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三人のお茶会?
「兵器としてはむいてるのにな」
急にドアのほうから声がした。
見ると、真っ黒なまさにマントを着た男が立っている。
「おや、しーちゃん、久しぶり」
イオが声をかけると彼はテーブルの方に歩いてきた。
「やあ、イオ、久しぶりだね」
そういいながら今のいままで椅子が二脚しかないこの部屋に、言葉通り『何処からか』もってきた椅子に腰掛ける。
そして何時の間にやらテーブルの上には空のカップとソーサーが一組増えている。
全く…、と思いながら幾度となく繰り返した注意を口にした。
「紫苑、玄関からそしてドアから入れ、椅子はあとで帰しとけ、ここで魔術を使うな」
紫苑は何処吹く風で笑う。
「相変わらずだな、関屋」
「それはてめぇだろ」
「でも現れる先をドアの前にはしたからいいじゃないか。
何となくドアから入ってきた雰囲気がするだろ」
「雰囲気の問題じゃない」
そう話していると程よくお茶が蒸れたので紫苑と空になっていた俺とイオのカップに注ぐ。
見ると、紫苑はまた魔術でも使ったのだろう、席をたった様子でもないのに壁にマントがかけられている。
しかし面倒臭くなったのでちらりと目で見やるだけにした。
マントの下には白い開襟のシャツに濃紺のスラックスと普通の人の服装だ。
時に何処ぞの民族衣裳を着てたりもするので全く謎なやつではある。
帰らずの森の悪魔と呼ばれ、魔術師として名を馳せているだけでも十分変だが。
落ち着いたところで紫苑が切り出した。
「イオ、さっきの話だが、それで結局アトラクションはできるのかい?」
「ああ、うん、出来たよ」
出来た?
安全やら時間やらの難点がどうこう言ってただろうに。
「それは、もう完成して公開されるかされたってことか?」
紫苑が尋ねる。
「うん、完成はしてる。
最近ね。
けどまだ公開はされてない。
なんか、それがつくられたのは『エクリプス』っていって、
そういう今までに無かったような体験のできるアトラクションを集めた新しくできた遊園地なんだ。
プレオープンとかやらずにその開園記念のイベントの時に初披露するんだって」
そういうものか。
そこで俺も口を挟む。
「問題点とやらは解決したのか?」
「したといえばしたっていえるのかな」
「歯切れ悪いな」
「そうだね。結構厄介なことなんだよ。
安全にかんしては色々試してみて大丈夫だったものを使ってて、
アトラクションゾーンに持ち込みをさせないようにはしてる。
けど何がどう起こるかはわからないし。
時間にかんしては剥がすのと逆で強制的に戻すことにしてる。
でも安全な技術とはいってるけど結局長期でみてどんな障害を生じるかは今のとこ予測不可能だから。
私と父様はそういうリスクも説明してる。
だから色々の責任はアトラクション側に生じるけど」