23.思わぬ援軍
「リリア……一体どういうことだ!」
ガブリエルはカトリーヌの体を乱暴に引き剥がすと、すがるようにリリアージュの腕を掴んだ。
「ガブリエル、やめるんだ」
咄嗟にその腕を払い、アランはガブリエルの耳元に顔を寄せる。
「……父上の前だぞ。これ以上醜態を晒すな」
「うるさい……わかってる」
少しだけ冷静さを取り戻したガブリエルは、拳を握りしめたまま俯いた。
「リリア嬢、私もガブリエルも少し混乱している……君は一体、どんな約束をしていたんだ」
アランは少しだけ眉を下げ、リリアージュを見つめた。
「黙っていて申し訳ございません……ですが、これは私自身が決めたこと。お二人にお伝えすることは、控えておりました」
「……では、今なら話してもらえるのかな」
小さく頷いたリリアージュに安堵しながらも、アランは彼女の強い眼差しに思わず息を呑んだ。
「ですが、まずは陛下とお話を……よろしいでしょうか」
「あぁ、もちろんだ」
「ありがとうございます……では改めて、陛下にお伺いいたします」
リリアージュはその強い眼差しを、まっすぐ王に向けた。
「陛下、ガブリエル様の言葉は、覚えておいででしょうか?」
「あぁ……リリアージュ嬢は完璧ではない、と。そればかりか、ハリボテなどと……すまない」
「いえ、お気遣いなく。では、アラン様は何と?」
「アランは、そなたの努力を深く認めておった。その上で、あえて完璧ではない、と……」
大きなため息と共に、王はついに頭を抱えた。
「お二人がそう仰る通り、私は完璧な人間ではございません。ですから……」
「いや、待ってくれ。ガブリエルはまだしも、アランが言ったのは、そういう意味では……」
「いい加減、引き際というものをご理解されてはいかがですか……陛下」
「お兄様……!」
ゆっくりとした足取りで、ルーベンスが王の前に歩み出た。
「我がハインツベル家の人間を怒らせるな。王家の方々はどうやらそのことを、すっかりお忘れのようですが……」
ルーベンスは二人の王子の顔を冷ややかに見つめてから、燃え上がるような真紅の瞳を、ゆっくりと王に向けた。
「まさか、陛下までお忘れではありませんよね……?」
小さく震えながら喉を鳴らし、王はすぐさま首を横に振った。
「ならば、なぜ我が妹がこんなところで見せ物にされているのです?」
「いや、これは……」
「まぁ、いいでしょう……どうやらリリアも覚悟があってのことのようですから」
ルーベンスは穏やかにリリアージュを見つめ、王の方へ向き直った。
「ですが、そもそもこのようなことにならないようお渡しした手紙は、当然目を通していただいておりますよね……?」




