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タナトス  作者: とも
ワンダーランド
22/29

17



うざったい程に忙しい。

本業なのか趣味なのか解らない医者も今までになく呼び出され、副業と言ったら殴られそうな頼まれ事もやたら繁盛していて。

いつもなら悠々自適に有閑生活を送っていたはずなのに、と愚痴すら零れてくる。

加えてイオは俺のとこに足を運ぶ暇が無いと何故か祕稀が薬を取りにくる始末。

可愛くねぇ愚弟は薬を渡すや否や帰りやがるし。

茶の相手もいやしねぇ。



日々鬱々と患者を治療する。

しかも俺は特殊な患者しか診ないから余計に疲れるのだ。

んで、夜は副業に精を出す。

出したくは決してないが、出さざるを得ない。



何をしているかと言えば平たく言えば情報処理だ。

山の様に集められた真偽の程も定かではない絶対機密の数々。

それらを分類し分析、方向性を与える。

そして状況解析や事件の結果推定、謎の解決そんな事をしている。

別に機械にやらせればいいと思うのだが、人間には機械に無い閃きがある、と何故か俺に押し付けられ、

いろいろ逃れられない状況を作られたため仕方なくやっている。

扱っている内容がどれもこれもやばいやつばかりで、全くどうやって集めているんだか。

んでそれを総て知っている俺なんかいつ殺されてもおかしくないんじゃないかと思う。

まぁ大抵の奴にはやられはしないだろう。

だから腐れ魔術師の話しくらいじゃ今更動じやしない。

ただ、イオを巻き込むということは余り感心しないがな。





まるで機械の様に報告に目を通しているとき、或一つの記事に目が止まった。



『月陰旅団の最古の記録発見』


月陰旅団というのはもう何百年も昔に存在した団体で、

あらゆる土地の歴史に記録が残っているのにはっきりとした正体の掴めていない伝説的存在だ。

彼らの行く先々で事件が起きたとも事件の起こった場所に彼らが駆け付けていたとも言われている。

団体を正義と信望する人々がいる一方で危険団体と非難糾弾する人々がいるのだ。

団長の存在は謎に包まれており、不老不死だとか更には神や悪魔だという節まである。

今回見つかっのは初期の副団長の手記らしい。

所々読めなくなってはいるが、大部分は解読されたとのこと。

団体の目的と団長の正体が判れば大ニュースになるだろう。

添付してある手記の要約に目を通す。



『月の神に祈る。力を捧げる。』


繰り返し出てくる言葉。


…なんか聞いたことのあるような文句だな。


あーもー。

物凄くくだらない筋書きが見えてきた気がする。

識りたくない。

本音だが、目を逸らす訳にはいかないのだろう。

自分の記憶力が煩わしい。

そもそも俺がなんで情報処理なんぞをやらされているかと言えば、俺の記憶力と処理能力、

思考力が機械と比べものにならないほど優れているらしい、という事による。

忘れたくとも忘れられず、深読みするつもりはなくても絡繰りを読み解いている。

俺としては厄介なことこの上ないこの能力がどうしても入用だと口説きに口説かれ。

仕方ない。

その俺には実感出来ないが、驚異(脅威とも言われる)の頭脳が、

要らない記憶を呼び起こし、その繋がりを分析し始めた。




渋い抹茶にとっときの高級和菓子を出して食べる。

面倒な事を考えるにはエネルギーがいる。

脳にも心にも。




『永遠の闇を照らす明かりの会』

『諸兄什器殺人事件』

『ルナ』

『神様が強くなれるからといって下さったので僕はただ従ったのです』

『シャドーウォーカー』

『力を求めて』

『つきのあかり』

『リリークナー事件』






歴史上に登場する幾つもの団体や事件。

それらは一見して繋がりのない別個の事象だ。

しかしある視点から観ると全てがはっきりとした流れにある事がわかる。

逆さ向きの色の反転した地図のように。



「これで王手ってことか?それとも積まれたのか?」


呟く。


リーン。


通信が入ってくる。


『遊園地で遊ぶから来い   イオ』


とりあえずは、始まった。




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