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凄い。
美味しい。
初めて食べた。
『ゆきのひとひら』…噂には聞いてたけど、まさかこんなに美味しいとは。
祕稀か…。
正直言って嫌いじゃない。
寧ろ思った以上に好意を抱いてると思う。
私が自分から声をかけようと思うくらいだから。
理由は、大体わかってる。
祕稀は、結局は関谷の事が大好きなのだ。
関谷は自分が嫌われてると思ってるが、
何でわからないかな、
分かりやすいくらいだと思うのに。
まあ祕稀も屈折しているというか、直な態度を取るわけでもないし、
祕稀は祕稀で自分が関谷に嫌われてると思ってるから、
尚更好意を隠そうとしてるけど。
その辺を考慮しても、関谷が馬鹿で訳が分からないことが一番の原因だろう。
ともかく、祕稀が関谷の事を強烈に慕ってるから、彼に好感を持っている。
何となく、だけど。
しかし、わざわざ会いにきたか。
可愛いな、祕稀。
「ルゲルの平野!」
関谷の雰囲気が一瞬にしてかたくなった。
ルゲルの平野?
何だろ。
「イオからエクリプスの土地についてちょっとした話を聞いたんだ。
土地自体が力があるとな。
それで色々調べたりしてそこまで行き着いたんだ。
というよりもそこから先には進めなくて。
だから兄貴ならなんかわかるだろうと思って」
祕稀の言葉を聞いて関谷が今度は私の方を見てきた。
無表情に。
「えー。
私は場所自体に力があって、
そういうとこをオベリオンが狙ってるって関谷から前聞いたってくらいしか言ってない」
関谷はまた視線を戻す。
「だから俺はそこから自分で調べたんだ。イオには関係ない」
暫らく黙ったのち、関谷はやっと口を開いた。
ああ、なんか機嫌が悪い。
「『ルゲルの平野』という言葉自体が禁忌になっていたと思うが」
「かもな。調べてもどこにも載ってなかったから。でも俺は土地に『聞いた』んだよ」
また沈黙が続く。
「仕方ない。でも『ルゲルの平野』についてなら俺なんかよりお前の師匠の方が詳しいと思うぜ。」
そういうと関谷はしーちゃんを見た、ので私も見た。
しーちゃんは笑っていた。
まるで人形のように。