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「完璧令嬢」と言われた私が婚約者から「ハリボテ」と罵られてからの一週間  作者: 真岡鮫


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20/29

20.波乱の晩餐会①

「お嬢様……こちらのドレスで、いいのですか」


 アンナは、リリアージュの纏う赤いドレスを見つめながら眉を寄せた。


「ええ……私はガブリエル様の婚約者。だから、今日はこれでいいのよ」

「出過ぎたことを……申し訳ございません」

「アンナ、気にしないで。でもね……これだけは、付けてくれないかしら」


 リリアージュがそっと差し出したのは、小さな水色の花を模した髪飾り。


「ドレスには……似合わないかもしれないけど」

「そんなことはございません。このアンナにお任せください」

「……いいの?」

「もちろんです。全身全霊を込めて、お嬢様を最高に素敵な女性に仕上げさせていただきます」

「アンナ……ありがとう」




「リリア嬢、緊張してる?」

「はい……アラン様は、いかがですか」

「さっきから心臓が飛び出してきそうで、困っている……」

「私もです……」


 会場に繋がる大きな扉の前で、思わず顔を見合わせて小さく笑った。


「……ここに入ったら、もう後戻りはできないよ。覚悟は、いい?」

「望むところです」


 前を向き、胸を張ったリリアージュ。

 その横顔を見つめ、アランもゆっくりと前を見据え微笑んだ。


「……行こうか、リリア嬢」

「はい」


 静かに扉が開く。

 眩いシャンデリアの光が、ゆっくりと一歩ずつ進む二人に降り注ぐ。

 

「えっ、アラン様……?」

「もしかして……あの話」

「なら、お二人って……」


 耳を汚す雑音にも、アランは一切表情を変えない。


「リリア嬢、前を向いて。君に恥じることなんて何一つない」

「はい」


 アランの腕に添えられたリリアージュの手に、ほんの少しだけ力が入る。

 

「大丈夫……私がいるじゃないか」

「アラン様……」


 ようやく笑みが戻ったリリアージュは、しっかりとした足取りで国王陛下夫妻の元へ歩み寄った。


 この場にいるどのご令嬢よりも、綺麗で完璧なカーテシー。

 先程までの喧騒が、一瞬で感嘆のため息へと変わった。


「リリアージュ・ハインツベル……よく来たな」

「ありがとうございます。陛下には、多大なるお気遣いを賜り、恐悦至極にございます」

「あぁ……後でまた話をさせてくれ」

「……承知いたしました」


 リリアージュは、王をじっと見つめ、もう一度深々と頭を下げた。



「……続きまして、レダール国第二王子ガブリエル殿下、並びにダストン男爵家カトリーヌ様、ご入場です」


 まばらな戸惑いが混じった拍手の中、意気揚々と進むガブリエル。

 その横には、視線を奪うほど真っ赤なドレスに身を包み、彼の腕に絡みつくカトリーヌ。

 国王陛下夫妻への挨拶を終えた二人は、リリアージュとアランを見つけ、ほくそ笑んだ。


「これはこれは……兄上、私の婚約者をエスコートなんて、とんだご迷惑を……」


 意地悪く笑いながらガブリエルは、兄にわざとらしく頭を下げた。

 

「いや、迷惑だなんて……こんなに素敵なリリア嬢をエスコートできるなんて、夢のようだよ。むしろ、感謝したいくらいさ」

「アラン……お前」


「リリアージュ様も、本当ごめんなさい。私がガブリエル様を独り占めしちゃって」

「いえ……それがガブリエル様のお望みですから」


 リリアージュは慈しむように笑みを浮かべ、ガブリエルを見つめた。


「リリア……」


 その美しさに目を奪われ、ガブリエルはうわ言のように呟く。

 無意識に彼女へと手を伸ばすも、それは敢えなくカトリーヌに捕まり、彼女の腕と絡んだ。


「でも、リリアージュ様はお困りだったでしょう? 私も突然のことだったから、ドレスもなくて……でも、ご覧になって」


 胸元を大胆に露出したそのドレスの裾を持ち上げ、カトリーヌは意地悪く唇の端を上げた。


「これ……ガブリエル様からのプレゼントですの」

「そうですか……」

「リリアージュ様と同じ赤……ですが、私の体にぴったりでしょう?」


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