2話
放たれた矢は、村人、スライムなどを見境なく襲った。
村はパニックに陥り、一瞬にして阿鼻叫喚へと変わる。
「お、お主ら何をする!!」
狼狽える事しかできない村長を見て、先頭の男が冷徹な目を崩さずに言う。
「魔物を使役している村だと報告が入った。貴様らは人類の敵だ」
その会話に、青年が割って入った。
「待てよ!! こいつらは何もしなければ共存できる! 勝手な事を…」
青年が言い終わる前に、男は剣を抜いて青年を切り裂いた。
斜に一閃を入れられた青年が血を吐く。
「う…がはっ…」
「…やはり危険思想を持っている村だ。根絶やしにする他あるまい」
「お主ら…!! なんて事を…!」
燃え盛る村と逃げ惑う人々が目に映る中、青年は意識が遠のいていった。
―――――
村は消し炭となり、人や魔物の屍が転がる惨状となった。
残っているのは兵士達のみであり、後始末をしている。
「…よし。全滅が確認できたな。帰還するぞ」
隊長の一言で兵士達は再度隊列を組み、村跡を離れて行った。
「う…がぁっ!」
壊滅した村の中心で、青年だけが息を吹き返した。
とはいえ傷は深く、先が長くないのは誰の目から見ても明白だろう。
「俺の…ス、キルの…せい…で…」
青年は弱々しい生命力と裏腹に、そのスキルに対して憎悪、嫌悪といった強い怒りを念じていた。
その直後、青年の虚ろな目にもはっきりと光が現れ、誰かがその中から現れるのが見えた。
青年からはその現れたフードを被った男のような姿が、自分に手を伸ばしているように見えた。
「お迎え、か…」