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きらきらゆきだるまさんとちいさなてぶくろ

作者: タケウチX
掲載日:2025/12/11

はじめまして。

『きらきらゆきだるまさんと ちいさなてぶくろ』を

読んでくださってありがとうございます。


寒い季節になると、

雪の降る音や、外の白さが

なぜかやさしい思い出を連れてきてくれる気がします。


このお話は、

そんな“人のこころのあたたかさ”を大切にしたいな、と

思いながら書きました。


少しでも、だれかの心に

ぽっとあかりが灯るような時間になりますように。

「ママぁ、これなあに?」


外は雪がしんしんと降りつづける十二月三十日。

わたしは娘のつーちゃんといっしょに、大そうじをしていました。


つーちゃんが小さな両手で抱えてきたのは、

小さな小さな赤い手袋。

子ども用より、さらに少し小さい、大切にしまってあった手袋です。


「ママ、この手袋、とってもちっちゃいよ〜! なんで??」


その言葉に、胸の奥がふっとあたたかく、そして少しだけ痛くなりました。

わたしは手袋をそっと受け取り、静かに答えました。


「それはね、ママのおばあちゃんが編んでくれたんだよ」


つーちゃんの目が、まんまるになります。


「ママにも、おばあちゃんがいたの?」


「うん。とっても優しいおばあちゃんだったよ——」


そう言ったとき、

降りつづく雪の音が、胸の奥の遠い記憶をそっと呼び起こしました。


* * *


おばあちゃんは小柄で、手先が本当に不器用で、

でも、だれよりあたたかい人でした。

雪の降る町の、古いお家でひとりで暮らしていました。


わたしが遊びに行くと、おばあちゃんは笑って言います。


「みーちゃん、大きくなったねぇ」


おばあちゃんの家のまわりには、

“きらきらゆき”がふわりと積もります。

きらきらゆきで作ったゆきだるまさんは、とっても元気で、春までずっと立っています。


おばあちゃんは、いつもの優しい顔で言いました。


「みーちゃん、見てごらん。

 雪はね、だれかを想っていると、きらきら光るんだよ」


そう言いながら、不器用な手つきで

でこぼこのゆきだるまさんを作ってくれました。


わたしが“あたま”で、おばあちゃんが“からだ”。

毎年二人でつくった“きらきらゆきだるまさん”は、

一冬じゅう、おばあちゃんのそばにいてくれました。


* * *


わたしが少し大きくなった年の冬のことです。


おばあちゃんは風邪をひいてしまっていました。


「みーちゃん、ごめんねぇ……おばあちゃん、今日は外に出られんの」


小さなわたしには、その「ごめんね」の理由が分かりませんでした。

約束を破られたような気がして、胸がつんとして、悔しくて、たまらなくて——


「なんで遊んでくれないの!!

 おばあちゃんなんか……きらい!」


泣きながら叫んで、その日はずっとお布団にもぐっていました。


* * *


次の朝。

空はとても晴れて、雪がきらきらしていました。


カーテンを開けると、庭からおばあちゃんの声が聞こえました。


「おーい、みーちゃん。ほら……

 きらきらゆきだるまさんが来てくれたよ」


その手には、おばあちゃんがひと晩かけてこしらえた

小さな小さな“きらきらゆきだるまさん”が乗っていました。


いびつで、でこぼこで、でも、誰よりあたたかいゆきだるまさん。


わたしはすぐに機嫌がなおって、

ゆきだるまさんと一緒にお家へ帰りました。


きらきらゆきだるまさんは、まるで魔法みたいに溶けず、

わたしの部屋でずっと笑っていました。


「みーちゃんが連れてきちゃったから、

 おばあちゃん、今年はちょっとだけさみしいかもね。

 春になったら、また会いに行こうね」


お母さんに、そう言われて、わたしは「うん」とうなずきました。


* * *


その年の大みそか。

外は真っ白な雪景色。


きらきらゆきだるまさんが、すこしだけ傾いていました。


そのとき、お母さんがそばにきて言いました。


「みーちゃん……いまからおばあちゃんのところ、行こうか」


「えー? なんで?」


お母さんは、どこかさびしそうにほほえむだけでした。


* * *


車がついたのは、知らない病院の真っ白な部屋。


おばあちゃんは、いつもの優しい顔で眠っていました。


「おばあちゃんはね……きらきらゆきになったんだよ」


「きらきらゆきに……なっちゃったの?」


そっとおばあちゃんの手を握ると、

その手はとてもとても小さくて、

子どものわたしの手ですら、全部包めてしまうほどでした。


——みーちゃん、大きくなったねぇ。


そう聞こえた気がしました。


* * *


家に帰ると、きらきらゆきだるまさんは溶けていました。

溶けたあとから、小さな白い袋と、お手紙が出てきました。


ぎこちない字で書かれていました。


『みーちゃんの あったかい手が

 さむくなりませんように』


袋の中には、

“ちいさなちいさな手袋”が入っていました。


わたしは急いで手袋をつけようとしましたが——入りません。


おばあちゃんは不器用だから、

何年も何年も編んで、やっとできたときには、

わたしの手はもうすっかり大きくなっていたのです。


——みーちゃん、大きくなったねぇ。


その言葉が胸に広がり、

わたしは声も出せずに涙をこぼしました。


* * *


「ママー、ねぇママー?」


つーちゃんの声で、わたしは現在に戻りました。

大そうじの途中で、少し眠ってしまったみたいです。


「あのね、この手袋……つーちゃん、はめてみたい!」


「いいよ。でもね、小さいかもしれないよ」


つーちゃんは赤い手袋に手を入れました。


——すると、


すっぽり、ぴったりはまりました。


「つーちゃんの手にぴったりだぁ!

 わぁ……あったかい!」


その瞬間、窓の外の雪がきらりと光ったように見えました。


——みーちゃん、大きくなったねぇ。


そんな声が、どこかから聞こえた気がしました。


わたしはつーちゃんの手を握り、


「よし、いまからゆきだるまさんをつくりに行こうか」


と言いました。


降りつもる雪は、きらきらと、あたたかく光っていました。

最後まで読んでくださってありがとうございました。


外の雪は、時々ふしぎなくらい

静かで、やさしい光を見せてくれます。

そんな光のなかで、

大切な人のことをふっと思い出すことがあります。


この物語が、

読んでくださった方の心のどこかに

そっと寄り添うものであったらうれしいです。


寒い季節、どうかお体に気をつけて。

あたたかくお過ごしくださいね。

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― 新着の感想 ―
読んだら、とても温かい気持ちになりました! おばあちゃんの思いが無駄にならなかったんだなっていうのがちょっと安心です。
ママさんの一人称で幼子だった時の事を語る場面が、結構大人の感覚で語られていたのが引っかかりましたね。 後は、おばあさんの死因が幼子の行動や言動だったぽい表現だったところも引っかかりました。 特に孫がま…
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