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タナトス  作者: とも
ワンダーランド
24/29

19



話を進めるのに一番適役だろうと思ったので、俺が話を進める事にした。

「秘稀、知っていることを吐け」 そういうと、秘稀はゆっくりと話し出した。

まとめると、だいたいこんな感じだ。




昔、魔術師の中で色々問題がおきて、人の魔力や生命すらを自分の力に変えてしまう化け物が生まれてしまった。

ひとまずそれは沈静化したものの、それを再び起こして生命を吸収させてそいつがえた力を横取りして力を得ようとしている輩がいる。

そいつらが、今回のテロを企んだ。




魔術師の問題やら化け物について、或いは何処からこのネタを仕入れたかということはうまくごまかしていやがる。

秘稀も成長したなあ。

一番最初にあった時は、あれは何処の戦場だったか。

敵陣にやたらこずるい攻撃を仕掛けてくる魔術師がいるって、見に行ってみたら俺の子供より小せぇガキがいてびっくりしたっけ。

体にはあまり負担をかけないようにこてんぱんに叩きのめしてやったら、最後俺達が報酬としてもらう予定だったダイヤモンドが燃やされて消しくずになっていたのを見た時は笑ったな。

あんなくそがきが今じゃあ責任者として情報を集め、俺達と肩を並べている。

などと、感慨にふけっていると顔に出たのだろうか、秘稀が不満げな顔をしてこっちを見て言った。

「おっさん、次」



おっさんは酷いだろうと思ったが、反論していては大人げがない。

話を先に進める。

「マーフィスは今の聞いてどう思う?」

やつは、少し考え込んでから言った。

「私は、恥ずかしながら殆ど情報が集まりませんでした。

なので秘稀が情報の信憑性を保証するというのなら、それが事実として話を進めますね。

正直、ただのテロなら楽ですが、魔術が絡むと厄介ですね。

大方の傭兵は戦場の大ざっぱな魔術には慣れてますが巧妙に組み上げられた本物の魔術には不慣れです。

役に立たない所か、邪魔にすらなってしまうでしょう。そこをどうするか、ですね」

確かに、なぁ。

魔術師の秘稀はともかく、戦場とは異質の緻密で巧妙な罠のような魔術は対応しにくい。

人数の問題ではなくなってくる。

「そうだな。それはかなり重要な問題だ。ちゃんと考えて結論を出す必要がある。

だから先に情報を全部だしてしまおう。

正直、俺も何も新しい事実なんざ見つけられなかった。で、嬢ちゃんは何を知ってる?」

俺が聞くと、嬢ちゃんはこっちをむいて一言。

「イオだ」

ああね、嬢ちゃんじゃなくて、イオね。

「イオは何を知ってるんだ?」

言い直すとイオはぽつぽつと答え始めた。

「だいたいわかってる。ただ、わからないのは、何を、したらいいか」

その話し方はもどかしいが、仕方ないのだろう。

「あれは罠だった。力を解放したら、同じ力に。だから、確認。 確認が終わったら、後は行動しかない」

うーむ、いまいちわからない。


「一番人が多くなるのは開園初日。傭兵も、プレスも、客もいる。 だから、テロが起こるのも。

だけど、あの人が言ってたのは、多分、心配いらない」

イオはそう言ってマーフィスの方を見た。


「ああ、まだ言ってませんでしたね。マーフィスです。マーフィス・グレンダ」

そういえばまだ自己紹介をしていなかったことを思い出した。

慌てておれも言う。

「アライエル・ハドソンだ」


イオはマーフィスから視線をずらし俺をを見て、そして満足げに頷いた。

なんとなく、解ってきた気がする。

この少女は、絶対的に言葉が足りないのだ。

そして、それを補うべきコミュニケーション能力も全く無い。

まるで幼児だ。

足りない分は周囲が読み取らないといけない。

「それで、どう心配入らないんだ?」

俺が促すと、また話始めた。

「うん、えーと、つまり、魔術を使った、テロじゃないってこと」

頷いて相槌をうつ。

「多分、必要なのは無防備な状態の人。恐慌状態になってたらなお良い。

あの力は魔術よりもむしろタナトスに似ているんだ。 つまり、その方が対象を取込みやすい」

そこでイオは言葉を切った。


三人を見回し、また話を続ける。

少しづつ、饒舌になっている気がするのは気のせいではないだろう。

だれも横槍をいれず黙って聞いているからであろうし、慣れてきてもいるのだと思う。

恐らく、ここでくだらない冗談などを言ったらこの繊細な少女は口を閉ざしてしまうに違いない。

そんなこと容易に想像が付く。

此処にいるのが傭兵の中でも割りとまともな奴ばかりで良かった。


「あれを起こすのに使う魔術、あれの力、見境ない吸収、あれの力の方向の変更、その3つの魔術だけでこの『場』が一杯になる。

だから、お客を怖がらせるのには普通のやり方だと思う。 私はその普通の、なんてわかんないけど」

イオがそこでまた黙った。


それだけ解れば十分すぎるほどだ。

ここからは俺達の領域だろう。




大勢の人。

沢山の建物。

「人込みに紛れて爆弾を沢山しかけてどかん、ってことか」

マーフィスも秘稀も賛同する。

「だろうな。じゃあ、明後日は俺達は爆弾処理に励めばいいってとこだな」

説明は明日すればいいだろう。

「後は班分けかぁ」

これがまた面倒臭い作業なのだ。

適材適所に人を分ける難しさ。

まあ、手腕を問われるとこでもある。


すると、不意にイオが口を開いた。

「秘稀、気づかなかったのか?沢山居る傭兵の中に、魔術師は何人?」 その質問に、秘稀は考え込み、やがて渋い顔をした。


そして、顔を上げると今度は俺に質問をしてきた。

「開園は3日後だっけ?スケジュールは?」

ああ、そのことを話すのを忘れていた。

折り畳んでいた紙を取り出し、三人の顔を見てから話し出す。

「ああ、さっき園長と打ち合わせしたのはこんな感じだ。

えーと、9時開園、9時半から園内放送で園長の挨拶、10時からパレード、平行して中央広場で特設劇、12時から花火打ち上げ。

それから、当日は一日中月蝕でいくらしい」 案の定質問が出る。

「月蝕?」

そう、忘れていたが、さっきの話を聞くとこれも重要なことだろう。

「園の空のイメージをずっと夜空にするんだとさ。ここの名前のエクリプス、つまり月蝕ってやつにね」 厄介なことにテロ行為には最適になる。

まあ、俺達のメンツを考えればさほどではないけどな。

「どうやって?」

秘稀がたずねる。

「魔術で、らしい。一応、テロ対策上やめた方が言いとは言ったんだが、これだけはどうしても譲れないと言われてな。

施設内に広く陣を描くらしいけど、園長は余り話たくないみたいでそれしかわからない。

こっちもプロだ。用意された条件で最善を尽すさ」

さらに、秘稀が言う。

「それに、12時に花火か。明日のテロは恐らく12時の花火に合わせて起こるだろうな。

魔術の開始に音と光の出る花火を使うのは、珍しいし難しい事だが古い魔術師じゃよくやるんだ。

あと他には?」

へえ、さすがはあの悪魔の弟子、といったところか。

そうそう、もう一つ大事なことがあった。

これも言っておかないとな。

「俺がパレード、マーフィスが特設劇場、秘稀が園長付きの護衛だと」

そういうと、今度は秘稀とイオが二人そろえて声を上げた。

「うわ」

これは秘稀。

「あーあ」

そんでもってイオ。

それから二人とも、わかったと了解の言葉を口にした。

俺とマーフィスは怪訝な顔で二人を見る。

別に何もたいしたことは言っていない。

言わば必要最低限の事務連絡だ。

耐え兼ねて、マーフィスが胡乱な顔で尋ねる。

「私には何がなんだかわからないのですが、説明して頂けませんか?」

俺にも事情が飲み込めなかった。

しかし、

「別に。俺は、寝る、色々調べたんだから班分けやっといて」

「私、帰る」

と当の二人はさっさと部屋から退室してしまった。

本当に必要なことであれば話すだろうし、仕方が無い。

という訳で、俺はマーフィスと二人でだらだらと班分けをしたのだった。




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