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「完璧令嬢」と言われた私が婚約者から「ハリボテ」と罵られてからの一週間  作者: 真岡鮫


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14.未来への第一歩…5日目①

「あっ、あの……お二人とも少し落ち着かれてはいかがでしょう。今、お茶を……」

「申し訳ないけど、アンナは黙っていて。これは私とアラン様の問題なの」

「ですが……」

「悪いけど、リリア嬢の言う通りだ。さすがにここは、きちんと話をしないとね」


 睨み合う二人の間で、アンナは堪らず小さなため息をついた。


 きっかけは、リリアージュのある提案だった。


「今日は、アラン様に教えていただきたいことがあるんです」

「いいね。どんなこと?」

「あの……私に、愛嬌を教えてくださいませんか」

「……どうして?」 


 途端にアランが険しく眉を寄せた。


「ですから、それは……」

「散々昨日話したよね。君もわかってくれたと思っていたんだけど」

「もちろんアラン様が言ったことは、理解しております。その上で私が言いたいのは……」

 

「リリア……婚約者のいる身で他の男と痴話喧嘩か」

「ガッ、ガブリエル様!」

「まぁ、随分と……こちらも舐められたものだな」


 いつの間にか部屋の入り口に立っていたガブリエルは、勝ち誇ったように笑い二人を見据えた。


「……ったく。自分の立場がまるでわかってないなんて、完璧令嬢が聞いて呆れる」

「ちょっと待ってください、ガブリエル様」


 ガブリエルはズカズカと二人に近寄り、リリアージュへ手を伸ばした。


「やめるんだ、ガブリエル」

「アラン様……お待ちください」


 一歩踏み出したアランの前に手をかざし、リリアージュは彼の前に立ちはだかった。


「ここは、私がお話するべきです。アラン様はご遠慮を……」


 リリアージュの指が、かすかに震えていた。

 それでも、彼女は表情を崩さずガブリエルの方へ振り返る。


「ガブリエル様、お忘れですか? アラン様には『特別講義』をお願いしていると、以前お伝えしておいたはずですが」

「あぁ、もちろん聞いている。だから、少し様子を見に来たんだが……これなら来ない方がよかったか?」

「……どういう意味ですか」

「意味も何も……どうやら兄上のご指導は、相当熱心なようで」

「おい、ガブリエル!」

 

 今にも飛びかかりそうなアランに視線を投げ、リリアージュは小さく首を振った。


「ガブリエル様、一体何をお疑いなのでしょう」

「何って……」

「もしや、私とアラン様がただならぬ関係にあると? まるで……ガブリエル様とカトリーヌ嬢のように」

「なっ、リリア、お前……!」


 一瞬怯んだガブリエルをまっすぐ見据え、リリアージュは大きく息を吸った。


「そういうことをお疑いなのでしたら、はっきりお答えできます……違うと」


 唇を噛み締めるガブリエルを見つめ、リリアージュは静かに距離を詰めた。


「それに、証人ならここにおりますわ」


 リリアージュがスッと手を出すと、部屋の隅にいた護衛騎士が歩み出た。


「国王陛下の命により、私は常に行動を共におります……この身に誓って、お二人の間には何もございません」

「ありがとう……ガブリエル様、もし誤解なら申し訳ございません。ですが、婚約者の不貞を疑う……」

「うっ、うるさい!」


 バツが悪くなったガブリエルは大きく足を踏み鳴らし、リリアージュを睨みつけた。


「まぁ、いい。好きにしろ……リリア、お前がそういう態度ならこっちにも考えがある」

「…… どういうこと、でしょうか」

「明後日の王家主催の晩餐会、私はお前をエスコートしない」

「それが、何か?」

「はっきり言わないとわからないか……なら言ってやるよ。明後日の晩餐会にはお前じゃなく、カトリーヌ・ダストンを連れていく」


 だが、リリアージュはまばたき一つしなかった。


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