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タナトス  作者: とも
ワンダーランド
16/29

11



うわ、怒ってる。

しぃーちゃんが怒ってる。

…やっぱり美人だな。

なんか話すかな。


私たち三人の視線がじっと固まって動かない。

関谷は 話すことを放棄したらしい。

見つめる。





「『咎人の祭壇の地』」



暫らくして、あきらめたようにしーちゃんが口を開いた。


「『咎人の祭壇の地』、我々太古の魔術師のあいだではそう呼ばれている」


怒ってると思う。


でも口調は物凄く穏やかで。


「祕稀、この場所は関谷も話したがらないように表の世界で禁忌とされているだけでなく、

私たち魔術師の世界、裏の世界でも忌まわしい出来事とされている。

…そして私にとっても話したくない事だ。」



祕稀は黙ってきいている。




「それでも聞きたいか」



「師匠が話してもよいと思うなら」



祕稀は答える。

ずるい答え。

道を一つに絞りながら相手に決断を委ねる。

こういうとこ、関谷に似ている。

しーちゃんが此処に来ている事こそが答え。

聡明な魔術師は全てを見通す。

会いに来たというのは話に来たと同義。



「だがな、決断はお前がしろ。話を聞くか聞かないか、お前がそれを選択するんだ。」



婉曲に決断を逃げようとする祕稀をしーちゃんが逃すわけがない。

関谷なら対等に渡り合えるだろうけど、祕稀はまだまだだ。


だからこそ、師匠と弟子なのだろうけど。


祕稀は躊躇う事無く答える。




「聞く」



「世界の禁忌に触れる事になってもか?」



「ああ」



「それ故に死ぬことになったとしてもか」



「構わない。

 勿論死ぬつもりなんかない。

        そう簡単には死なないさ」



 

 

その言葉を聞いてしーちゃんが漸く笑みを浮かべた。




そしてこう言った。





「それでこそ、私の弟子だ。」




先程までの怒りの雰囲気は微塵もない。

演技だったらしい。

祕稀は表情にはでてないが恐らく驚いているらしく黙って凍っている。



「いや、お前がなんて答えるか楽しみにしていたのだよ。

 詰まらない事を言ったら破門してやろうなど考えてみたりな。

 でも中々面白い事を言ってくれたな。

 これで晴れてお前は一人前という訳だ。」

 

しーちゃんのテンションが若干あがっている。

なんかさり気なく大事なことを言っている気がするのだけど。



「実はな、『咎人の祭壇の地』の話は魔術師に口伝で伝わっている話なのだよ。

それを聞かせてもよいと思える人物であり、

聞こうと思える人物であることで一人前の魔術師と認められる。

勿論伝承の時以外は触れてはならず、記憶の深遠に沈めておくべき事だ。」




ふうん。

…それじゃあしーちゃんは祕稀を試したということ?


「まぁ、偶然今回他の事情とも重なったがな」


私の心を読んだかのように付け加えられた言葉。

はっきり言って全く信用ならないけど。

それでもまぁこれで漸く話が聞ける訳だ。



その時今まで黙っていた関谷が口を開いた。



「紫苑、俺とイオも話を聞いてもいいのか?

魔術師が口外しないというのはつまり知ったら殺されるということだろう」



ああ、そういうことか。

関谷、賢い。



とりあえず私は関谷に任せて黙ることにする。




「大体そういうことになるな」



しーちゃんは余裕綽綽に答える。



「えー」


私はなんとなく不満そうに言ってみる。

別に何も思ってはいないけど。


すると、しーちゃんは芝居に付き合ってくれてるのか

すまなさそうな表情をして私の方をむき、

そして馬鹿にした顔で関谷を見ていった。




「だが、お前がそんなことさせないだろう。私もイオは守る。お前は勝手にしろ。」



びゅんとお茶入りのカップが前触れなく投げ付けられた。

勿論関谷からしーちゃんに向かって。

こぼれる、ってか危ない、と慌てても

しーちゃんは臆する事無く動じる事無く一滴も盛らさずカップを掴みテーブルに置いた。



「お代わりを有難う。それでは漸く話そうか」



なんやかやと横道にそれながら、こうして話は始まった。









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