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2-3 生命の木

ルチカは壁を破壊するかの如く掘ってアラフィコスルートを露呈させていった。


二名の部外者による暴挙をゴブリン達は騒ぐ体力がないのか、ぐったりとしたまま静観している。


二人は壁を壊してはルートを辿って進んでいく。


そして壁を壊し続けた先に二人は、あの円形の広場と同じくらいの大きさの開けた場所に辿り着いた。


その場所の二人とは反対側の壁にもたれるように『それ』はあった。


「岩か?」


そのマトが岩と呼んだモノは、天井を突き抜け地面にも突き刺さっており、大きさは測定できないと感じた。


岩は異様な雰囲気を醸し出しており、このダンジョンでは見かけないどころか、これまで一度も見たことがない岩だった。


マトは岩がうっすらと発光しているのに気付いた。


岩の周りにアラフィコスの大群がまるで岩に祈りを捧げているかのように岩を見つめ、集まっていた。


岩をよく見ると枝のようにいくつか分岐しており、枝から丸い繭のようなものがいくつもぶら下がっていた。


「なんだ・・・これ・・・」


「うわぁ! アラフィコスの楽園かぁ?」


するとぶら下がっていた繭が一斉に裂け始めた。


裂けた繭からはアラフィコスの子どもが出て来て地面に降り立つと、アラフィコス達は「キーキー」と鳴き始めた。


「・・・いつからだ・・・?」


ダンジョンが発見されると騎士団員が監視員となり見廻隊の調査チームに配属され、ダンジョンの念入りな調査が行われる。


しかし、報告書のどこにもこの岩とアラフィコスの巣の存在について書かれていない。


マトが考え込んでいると生まれたばかりのアラフィコスの子どもがルチカの足元まで拙い歩き方でやって来て、ドラゴンの足に触れた。


それを見た大人のアラフィコス達は急いで子どもの所へ駆け寄りドラゴンから離れさせた。


大人のアラフィコスは子を背後におき、何匹かで囲った。


二人を威嚇するように「キリキリ」と鳴いた。


「なんだよぉ。なにもしてないじゃんっ」


ルチカのその姿を見てマトは言う。


「なあ、ルチカは魔物と話せるんだよな?」


「もち! ドラゴンだからね!」


「そうか! なら、俺達に敵意がないことを伝えて欲しい」


「いいよ!」


ルチカがアラフィコスに話しかけた。


ルチカは「ガウガウ」と言い、アラフィコスは「キィキィ」と鳴く。


マトは(鳴き声が違うのに通じ合うのか?)と疑問に思っていると二匹の会話が終わった。


「どうだ?」


「まだ警戒しているみたいだけど話は聞いてくれそうだよ」


「そうか、よかった。いつからここにいるのか聞いてくれ」


再びルチカはアラフィコスに話しかける。


「生命の木?を見つけた時からだってさ」


「生命の木? まさかこれが? 岩にしか見えないけど・・・」


マトは岩だと思っていた巨大な発光する物体を眺めた。


ルチカは言う。


「どうする?」


「なんで生命の木を探していたのか聞いてくれ」


これまでより少し会話に時間がかかった。


「探してたんじゃなくて偶然発見したって。

この木から生命の力を感じ取ったから、試しに卵を生んでみたら短期間で卵がかえって健康な子どもが生まれたんだって。

それだけじゃなくて、卵を通常時の三倍生める体になって繁殖に都合がいいから皆で守っているんだってさ」


話を聞いたマトは(まずいなぁ・・・)と焦る。


王に仕える騎士団はアラフィコスを何よりも嫌う。


理由は言うまでもなく、人間にも憑りつくからだ。


数が増えすぎないよう定期的にアラフィコスの駆除活動を見廻隊に要請し、見廻隊はこれを行っている。


(この『生命の木』とやらは動かせそうにないし、動かしてアラフィコスを遠ざけたところで根本的な解決にはならない)


マトはルチカに言う。


「ここから別の巣へ移動することはできないか?」


「生命の木がある限りないってさ」


すると急にダンジョンの外から地響きのような音がする。


マトだけがその音の正体を知っていた。


「タイムリミットか!」


「なに⁉」


「騎士団がダンジョンごとアラフィコスを焼き尽くすつもりだ!」


「なんで! ここのアラフィコスは人間に害を与えてないじゃん!」


「国を守る騎士団にとって存在自体が害なんだ!」


大量のアラフィコスが大勢の人間に憑りつけば国家は乗っ取られてしまう。


「戻ろう!」


ルチカは顔に怒りを浮かべる。


「すぐにぶっ飛んでいって殴ってやる!」


荒ぶるルチカの口調にマトは思わず言う。


「ルチカ。国を敵に回すつもりか。話し合いをするんだ」


マトの真剣な表情にルチカは少し落ち着いたようで「ぷー! わかったよ!」と言った。


ルチカはマトを背に乗せ、飛び上がった。


「最高スピードでブンブン‼」


ダンジョンの外では魔法石で特別に作られた大砲が準備されていた。


砲口には魔法陣が浮かび上がっている。


この『術式砲』は、騎士団の要請で見廻隊が抱える魔法研究所で開発された騎士団の所有物である。


術式砲の砲口に浮かぶ魔法陣は炎魔法用のものであり、元見廻隊の騎士団員である技術者が発現させた。


魔法陣はその時の用途によって五種類の中から発現させることができる。


術式砲の周りでは騎士団員が忙しなく動く。


その後ろで見廻隊の一部とバッシがハーゲンによって待機させられていた。


ハーゲンが術式砲の横に立つ。


「準備はできたか?」


「はい! いつでも砲撃可能です!」


バッシは待機をしている場所からハーゲンに言う。


「ハーゲン指揮官! もう少し待っていただけないでしょうか! まだ見廻隊が残っています!」


ハーゲンはバッシに視線を向けず冷たい口調で言う。


「状況を考えたまえ。アラフィコスの大群が見つかっては見廻隊の命一つや二つ、天秤にかけるまでもない」


「しかし!」


ハーゲンは無視して言う。


「砲撃準備! 3.2.1!」


するとダンジョンの中から風を切る音がする。


「ちょっと待てーい‼」

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