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1話

 この世界の生物は、生まれた瞬間に1つ固有スキルを得る――


それが世の常であり、人種も性別も違うこの世界で唯一不変であるものだ。






 とある辺境の小さな村、1人の青年が生を受けた。

喜ばしい事であったのだが、それを見守っていた村人達の顔は不安の表情を浮かべていた。


「こ、このスキルは…かの有名な魔王と同じスキルじゃないか…!!」


「この赤子…可哀想にのう…」


狼狽える村人達の前で、赤子を抱きしめる女性は不安を押し殺しながら話す。


「皆さん…この子、ケイトは…責任を持って私が育てます…絶対に」


母として強さを見せた彼女に、異を唱える者はいなかった。



―――――



 …15年の歳月が経った。


「母さん、身体は大丈夫?」


「ゴホッ…ええ、大丈夫よ」


青年は逞しく育ち、今や村でも信頼をおかれている存在であった。

あれから長い時が経ったこの村は、あいも変わらず活気溢れるのどかな村だ。


ただ、一つ変わった点があるとすれば――


「おーい、ケイト! すまんがスライムを1体、回復薬(ポーション)作りで必要なんだが」


「はーい、今行きます」


本来力を持たない民間人にとっては脅威となる魔物が、自然に共存している事である。


青年が持つスキル、[魔物創成]。

自身の魔力から魔物を生み出し、使役できるという固有スキルである。

当初恐れを為していた村人達も、今やこのスキルが無ければ生活が成り立たない程になり、青年を重宝していた。


「いやあ、本当助かるよ。最初は魔王と同じスキルなんてビックリしたけど、先入観は良くねえな。魔物も便利なもんだぜ」


「彼らもただの生物ですから、他の動物と変わりやしませんよ。まあ、と言っても今の俺じゃスライムと下級狼獣(ローウルフ)くらいしか作れませんけどね」


こうしていつもの平和が繰り返されるものだと村人誰しもがそう思っていた。


「た、大変だぁー!!」


1人の村人が血相を変えて走ってくる。


「高見台から見とったら…な、何人いるか分からねえけど、沢山の兵士がこっちに向かってきとる!」


物騒な状況に、ざわつく村人達。


「な、なんなんだ…?」

「わ、わかんねえけど怖えよ…」


そんな不安を掻き消すように、村長の一言が飛び出た。


「落ちつけ、皆の衆。話を聞かねば分からん」


その一言でざわつきは収まったが、その間に規律正しい行進をしていた兵士達がすぐ目の前まで来ていた。

その者達はまるで戦争をしにきたかのような武装。弓、槍、剣などを傍らに携えている。


村に彼等が辿り着いた時、先頭の1人が鋭い目を村に向ける。


「…何じゃ、お主ら」


その目は中立で物を見ていた村長にも分かるほどに良くない感情を持つ者のそれだった。


「やはり報告通りだ。やれ、お前ら」


その男の一言で、他勢の軍は躊躇なく弓を振り絞った。


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