表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「完璧令嬢」と言われた私が婚約者から「ハリボテ」と罵られてからの一週間  作者: 真岡鮫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/29

22.アランの答え

「そうですね……」


 アランはゆっくりと周囲を見渡し、静かに口を開いた。


「リリア嬢は、非常に努力家です。妃教育と称して必要以上の教養を課せられたようですが……それすらも、しっかり自分のものにされています」


 アランが恐れず冷ややかな視線を父に送ると、王は黙ってそれを受け入れた。


「それに加え、ダンスは正確で誰よりも美しく、教えるはずの私が彼女とのダンスでは、素直に心が躍った……」


 微かに緩んだ頬を落ち着かせるように、静かに息を吐いたアラン。


「ですが、彼女は決して『完璧令嬢』なんかではありません」

「ほら、見ろ! さすが兄上は、よくわかっていらっしゃる」


 勝ち誇ったようにリリアージュを見下ろすガブリエルの視線に紛れ、カトリーヌも意地悪く唇を歪め彼女を見つめた。


「ねぇ、リリアージュ様って……」

「もしかして……本当は……」


 集まった貴族達は堰を切ったように好き勝手に囁き、不躾な視線がリリアージュに注がれた。

 それまで毅然と前を向いていたリリアージュだが、好奇の目の多さに思わず俯きかけた——その時だった。

 

「皆さま、勘違いしないでいただきたい」


 その喧騒を打ち破る、涼やかで凛とした声。

 リリアージュの前へ歩み出たアランは、彼女をそっと背に隠し、周囲の人々を見据えた。


「彼女がこれまで努力を続け身につけたものは、すべて完璧としか言いようがないものです……それは、皆さまもお分かりでしょう」


 アランが不敵な笑みを浮かべたまま周囲に視線を投げると、貴族達はバツが悪そうに黙り込んだ。


「ですが、この国を背負う人間としてどんなに完璧だったとしても、彼女だって普通の令嬢。楽しい時は笑い、悲しいことがあれば涙を流す……」


 その言葉に、リリアージュの瞳からついに涙が溢れた。

 意思とは無関係に頬を伝うそれは、音もなく床へと零れ落ちていく。


「もし目の前で婚約者が自分を裏切れば、深く傷付くのは当たり前。そんなこともわからない男が、リリア嬢の婚約者? 笑わせないでくれ」


 アランの鋭い眼差しに、ガブリエルは反論もできないまま、ただじっと兄を見つめるしかできなかった。


「……アランよ、すまない。そのくらいにしてくれないか」


 人々の視線が声のする方へ、一気に集まった。

 それまで一切口を出さなかった王が、目頭を抑え深くため息を吐く。

 そして、ゆっくりと周囲を見渡してから、リリアージュを見据え小さく頷いた。


「国王陛下、お騒がせしてしまい申し訳ございません」


 だが、彼女は驚く様子も見せることなく、静かに歩み出て深く頭を下げた。


「いや……謝るのはこちらの方だ。息子達がこのような場でそなたを巻き込むなど……あってはならん」

「お気遣い、痛み入ります」


 リリアージュは再び静かに礼をした後、まっすぐ王に向き直った。


「陛下、私との約束は覚えておいででしょうか」

「あぁ……」


「リリア嬢。約束って一体……」


 アランは目を見開いたまま、じっとリリアージュを見つめた。


「陛下……ではお約束通り、ガブリエル様との婚約破棄をお願い申し上げます」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ