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「完璧令嬢」と言われた私が婚約者から「ハリボテ」と罵られてからの一週間  作者: 真岡鮫


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6.完璧な令嬢とは……1日目①

 翌日、リリアージュはルーベンスに言われた通り王城に上がった。


「あら? ここは……」

「ルーベンス様から、この部屋にご案内するよう仰せつかってございます」

「そうなの……ありがとう」


 部屋には暖かな雰囲気のする赤茶色のソファーと細やかな細工が目を引く木製のテーブル。そして、その上にたくさんの本が積まれていた。


「まぁ……ブルースターだわ」


 リリアージュは部屋の隅に置かれた花瓶に歩み寄り、レース越しに差し込む柔らかな陽光に目を細めた。


「待たせて申し訳ない。おはよう、リリア嬢」

「おはようございます、アラン様」

「どうぞ、座って」

「ありがとうございます……」


 そよ風のような軽やかな足取りで部屋に入ってきたアランは、彼女と向かい合うように腰を下ろした。


「アラン様、昨日は本当に申し訳ございませんでした。このようなわがままを……」


 眉を下げ俯くリリアージュに、アランの頬が緩む。


「気にしなくていいよ、元はといえば我が弟の愚行が原因だし……それよりリリア嬢のそんな姿を見るのは、久しぶりだね」

「あっ……」

「あれは……ルーベンスと一緒に木に登って、枝を折った時かな。それとも、水溜まりで服を泥だらけに……」

「もう! それは忘れてください、と何度もお願いしてますのに」


 赤くなった頬を膨らませ、リリアージュは顔を背けた。


「ごめん、そうだっけ? 他にも……」

「まぁ。そんなふうに仰るなら、アラン様だってお兄様と一緒に……」

「ちょっと待った。ごめん、忘れる、ちゃんと忘れるから……そうだよね。今の君は、誰よりも聡明で気高くて……」


 リリアージュの視線に気付いたアランは、バツが悪そうに肩をすくめた。


「なんて……こんなことを言っても、きっと君は信じないだろう?」

「えっ……」

「だって、そうなってしまうほど、たくさん傷つけられたんだから」

「アラン様……」


 喉の奥が痛い。

 震える唇を噛み締めリリアージュは、ただまっすぐにアランを見つめた。


「リリア嬢、私は確かに君のことを完璧な令嬢ではない、そう言った……だけどね、その意味をきちんと君に知ってほしいんだ」

「意味、ですか?」

「あぁ。それを知った上で、これからのことをしっかり考えてほしい」

「それはガブリエル様とのこと、でしょうか?」

「それもあるけど……まぁ、ここからは『特別講義』ってことにしようかな」

「特別講義?」


 リリアージュはまるで子供のように、じっとアランを見つめた。

 

「ルーベンスは、本当に君が好きなんだね」

「まさか……お兄様がまた何か?」

「違うよ、あいつがものすごく優秀だってこと……」

「それは……」

「朝起きたらね、君の思いつきが『妃教育の特別講義』になってた。それに」

「もしかして、その講師が……」

「そう、私が臨時講師になっていたよ。しかもすでに王家、公爵家共に公認……」

「まぁ……」

「昨日の今日で、これだよ……自分の側近でなければ、寒気がしそうだよ」


 大げさに肩をすくめ、アランはリリアージュを見据えた。


「いきさつはどうであれ、この一週間は、私が君にとって『先生』だ……まぁ、こうなったからには手加減しないから、覚悟はいい?」

「もちろんです。アラン様の貴重なお時間を頂戴するのですから、覚悟を持って臨ませていただきます」


 リリアージュが深々と頭を下げると、アランは少し悲しそうに小さく息を吐いた。

 それでも彼は、覚悟を決めたように強い眼差しで彼女を見据えた。


「わかった。なら早速始めようか」


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