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教義 と 正義
「あの、今回、皆様をお呼びしたのはですね、あの、予告状が届いたのです、テロの予告状が。
2週間後の開園の日にイベントをおこなうのです、そのイベントのクライマックスに、園を壊すという予告状なんです。
差出人は聖なる予言を成就させるための教団、通称オベリオンという団体です。
皆様もご存じのかた、いらっしゃるのでは?」
オベリオン、知ってるも何も、ここにいる奴らなら大方、大なり小なりかかわったことがあるのではないだろうか。
それも敵対したやつらしかいないだろう。
あの団体は予言の成就といいながら至るところで火種を起こす。
俺が先先月受けた依頼も確かオベリオンが原因だった。
病気を治すために七人の女性の魂が必要という予言の成就のため、三人の女性が殺された。
四人目の時点で俺が阻止して、犯人も捕まった。
犯人はオベリオンの末端の信者で詳しいことはしらず、
それでは予言を与えた人物を探そうと思ったら教団の支部はもぬけのからで、後には手がかりも何も残ってなかった。
それだけならただの危険思想な教団だが、実はもっと厄介なのだ。
その殺人事件で亡くなった女性は一人は有名事業の後継ぎ、
一人は某企業の子会社で一番売れてる企画の担当者、
もう一人はある会社のイメージキャラをつとめていた女性。
三人の死により、株価の大変動が起き、その際巨額の利益を得た人々がいるという話が有った。
それがオベリオンといわれているのだ。
つまり、何らかの意図を持って事件や事故を仕組んでいるらしい。
本当に厄介な存在である。
またオベリオンにはなぜだか軍人やら学者やらが惹かれて入っていってるようで、そういう意味でも侮れないのだ。
「冗談かとも思ったのですが、その外にもいくつかオベリオンから予告状が送られていて、
それか実行されたので、やはり本当だと信じざるを得ません。
当初はマーフィス・グレンダさんを雇っておりましたが、
イベントの規模がかなり大きいので何かあったら一大事なのです。
そこで万全をきするため、彼のご紹介により、皆様にもご依頼することにいたしました。」
たどたどしさが消えた園長の言葉を思わず聞き流すところだったが、ちゃんと聞いていた。
「マーフィス、てめぇ、全部知ってやがったな」
マーフィスのほうを向くと相変わらず優雅な笑顔を浮かべている。
「ええ、まあ。…だって、貴方、騙すと反応が面白いんですよ」
「だって、じゃねえ。…『風』」
俺は一言で小さい『風』を喚んでマーフィスの前髪を切り落とした。
マーフィスは「セットしてるのに」と全く顔色に変化なくいう。
もちろん、狙えたのは髪だけではない。
ただ、俺が今は髪以外を標的にするような馬鹿ではない、そうふんだうえで微動だにせず微笑みを絶やさないこの性格。
ほんとに殺してやろうか。
なんて考えてみたりする。
ところがマーフィスは気にせず園長のほうを示す。
「話は終わってませんよ」