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タナトス  作者: とも
ワンダーランド
27/29

22



イオから連絡を貰ったのが3日前。

それから必死の思いでカンパニーの力でジャンクヤード、廃棄場から塵をかき集め、 見てくれを整えて、動かしたのがこれ。

プレスも客も従業員も全て自動人形。

で更に、カンパニーの直属の魔術師部隊をつれてきてエクリプスを包囲してる。

そいつらにはエクリプスに張り巡らされた魔術の陣の綻びを作ってもらって、

月蝕の魔術は保たせておきながらも生命を吸収する魔術は破綻させている。

簡単には吸収できない強い精神を持った傭兵しかいない。

そしてパレード前にアライエル・ハドソンに連絡を取って、オベリオンのやつらは傭兵に取っ捕まえてもらったらすぐに放り出すようにした。

ということで、壊れかけた生命を吸収する魔術はそれ自体が発動できなくなっているし、

イン・ユエが無理矢理発動させても吸収できるようなものがない。



少し驚いた顔で俺を見ている秘稀とやっときたかと呆れた顔のイオにそう説明した。

するとイオも言った。

「うん、すぐにわかった。あれは人間に似てるだけ。全く違う。物。だから全然平気」

それを聞くと、俺の弟は渋い顔をしてうなった。

「どうりでこいつが普通に歩いていたはずだ。そして機械に雑音が入らない訳だ。くそ、なんで気づかなかったんだ」

お前の心が腐ってるから、といってみようかと思った。

しかし冗談でもそれをいったら確実に秘稀は怒るだろうし、遅く登場した手前からかうのはやめにして、一応愚弟に仕方なく説明してやる。

傭兵で魔術師の端くれ、人の気配などに敏感でなければと思い落ち込んでる姿もおもしろいのだが。

「アンドロイドでもよかったんだが、あれも心があるという説だからな。

ルゲルが何を基準に命を決めてるかわからないから、壊れたり性格が変わったりしたら事だから、全て人形にした。

カンパニー製だから、結構力はいってるぜ。

それにな、仮にも魔術師相手だから紫苑が絡んで細工はしてもらってるぜ。

バレたらこの計画は即効終わりだからな。

傭兵は人の気配みたいなものを感じるだろう。そして魔術師は人に潜むわずかな魔力をも知覚する。

それはつまり生命の影みたいなものさ。鏡に映った映像みたいなもの。

そこを本物らしく魔術でごまかしてもらってる。

でも、イオはタナトス自体を知覚する。つまり生命そのものを感じている。

これは魔術みたいな細工は通用しない。

なんていうかな、目隠しに扉を閉めたけど、半分から下はなく背の低いイオだけはちゃんと見えるってとこかな。

だからお前が気づかなくてもそれは当然ってことさ」

そうフォローしても秘稀はまだごちゃごちゃ言っている。

しかしこう無駄話をしている場合ではない。

「ほら、秘稀、捕まえろよ、イン・ユエを。あの黒い影は力はあるかもしれないが、それを使いようがないんだぜ。

なんせ魔術を行使できるのはイン・ユエだが今は疲れきってる」 そう促すと、秘稀はイン・ユエに向かい走り出した。

全く手間のかかる。




そう思って見ていると、イオが寄ってきた。

「遅い」

ぽつり、と一言。

でもそういわれても俺も頑張った。

一応医者もやってるし。

その合間にいろいろ画策して、人形も集め人も集めお金も集め。

口には出さないが、苦笑する。

「でも、お疲れ」

さっきのは冗談だったんだろう。解りにくいけど、こっちのが本音だと解る。

この子も長い付き合いだ、聡いということはよく知っている。

「まだ終わってないぜ」

そう言って秘稀を見ると、意外に体術の巧いイン・ユエに苦戦していてまだ捕まえていなかった。

そしてあの黒いやつはどこに行ったのだろう、姿が見えない。

「イオ、ルゲルはどこに行った?」

尋ねると青い顔をして少女が言う。

「ごめん、関谷、見失った。近くにいるけど大きすぎて場所を絞れない。気をつけて」

少し手が震えている。

強大な力をもつというルゲルに怯えているのか。

俺は魔力なんざ全然感じないからその恐ろしさはわからない。

だからこそ、明るく言ってやる。

「大丈夫さ、俺の方が上だ」

ぽんと頭を撫でると少し安心した顔になった。

しかし、急にイオが叫んだ。

「来る!」

彼女の視線をたどるとすぐ目の前に黒い影があった。

魔力の大きさってのはわからないが、禍々しさはたっぷりだ。

そこで俺はイオを放すと、紫苑に借りてきた秘密兵器を構えた。

「とりゃ」

適当に気合いを入れながら黒い影を一刀両断。

影は霧散しながら小さくなって、俺たちの目の前に小さな黒い『何か』よくわからないものになった。

「関谷、すごい。大丈夫?」

イオが寄ってくる。

「全然平気。一撃必殺って感じだろ、これ。紫苑から借りたんだ。退魔の剣らしいぜ。魔力を食らって生きているお嬢さんだとさ」

魔を祓う剣。

ルゲルに効くかは不明と言われていたのだが、ばっちり効果があった。

ある意味賭けだったのは内緒にしておこう。

まじで、よかったよ。

これはこれで禍々しいものだが、紫苑の支配下にあるうえ割と気分屋らしく暴走するよりは寝てるらしい。

こいつにルゲルは少なくなっていた魔力をほとんどとられてしまって、多分今目の前にあるのは核と言えるものだろう。

あっけなく、小さな固まりに成ってしまった。



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