思いつつ、レイが二人を見てげらげら笑った。


「てか、中緒兄は今日一人?妹に会いに来たわけでもなく、何でオレ達かな?場所間違えた?」

「……兄て。まあ、先輩よりは良いか」


 いいのか?と思いつつ。


「そういや、今日は一緒じゃないの?……田所さんだっけ。あの人も院?」

「ああ、ユズハね!別にいつも一緒にいるわけじゃないさ。アイツは文学部の方だし。……で、聞きたいのは昨日の塔の……」


 と言いかけたところで、向かいにいたエイジの両手がナギの口を塞いだ。


「あにすんだ!」

「黙ってください。……えっと、ちょっと顔貸してもらえますか?」

「……一緒に来ていただけますか?だろ?」

「あーはいはい。じゃあ、行きましょうか。カナタも一緒に」


 どうやらエイジはまともにナギに取り合うのはやめたらしい。

 ナギとエイジが連れ立って歩く後ろから、カナタがついて歩く。


「なに?知り合いなの?あいつら。あの、中緒凪と。だってあん人、院入学だろ?確かに見かけがあれだから有名だけど」

「……さあ?ほら、エイジのヤツ、顔広いからさ」


 そう言って、レイは誤魔化すように笑顔になった。


「あー、エイジならあり得るよな。カナタはあいかわらずだったけど。でも、中緒凪ってすげえ優秀だって聞いてたけど、なんか作品の印象と違うな。子供みたいだ」

「ふーん。オレ、あの人の作品って見たことないや。どこで見れるの?」


 そう言いながらも、レイはどこか上の空だった。






「何だ、こんな所に連れ出して。別にさっきの所で良いじゃねえか」


 エイジはナギを校舎を出てすぐの中庭の隅に連れ出した。広い中庭には他にも人がいたが、遠く離れていることを確認して、話をはじめた。


「あんた、ゲームのルール聞いてないのか?ゲームのことは口外しない!それがルール!」

「……知らん!オレは何も聞いてない」


 自信たっぷりそう言い放つナギに、一瞬言葉を詰まらせる。

 昨夜の様子を思い出しながら、状況を分析する。


「何で田所さんを連れてこないんだよ」

「必要ない。てかそりゃどういう意味だ」

「……そのままの意味だって……。あんたじゃ話になんないよ」

「うっさい!失礼なヤツだな。ユズハだって、何も知るわけがない!アイツは昨日、オレが連れだしただけなんだから。連絡を貰ったのはオレだけだ」

「え?そーなの?二人いっぺんにメール貰うだろ?オレ達の時はそうだったよな?」


 エイジの言葉に、カナタが無言で頷いた。


「メール?!しかも、塔に行ったらあんなコトになるなんて思わなかったし……。手紙にはそんなこと書いてなかったんだ。とりあえず誰か連れてこいってだけ」

「なんだそれ。手紙?!ホントに何も知らずに来たの?しかもそれだと中緒兄はともかく、田所さんホントに巻き込まれただけじゃん!!」

「まあ、そうとも言う。でも、アイツだってそのつもりでオレと一緒にこの学園に入ってきたんだから……」

「そのつもり?」


 カナタとエイジが顔を見合わせた。


「だって、ナギさんは知らなかったんでしょう?あのゲームのこと」

「ああ。あんなコトが行われてるなんてな。でも、こんなもの貰ったら、とりあえず顔出さなきゃ……」


 そう言って、例の「青いカード」を見せた。


「……秘密って……。なに?どんな魅惑でエロティックな秘密があんの?あの美人姉妹に?」


 そう言ったエイジは、間髪入れずにナギに蹴りをいれられた。


「暴力ふるわないって言ったばっかじゃん!」

「うるせえ!今のは保護者として当然の行動だ。古くさい単語でうちの妹を辱めるな!」

「何か、こんな脅迫めいたものを貰う心当たりがあるってコトですよね、ナギさん?」

「……まあな。そのためにわざわざこの学園に入ったんだから」


 神妙な顔をするカナタに、エイジもまた、冗談を言うのをやめた。

 ナギの顔もまた、真剣なものになる。


「妹たちがこの学園に入学してから……家に帰ってこなくなったんだ。夜、連絡しても通じない。携帯にも、寮にも、学園すらも。警察に連絡しようかと思うと、学園から「教師」と名乗るヤツがやってきて、妹さんは元気にやってますって言う……」

「実際、元気にやってるじゃん。目立つし、有名人だし」

「そうなんだ。そこだよ!連絡がつかないなら、と思って、学園に直接来ようと思ったんだ。でも、部外者だからっていれてもらえない。戸籍上は兄妹なのに?おかしな話だろ?そんなことあるか?」

「いや、無いと思うよ。みんな普通に家にも帰ってると思うし」

「だから、絶対この学園がおかしいから、何とか中に入ろうと思って……」

「……入学してきたわけ?院から?すごくない?うちの院って、ほとんど外部の学生とらないんだよ?」


 中にいるからこそ、ナギのすごさが判る。彼が良くも悪くも学園で有名なのは、何もその美貌のせいばかりではないということだ。


「ナギさん、妹さん達とは学園に来てからあったんですか?」

「会ったよ。もんのすごいフツーだった。こっちが大騒ぎしてたのなんか、全く知らないみたいだった」


 ナギの声のトーンが落ちた。

 彼の気持ちが下がっていく様は、カナタとエイジにも手に取るように判った。


「帰ってこいって言ったら、テストが終わったら、だの、夏休みになったら、だの、帰るようなことは言うくせに、動こうとしない。それ以外はフツーなのが気持ちが悪い。彼女たちは彼女たちのままなんだ」

「でも……秘密、か……」


 カナタはナギから青いカードを受け取り、その文章を何度もなぞった。


「『知りたければ今夜12時、学園のはしにある第1の塔で待て。その際、誰でも良いのでパートナーとなるべき人物を1名だけ連れてくること』……ゲームの説明が全くない……」

「ああ。しかも、それはオレの部屋の机の前に貼ってあったんだ。寮長に『誰か入ったか?』って聞いても、記録が残ってないって言うし」


 カナタとナギが二人でうんうん唸っていた。ちっとも考えが前に進まないらしい。

 


「事実、これはゲームへの案内としては本物だったわけだ……。だって確かゲーム開始のときに、審判が『王と騎士の申請はなかったけど、名前の登録はあった』って言ってたな?しかも、この手紙だと誰を連れて行くか指定はないのに……」

「……ユズハの名前を言ってた、確か!」


 エイジの言葉に、ナギが叫んだ。


「そう。審判は『名前は登録済み』だと言った。何故か中緒兄だけでなく、田所さんの名前までね。中緒兄以外は誰が来るか判らなかったはずなのに。ここから考えられることは二つ」

「一つ、ナギがこのゲームとやらを混乱させるために嘘をついていて、このカードはでっち上げ………二つ目は、まるでナギの意志で行ったかのような錯覚を起こさせているが、最初から仕組まれていた。つまりこのゲームの意志はナギに何かさせようとしていた」

「田所さん!いつの間に?!」

「ユズハ!何しに来た」


 いつの間にか、彼らの話の輪の中にユズハが入っていた。

 ユズハはナギと目が合うなり、彼の頬をつねった。


「お前は!何を勝手に一人で聞き込み調査をやっとるか!お前一人で何が分かると言うんだ!お前のその頭で!」

「いてえって、いてえって!バカにすんな!てか、何だよもう、この手紙はオレ宛に来たんだから、お前は別に関係ないだろ?」


 勝手に巻き込んでおいて、勝手に捨てるナギがどうしても許せないユズハ。

 無言でナギにガンつけたまま、両手で頬を引っ張った。


「でも、もう田所さんもゲームの駒に登録されちゃったから、ダメじゃない?ねえ、エイジ」

「そうだよな。しかも、オレ達に勝って、ポイントまでついちゃってるし」

「3つ目……。指定の場所にいた君たちが何か知ってるにもかかわらず、しらを切っている……」


 ナギの頬をつねったまま、ユズハはカナタ達にすごんで見せた。


「え?いや、オレ達ホントに何も知らないし……。大体、ゲームの開始方法だってナギさんと違ってたの、さっき知ったばかりなのに?!」

「そうだよ。てか、目が本気じゃん!……田所さん怖すぎるって!」

「なんへおえはこわくなひって……」


 ユズハがナギの頬を引っ張り回すので、まともに喋られないらしい。


「はるせ」

「あんだって?」

「はるせ!」


 無理矢理ユズハの手を離そうと引っ張り、自分の頬を一緒に引っ張る羽目になる。もちろん、余計に痛い。


「こいつら、多分オレ達のことは何も知らないって。さっき話をしたんだ」

「お前が話を聞いたからって、どうなる?」

「てめえ、オレをバカにしてんな?」

「お前はまごうことなきバカだろう。何を根拠にそう言える?」

「オレのカンだ!」

「うっさい、バカ」


 ナギを突き飛ばしたあげく、無視してカナタ達の方へと歩み寄るユズハ。

 表情はほとんど変わらないが、妙に威圧感のある男だった。思わず後ずさりするカナタとエイジ。


「ホントですって。オレ、ナギさんの妹の顔も知らないのに」


 思わず構えてしまうカナタ。しかし、間合いを詰められてしまう。


「……カナタ、構えるのはやめとけ?そいつ、うちの門下生だから、どーせオレと同じ理由で暴力とかふるえないし」

「そう言うことばらすなよ、ナギ。黙っときゃ良いんだって。あと、判んないように処理するとか」

「だから、そいつら大丈夫だって。人をはめようとするヤツが、自分の相方ケガさせられたこと、いつまでも根に持ったりしねえって」


 思わず、エイジの顔を見るカナタとユズハ。照れくさそうに顔を伏せるエイジ。


「……エイジ、まだ昨日のこと怒ってたわけ?それで、今日のゲームは自分が騎士になるとか言ってたの?」

「別にそうじゃねえって。ただ、カナタは昨日のケガが残ってるから、連戦はきついだろ?」

「そうだけどさ」

「ちょっと待て」


 ユズハから逃げつつ、話をする二人の間に、ナギが割り込んだ。


「何ですか?ナギさん」

「お前ら、今日もあの『塔』に行くのか?呼ばれてんのか?」

「いいえ。ゲームは自己申告制なんですよ。オレ達あと1ポイントとれば次のステージに行けるんで」

「自己申告制?何でオレだけわざわざ呼ばれたんだよ。わけわかんねえ。しかも何、次のステージって?」

「ですよね。ナギさんだけなのかな?そう言うのって。他の連中ってどうなってんだろね。ゲームした連中と外で会ったことなかったしな。訪ねてきたのなんか、ナギさんが初めてだし」

「……てことは、やっぱり、何も知らないのはオレ達だけってコトになるな」


 ユズハが難しい顔でそう呟いた。もう、彼の意識はカナタ達の元にはなかった。


「君ら、6ポイント持ってるって言ってたよな?審判が。てことは、あんなコトを6回やって勝ってきてるってコトだ」


 この広い学園を、ユズハは見つめていた。

 その視線の先をナギも、エイジも、カナタさえも見ていた。


「きてますよ?」


 自分に視線を合わせることをしないユズハに視線を移し、答えたのはエイジだった。


「他に、6回分こんなコトやってる奴と会ってるってコトだろう?」

「田所さん、それで他のヤツに話を聞きに行くっつーのは、止めませんけど、無駄足になるかもしれませんよ?」

「なんで?」

「だって、あなた達と面識のない人たちばかりだし、基本的に口外しないってのが原則だし。あと、昔はそうでも、今は同じ状況にないかもしれないし」

「同じ状況にない?」

「はい。今はオレ達もあなた達も同じように塔でゲームをしてますけど、全12戦の内、7ポイント先取で、次のステージに行けるんですよ。どこにあるか知らないけど。そいつらは、多分新しい世界にいるわけで、オレ達と同じ所にはいない。逆に、ドロップアウトしてるヤツもいるはずだ」

「ああ、確かに書いてあるな。このルールに」


 そう言ったナギの言葉に、思わず振り返るユズハとエイジ。

 いつの間にか、カナタとナギは二人で携帯を持っていた。


「……ルール?書いてあるって……?」


 ユズハがカナタとエイジを交互に見つめた。


「さっき言ったろ?メールをもらうって。そのメールに、簡単なルールが書いてあるんだ。てか、そんなもん、転送してんなよ!どこから来たかわかんねえし、どこでメアド知られたかもわかんねえのに!カナタ!」

「うーん……そうだけど、なるようにしかならないんじゃない?」

「お前だって、勝ち進みたいだろ?」

「そうだけど」


 予鈴が鳴り響く。ここは高等部だったのをナギ達は思い出した。


「カナタ、行こう。ルールを教えたんだから充分だろ?そのカナタが送ったメールが、オレ達が最初にもらう全てだよ」


 ナギはじっと、携帯の画面を見つめる。


「お前ら、今夜もゲームしに行くって言ってたな。どこだ?」

 

 ユズハが、エイジに声を掛けた。


「第6の塔だ。でも、部外者は入れないんじゃないかな?」


 挨拶をするカナタの腕を引っ張り、エイジは美術科の棟へ戻っていった。

 それとほぼ同時に、ユズハの携帯にナギの携帯からメールが転送された。


「とりあえず、そのゲームをするしかないだろう?今の状況じゃ。疑っても良いし、とれる手は全部使えばいいけど、まずは……」

「そうだな。闘うしかない。だから、お前はオレをおいていくな。このゲームは二人でしかできないんだから」


 そう言ったユズハの台詞にいささか不愉快そうに、ナギは頷いた。


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