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いわゆる はじまり
いたい。
たすけて。
引っきりなしに其の声ばかりを拾う。
俺の頭に埋め込まれた機械は辺りの電波一切合財を受信するらしい。
そして此処は戦場。
勇敢な戦士と讃えられる人も戦いとは全く関係無い人も思っていることは同じということか。
煩い。
俺は早く立ち去るため目を閉じ呪文を唱えた。
『時間を司る者、空間を司る者、我は其の係累なり。
我は破壊を望む。
圧縮せよ』
いつも通り音も無く、只だ圧力の余波のみが微かに感じられる。
そしてゆっくり十を数え目を開く。
俺を基点に周囲は見渡すかぎりまるで巨大な岩でも落とされたかの様に潰されている。
いくばくか残留してはいるものの粗方声は消え去った。
「さっぱりしたな」
正直それくらいしか頭に浮かばなかったが、そう呟いて其の場を去った。
俺は祕稀、しがない傭兵だ。