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「完璧令嬢」と言われた私が婚約者から「ハリボテ」と罵られてからの一週間  作者: 真岡鮫


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28.リリアージュの答え

「……私も、アラン様にお話したいことがあります」


 リリアージュはアランの手をそっと握り返し、彼を見つめた。


「完璧な令嬢でいること……それは私にとって、使命のようなものでした」


 月明かりに照らされた彼女の声は、ひどく冷たいものだった。

 

「国母となることを考えると、それだけで足がすくむ……それでも前に進むしかできない、そう思っていました」


 わずかにリリアージュの瞳が揺れ、それを追うようにアランの視線も揺らいだ。


「ガブリエル様を支える、私にできるのはそれだけだと……」


 震えるその声に、彼女の手を握るアランの手に力がこもる。


「けれど、そんな私に手を差し伸べてくれたのは……アラン様、貴方です」


 静かに顔を上げ、リリアージュはまっすぐアランを見つめた。


「やみくもに完璧であろうと突き進んでいた私に、貴方は立ち止まる時間を与えてくれた……だから、気付けたのです。心の声に」

「リリア……」

「あの答えを、お伝えしてもよろしいでしょうか」


 静かに頷くアランに、リリアージュは穏やかに微笑みかけた。


「私にとって完璧な令嬢……それは自分を愛し、そのために自らの足で歩み続ける令嬢です」


 凛と前を向き、リリアージュは力強くそう言い放った。


「私は今まで人の理想とするまま、なぜそうするかも深く考えずにいました。でも、それは自分の人生を人任せにする怠慢でした」

「怠慢なんて……」


 リリアージュは静かに首を振った。


「努力すればいいだけなんて……あまりにも楽すぎるでしょう」


 そう言って微笑んだ彼女に、アランは思わず息を呑んだ。


「だから、これからはどんな小さなことも、決して人任せにはしません。このドレスも今日限り……」


 真紅のドレスの裾を摘み、リリアージュは悪戯っぽくアランに微笑みかけた。


「だって……私に似合うのは、大好きなアイスブルーですもの」

「リリア……!」


 アランはいきなり立ち上がり、リリアージュを抱き上げると、そのままくるりと回った。


「ちょっと、アラン様!」


 呆気に取られた彼女はなすがまま。

 夜風を纏ったドレスが、まるで花びらのようにふわりと広がった。


「おっ、おろしてくださいませっ……」

「イヤだ……離すもんか」


 アランは彼女の体を強く抱きしめたまま、リリアージュを見つめた。


「絶対離してあげない……だって、君が選ぶ未来の隣にいるのは、僕だ」


 ゆっくりとリリアージュを下ろし、アランは彼女の手を取り指を絡める。


「アラン様……」


 絡んだその指を引き寄せ、リリアージュは彼の耳元に顔を寄せた。


「でも、それを決めるのは私ですわ」


 アランは一瞬驚いたように瞬きしてから、ゆっくりと目を細めた。


「本当に……君って人は」


 熱を帯びたアイスブルーのその瞳には、優雅に微笑むリリアージュだけが映っていた。


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